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煙草

国道沿いのコンビニの前で、慣れない銘柄の煙草を咥えて夜空を見上げる。

ちょうど目の前にオリオン座が見えた。

ただ、冬の星座をそれしか知らないから目に入っただけなのだが。


咥えた煙草に火をつけようか迷ったその時、彼は現れた。


オリオン座が見える、と独り言のように呟くと、彼は本当だ、と独り言のように返した。

街頭や車のランプに照らされた夜空でも、意外と星は見えるんだなと思った。


煙草を吸い終え、彼の少し後ろを追って歩く。



こんなに近くにいるのに、

こんなに仲良くなれたのに、

こんなに一緒にいて楽しいのに、


2人はさっき見た星座のように結ばれることはきっとない。

それをわかっていて会っているのかもしれない。


今夜もまた彼に抱かれて、同じベッドで眠って、仕事の時間に起こされて一緒に家を出る。

そしてわたしは自宅へ戻り、彼のことを考えながらまたひと眠りするのだろう。


この流れが嫌なわけではない。

ただ、これ以上縮まないこの距離がもどかしくて、わたしは彼にとってどんな存在なのだろうと考えてしまう。


遊ぶだけの関係で終わらせていいのだろうか。

でも、わたしからは何も言えない。言わない。


2人とも責任を負うことを嫌っているから。

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