春一番と涙

もうすぐそこまで来てる春。
空気のにおいが冬のそれとは移り変わっている。

びゅーびゅー吹き荒れる風は
激しさはあるもののあたたかくて。

花粉症の人のことを思うと
それはそれは気の毒だけど
でも春は思い入れのある季節。

出会いと別れとはじまりと。
新たな環境へ向かう支度。
寂しかったり心踊ったり
気合い入れたり怯んだり。
色んな涙を流してきた。

10年前、高校卒業。
県外の大学には行かせないと
頑として譲らぬ父を説得すべく
晩ごはんのたびに何度言い合ったことか。
若いなりに全力でもがいた。
そして県外進学をなんとか勝ち取る。
言い合うたびに泣き、
最後には送り出してくれた事に感謝し、
新たな地へ向かう不安に泣いた。

6年前、祖父の旅立ち。
徳島にいる私に、実家からの電話が鳴る。
四国を横断してフェリーで渡り九州を南下。
片道約10時間の道のりを
ひたすらに一人で運転した。
祖父に会いたい一心だった。
私が帰ってくるのを待ってくれていた。
親戚みんなで見送ることができ、
死にざまは生きざまなんやと
祖父は背中で教えてくれた。
とにかく格好よくて
ありがとうを何度も言った。
悲しくてあったかい涙だった。

2年前、地元へ戻る。
私の居場所を自分で初めて作れたような
周りにもその居場所を認めてもらえたような
そんな徳島を離れるのはひどく心が痛んだ。
やり残したことたくさんある気がして
この先に待ってるものに
期待より不安ばかりおぼえて
うじうじしながら過ごした最後の春。
離れることを実感するほど
ほんとにここが好きなんだと
ますます知ることとなった。

今年も春がやってくる。
あらたなものに立ち向かうには
勇気がいる。自分を奮い立たせる。
やりたかったことのひとつに
挑戦できる環境に今春から
身を置くことができると決まった。
これまでの道のりや
見てくれている人がいたことに感謝だ。

この先どんな道を進むとしても
この1歩が次の1歩に繋がると
確かにそう思える1年になる予感。
いや、そんな1年にするのだ。

気持ち新たにまた進む。

奇跡は君の手のひらに。

大好きなorangepekoeの歌詞に
そっと背中を押してもらい
また少しずつ日常を重ねる。

今までの自分と違うのは
昔よりも等身大の自分が好きになったことだ。

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