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オンライン授業で気をつけること(後編)【先生目線の解決案】

さて、前回のnoteでは私が生徒として感じた「オンライン授業で困ったこと」を紹介しました。

今回はそれらの困ったことをどう解決できるか、先生の目線で考えていきます。

わたしの専攻分野でもある協同学習(アクティブラーニング)の理論から使えそうなことを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください!


前回の記事で、オンライン授業の問題として大きく分けて以下の二つが挙がりました。

①技術的な問題:ログインやミーティングへの入室ができない、ツールの使い方が分からないがその場で聞けない、会話が聞こえづらい、通信環境が悪くて会話にならない等

②コミュニケーションの問題:どのタイミングで話せばいいかわからない、ディスカッションの進め方がわからない、通常のクラスよりも発言しにくい、相手の考えがわかりづらい等


どちらにも共通することですが、オンラインでの授業をファシリテートするためには通常よりもしっかりとした構成や準備が必要です。

ただ、学習の仕方や流れが浸透してしまえばそんなに難しいことではないので、最初の段階での生徒へのケアという意味での準備が大きいかなと思います。


まず①の技術的な問題の対処法ですが、出来るだけ授業時間内でのトラブルを避けるために、ツールの使い方やミーティングの入室方法に関するマニュアルを配布することをおすすめします。一から作らなくても、例えばZOOMの使い方とかは誰かがすでにネットで説明しているので、それを使ってもよいと思います。

それを使いながら事前確認してもらったり、練習の時間を設けて一度試してみるとはじめてでも安心して使えますし、先生もあらかじめトラブルが予想できて、あたふたせずに対応できるでしょう。

子どもの場合はさらにこの点がネックになるので、親御さんも交えて慣らしていく作業が必要でしょう。(いろいろ触って無意識に画面を閉じてしまったり、ミーティングから退出してしまうこともあるようなので、低学年の子どもには少し難しいかもしれません…)

あとは前回もお伝えした通り、参加者にはイヤフォンをつけて参加してもらったり、ミュートやビデオの表示をコントロールすることで、音声や電波の問題は改善できます。


技術的な問題への対処ももちろん大切なのですが、先生の役割がより重要になるのは②のコミュニケーションの問題への対処かと思います。なので今回はこちらの問題についてもっと詳しく書いていきます。


オンラインという顔を合わせられない、もしくは顔が見えないこともあるような環境で、他人と一緒に学び合うのは簡単ではありません。話すタイミングや授業の進め方、相手が何を考えているかなど、わからないことがたくさん。。


こんな生徒のフラストレーションを緩和できるのが【スクリプト(授業案)】の導入です。

スクリプトとはいわゆる授業計画で、グループの構成、課題の設定、時間配分、役割分担などをあらかじめ指定しておいて、計画されたフロー(流れ)に生徒を誘導することで学習をサポートすることを目的としています。


アクティブラーニング(協同学習)においては、このスクリプトによるサポートが重要とされています。なぜなら、参加者がただ集まったところで学習(高いレベルでの認知的情報交換のプロセス)は自動的に発生しないからです。

生徒がより高いレベルでの認知的情報交換(=ディスカッション)をすることを促すようにデザインされたスクリプトもありますが、その話はまた別の機会にします!

オンライン授業でのスクリプトを考える上で指針にしたいのがこの3つです。

①活動内容のステップを提示する
②生徒に役割を与えてファシリテートさせる
③時間配分を決めて、活動の流れをイメージさせる

次にそれぞれ細かく説明していきます。

①活動内容のステップを提示する

まずは生徒が何をするか、活動内容のステップを提示することが大事です。グループでディスカッションにうつる前に、先生の方であらかじめいくつか問いを設定しておいて、その問いに沿ってディスカッションを進めるように促すとよいでしょう。

ちなみにこの明確なステップは、グループでの学び合いに慣れた学習者にとっては、自由な議論を妨げることになってしまうため、必要に応じて構成のゆるさを考える必要があります。ただはじめはみんな慣れていないため、しっかりと構成を組んであげて、徐序にそれをゆるめていくことが推奨されています。


②生徒に役割を与えてファシリテートさせる

次にオンライン授業で特に重要と感じるのが、生徒に役割を与えて自分たちで議論・学習をファシリテートさせることです。以前記事でも紹介したとおり、ZOOMでは参加者を小グループに分けてディスカッションをすることが可能ですが、このときにも誰からどうスタートしたらいいかがわからないという空気に陥りがちです。


生徒同士で話しあって役割を決めることもできるのですが、そこでも気の使い合いが発生して本来の学習とは違うところで認知的・精神的な負担がかかってしまうため、いっそのこと先生の方で役割を振り分けてしまった方が生徒としても気が楽なのです。

主に、リーダー、書記(まとめ役)、タイムキーパーを決めておけばよいでしょう。リーダー役の人がファシリテートしやすいように、あらかじめ質問事項や話し合う内容の項目を先生の方で用意しておけば、それに沿って生徒が議論を進めやすいのでよりスムーズにいきます。


わたしが大学に入って最初に受けたコースでもグループでの学び合いがあり、毎回先生が決めたグループで、与えられた役割に従って授業を進めたのですが、先生がグループのメンバーや役割を決めてローテーションするのは個人的に楽でよかったです。

大学生のようにグループ学習にある程度慣れた者同士なら、先生が決めなくても自分たちでできますが、主張の強いタイプの人がいつもリーダーになりがちで、控えめなタイプの人がその役割を担う機会が少なくなってしまうため、そういった意味でも役割を先生が決めることはよい効果があります。


大事なのは第三者が決めることなので、遊び的な要素もいれてルーレットで決めてしまってもよいかもしれません : )(こういう決め事って誰かにさくっと決めてもらった方が楽だし潔かったりしますよね。)

オンラインで使えるルーレットはこちらから:https://wheeldecide.com/

下の方にスクロールし選択肢(グループメンバーの名前とか)を入力、Apply Wheel Changes を押せばオリジナルのルーレットが作成できます。

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クリックするとルーレットが回り始めます

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Choicesに表示したい項目を入力する


前記事でフィンランド語のコースでZOOMを使ってすごろくをしながらグループで会話練習をしましたが、誰からどの順番で始めるかを決めるのにちょっともたついたことがあります。そういうめんどくささを省くのにも、ルーレットを使って決めるのはいいかもしれません。


ただし、低学年の子どもでアクティブラーニングを行う場合(オンラインに限らず)、発達の違いや性格によってリーダーの役割がどうしても難しい子どももいるので注意が必要です。そういう生徒に無理にやらせるのは大変なストレスを与えてしまうため、その場合は生徒のことをよく知っている先生がうまくグループの配分を考え、リーダー以外の役割をふるなどしてケアする必要があります(あらかじめどうすすめるかの手順を用意しておけばできるかもしれませんが、本当に無理な子もいるので、気をつけないと信用を失うことにも繋がります)。


③時間配分を決めて、活動の流れをイメージさせる

最後に、活動ごとの時間を先生側で決めてあげると、タイムキーパーの人も自分の役割を果たしやすく、グループでの学習がよりスムーズになります。グループとして厳密に時間を守るためではなく、「だいたいこのくらいの時間で活動をしてね」という指針を与えることで、グループ全体がなんとなくのイメージを持ってディスカッションに臨むことができるからです。


ちなみにこのテクニックは、普通のクラスでの授業やセミナーでの講演にも役立ちます。今日の授業(講義)で大体何をするか、どのくらいの時間で進めるかを提示することで、生徒や聞き手がなんとなくのゴールをイメージできるので、いつまで続くんだろう…と考えるストレスが減り集中して聞くことに繋がります。山登りでも、山頂までどのくらいあるかがわからないと不安になるし疲れますよね。



これらの点に気をつけておけば、技術的な問題を除けばおおむねオンラインでの学び合いはうまくいくと思います!もちろんグループに分割したときには、各グループを先生が巡回することも忘れずに!ZOOMには便利な「手を挙げる」ボタンもついているので、その点も他のビデオ会議ツールより使いやすいところです。

※ZOOMはセキュリティの脆弱性も指摘されています。私のとっているコースは全てZOOMで行われていますし、今のところ問題はなさそうですが、使用する際にはご注意ください。


<オンライン授業を行う上で重要な3つまとめ>
①活動内容のステップを提示する
②生徒に役割を与えてファシリテートさせる
③時間配分を決めて、活動の流れをイメージさせる

前回と合わせて二回にわたって、オンライン授業で発生しがちな問題と、その解決法について考えてみました。

オンライン授業はまだまだ主流じゃないこともあり、たくさんのつまづきもあると思います。少しでもこの記事が参考になりますよう、また先生たちの授業が円滑に進められるよう願っています : )

より多くの人に教育的な課題について考えてもらえるよう、研究・執筆を続けていきたいと思っています。ぜひサポートしていただけると嬉しいです!