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岐阜県の知られざるカツ丼たち《丼をめぐる冒険①》

ワタクシ、日々「丼物」あるいは「丼の眷属」を食べ続けている丼愛好家なのであります。というわけで、丼ノンフィクション、書いていきましょう。今回はかつ丼の話題。

かつ丼といえば、名古屋の味噌かつ丼や、福井のソースかつ丼、福島や長野の分厚いソースかつ丼、その中間ぐらいの群馬のソースかつ丼、新潟のたれかつ丼、長岡の洋風かつ丼、岡山のデミかつ丼、加古川のかつめし、秩父のわらじかつ丼、河北のカレー味ソースかつ丼、武生のボルガライスや根室のエスカロップなど、その名を知られた「ご当地かつ丼」がありますよね。

しかし私のふるさと岐阜には、そのどれとも違う独特で奇妙なかつ丼が点在しているのです。メディアで取り上げられたところを余り見たことがないので、私の知る範囲でご紹介しようと思います。

瑞浪市 加登屋食堂の「あんかけかつ丼」

まずはメディアに出たこともあり、比較的、知られている一品から。瑞浪市の「あんかけかつ丼」ですよ。

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かつの上に、卵を溶いた餡がびっしりかかっているビジュアル。トロットロ、すごいですね。これを提供しているのが、「加登屋食堂」というお店です。

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ご覧の通り、全面的にかつ丼推しです。いいですねー。名物の風格が出ています。(2014年撮影)

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これで700円というのも、嬉しいですね。プラス200円で、かつ二枚でご飯も増量の「大」にできますよ。

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見てください。かつの厚さが1センチ以上で分厚い!
この餡、中華の餡のように甘くはなく、和風だしのサラッとしたタイプ。だからしつこくなく食べられます。豚肉も脂身を少なくしていますね。美味しいという評判は伊達ではありませんでした。

岐阜市 魚半食堂の「かつ丼」

唯一無二のソースがかかっていることで地元住民に愛されているのが、岐阜市の鶯谷中学校のそばにある「魚半食堂」のかつ丼です。(この紹介の仕方がローカルですねw)

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このソース、正体を言ってしまうと、ケチャップとデミグラスソースを合わせたオリジナルのソースなんです。このかつ丼を提供しているのがこちらのお店。

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かっこえええええ。ノスタルジックで素敵な佇まいですねえ。住宅街の中にあるので、なかなか見つけられないかも知れません。(2013年撮影)

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これ、薄いとはいえ、かつ2枚載って600円ですからね。庶民の味方です。

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かなり濃いソースなんですが、酸味が効いているので、そこまでくどくなく食べられます。いやーその店にしかない味、貴重です。

大垣市 鶴岡屋本店の「上カツ丼」

お次も見たことがないヴィジュアルと味わいの丼。こちらも「カツ丼」を注文すると、卵とじではなく、問答無用でこちらが登場します。

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ね、新潟のたれかつや福井や群馬のソースカツ丼のようなサイズのカツなんですが、それらよりちょっと厚め。そしてかかっているのが、味噌を溶いたような不思議な味のソースなのです。それを提供しているのがこちら。

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これまた素敵な雰囲気ですよねえ。「鶴岡屋本店」です。看板を見ての通り、本来は麺類の店のようですが、地元の人たちも「かつ丼がおいしい店」という認識の模様ですよ。(2015円撮影)

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カツ丼は本来、820円。「上」になると、プラス100円で目玉焼きが付きます。こちらは大盛りにしたので、さらにプラス250円でした。贅沢してしまいました。

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このふにゃっとした感じの目玉焼き、これだけでも珍品…半熟状態なのです。

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甘味が際立つ独特のソース。なぜこれが生まれたのか、もっとちゃんと取材しておけばよかった。次に行く機会があればぜひ。

岐阜市 いかわの「かつ丼」

同じように半熟目玉焼きを載せているかつ丼なんですが、こちらもソースが独特でした。

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筋状にかかっている粘度の高そうな濃いソースが見えるでしょ?そういうソースかつ丼かと思ったのですが、それとは別に、全体に醤油のような薄いソースがかかっているのですよ。だからダブルソース。これを出しているのがこちらのお店。

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柳ヶ瀬の商店街の中にある「いかわ」です。ご覧の通り、天ぷら推しのようですが、このかつ丼のスタイルを見て、もう一択でした。(2013年撮影)

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800円です。やはり「かつ丼」を注文すると、卵とじではなくこちらが出てきますよ。

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私好みの薄めの衣。肉と脂身のバランスもいいです。そしてあっさりしたソースのバランスが本当にいい。ご飯につゆだく状態でかかっているのですが、それだけでご飯いけそうなほどです。岩手県一関市の名店「松竹」を思い出す味でしたが、こっちの方があっさりですね。

飛騨市 AMERICAN BAKERYの「かつ丼」

東京でも人気店がある「卵でとじてないかつ丼」ここにもありましたよ。

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ご覧ください。これ、かつを卵でとじずに、かつの上に卵を載せています。そう、東京・四谷荒木町の老舗「鈴新」のスタイルなんですよ。これだとカツがサクサクのまま楽しめますよね。卵とかつの位置を逆にして、卵を敷いた上にかつを載せれば、東京・渋谷宇田川町で行列ができる人気店「瑞兆」のかつ丼のスタイルになります。

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こちらのお店はそれらからインスパイアを受けたわけでもなく、たまたま誕生したかつ丼と見られます。これを出している店が、ええっパン屋さん?

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「AMERICAN BAKERY」という喫茶店です。パン屋ではないようで(笑)地元の人に美味しいと紹介されて訪問しました。グルメ本でもネットでも分からない情報ですよね。(2015年撮影)

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800円です。瓜のお味噌汁も、アメリカンっぽくなくていいですね。七味を付けてくれるところが気が利いています。

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サクサクのかつ、先に言及した「瑞兆」のかつと衣や食感がよく似ているんですよ。岐阜にも東京の人気店に匹敵する?かつ丼がありますよー。(個人の感想です)

微妙にオリジナルな工夫があるかつ丼三品

激しくオリジナリティがあるわけではないですが、通常のものと微妙に違う工夫があるかつ丼をまとめてご紹介しましょう。

まずはこちら。岐阜市、武蔵屋本店の「和風かつ丼」です。

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玉葱は使わず、青い長葱のみ。そして海苔をトッピング。味は卵をまとった醤油かつ丼と言っていいほど、醤油が強め。700円ですよ。

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柳ヶ瀬に古くからあるお店の典型のような佇まい。こちらも素敵すぎます。(2015年撮影)

お次は、高山市、茶やのの「かつ丼」です。

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まず、これ味のバランス、卵とじの具合が抜群なんです。私が食べた卵とじかつ丼の中でも指折り。好みですねー。見た目もきれいです。

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そして椎茸としめじがたっぷり入っているところが特徴ですね。そういえば京都発祥で全国展開している「かつくら」の「京風ロースかつ丼」には椎茸が入っていました。京風ってこと?いやあちらは山椒がかかっていることなども特徴なので、意識はしていないでしょう。かつは厚いんですが、どうやら肉を折りたたんで二倍の厚さにしているようです。これで700円は本当に嬉しい。

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何の情報もなく、旅の途中でたまたま入った店でした。普通の郊外型の喫茶店での、素晴らしい出会いでしたよ。(2015年撮影)

お次もたまたま入ったお店、岐阜市、繭の「特製かつ丼」です。

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こちらは味噌かつ丼ですね。でも味噌カツでは見かけない、たっぷりの海苔と炒めた玉葱トッピングですよ。サラダやみそ汁もついて930円です。

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いかにも東海地方らしい喫茶店のかつ丼なのでした。きっと、こちらもモーニングが人気なんでしょうね。(2014年撮影)

あれ、この三品、いずれも海苔がたっぷりかかっていますね。そうなんです。グリーンピースを載せている店は見かけませんが、海苔を、しかも多めに載せている店は実に多い。こちらの記事に載せていないかつ丼の多くで海苔がトッピングされていました。内陸で乾物文化だった影響なのだろうかと想像しています。

かつ丼ではありませんが…

かつ丼ではないんですけど、紹介しておきたい「丼の眷属」があります。

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岐阜市、松屋の「かつの大きいカツハヤシ」ですよ。ハヤシライスにとんかつをトッピングしている店は、最近では見かけるようになりましたが、かつの上にこんなにも大量のお肉をドバッとかけている店は見たことがありません。そして「松屋」といっても例のチェーン店ではないのでご注意を。

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チェーン店の松屋より歴史が古い岐阜駅の南側にあるお店です。岐阜市民にとってはおなじみの、行列のできるとんかつの名店ですよ。(2017年撮影)

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ハヤシのお肉に圧倒されているかというとそうでもなく、下の分厚いとんかつに十分に存在感があります。ちょっとお高め1150円ですが、ボリューム満点で大満足な一品です。

ただ、こちらのお店で本来紹介すべきはこちらかも知れません。

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みそかつ丼の大盛です。850円。定食スタイルのみそかつライスと並んで、こちらがお店のスタンダード。

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ご当地らしくあまーーい味噌。そこにデフォルトでたっぷりのからしがかかっていて、それでバランスが取れているという独特のスタイル。

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ただ、みそかつライスの方のかつは厚いのですが、こちらは丼用に薄いかつを採用しているのですよ。衣と味噌たれを楽しむタイプなのかも知れません。しかしこれだけのかつの量なので、満腹になることは請け合いです。

岐阜市 一八食堂の「カツめし」 最高の一品!

最後のご紹介したいのが、私が岐阜のかつ丼の中で、いや全国のかつ丼の中でも最高だと思っている逸品です。正直、これに巡り合った時には感動すら覚えました。

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どーですか、このヴィジュアル。一目ぼれですよ。昨今、いやらしくわざとはみ出させたようなかつ丼を見かけますが、こちらは明らかにはみ出すこととかあんまり意識せず、なんとなく、というかむしろ「雑」な盛り付けが美しすぎます。

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そしてお店も素敵すぎます。ザ・町の食堂。いやーこれはいい。やっぱり住宅街の中にあって、見つけにくいかも知れません。(2015年撮影)

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そして見てくださいよ、みそ汁も小鉢もついて、これで550円ですよ!ありえないですよ。実は「カツ丼」と注文すると、卵とじのかつ丼が出てきて、「カツめし」と注文すると、味噌かつ丼が登場するのです。そして何よりうれしいのがこちら。

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ズテーン!業務用の巨大なマヨネーズ様、降臨。デフォルトでこれを添えていただけるのです。これは行くしかありませんな!

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お肉、分厚いですよー。本当に550円でいいんでしょうか。衣も私好みの薄め。味噌だれのバランスもいいです。

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うわははははは。やってしまいましたー。うまい、これうまいよ!マヨラー天国だよ!味噌だれとマヨネーズって、合うんですねえ。

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小鉢の中に大根おろしがありました。ははーん。

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さらに味変して、さっぱりといただけます。非マヨラーでも大丈夫。もう本当に最高でした。

岐阜のかつ丼、ご堪能いただけましたでしょうか。コロナが落ち着いたらぜひ岐阜へ。ただ、これで岐阜のかつ丼の全貌を紹介できたわけでは全くありません。ワタクシ、ポリシーとして丼という庶民の味方は、わざわざ交通費を払って食べにいくのはちょっと違うなあと思っているので、旅先や何かの事情で行った場所、あるいは徒歩や自転車で行ける範囲で蒐集するというルールにしています。安くて美味しい丼の情報、お待ちしております。

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