好きだった人
3033は、大学に入りたての頃に仲良くなったAくんが好きだった。
ストライクゾーンではないけれど、ヒットにする自信があった。
色白に映える赤い唇にさらさらの黒髪、黒縁のメガネ。
それだけ聞くと量産型男子大学生のように思えるが、出会った季節は常にTシャツ革ジャンでロックスターみたいな格好をしていた。
また、中身もパンクな人だった。
思い出は数えきれなくて、でももう数年も前のことだから思い出せなくなっていて、3033の妄想だったんじゃないかと思うときもある。
でも講義中に落書きして渡してくれた3033の似顔絵や、Aくんの作品は今でも取っておいてある。
今は、それだけがAくんのそばにいられたという唯一の証。
3033を呼ぶ声も、細い体も、ふたりで行った場所も、食べた料理も、語り合った価値観も、
もうここにはない。
きっと、それでよかったんだろう。
未だに、似ている人をいいなと思ってしまう。
似ている人とすれ違うと追いかけたいと思ってしまう。
でもきっともう、2度と会えないからずっと好きでいられるんだろう。
次に会うときは夢の中で。
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