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俺はあの海に棲む白鯨をまだ知らない

みなさん、『Limbus Company』5章「悪に規定される」はもうプレイしましたよね?(圧)
まだの人は今すぐダウンロードしてプレイしてください。
Steam/Google Play/IOSで基本無料プレイ可能ですが、スマホでプレイすると必殺技演出が重くて落ちると方々から聞き及ぶので、PC(Steam)版でのプレイ推奨です。





そもそも『Limbus Company』って何よ

これは主人公のダンテ。萌えキャラです。

『Limbus Company』は、韓国のゲーム製作スタジオProject Moonが贈るソーシャルゲーム形式のゲーム作品です。
公式によるジャンル紹介は罪悪共鳴残酷RPG

あらすじを簡潔に説明すると、

舞台は、臓器売買や飢え死にが横行する区域「裏路地」と、大企業に抱えられた裕福層の住む区域「巣」が混在するディストピア「都市」
物語冒頭で記憶と頭部を失った主人公「ダンテ」は、それらを取り戻すために「リンバスカンパニー」と呼ばれる組織に加入し、戦闘員である「囚人」たちと共に、血生臭い都市を駆け巡る。

というものです。

バトルシステムはパズルゲーとデッキゲーを組み合わせたような感じです。
あらかじめ持ってるいくつかのスキルが毎ターンランダムに配布され、相手の攻撃に対して有利なスキルを選んでマッチする、というような感じです。

同じ色のスキルを繋げると攻撃力が上がったりする
有利不利も一目見てわかりやすい

一応『Lobotomy Corporation』『Library Of Ruina』という続き物の前作があり、その続編にあたるのですが、関連するストーリーは一区切りし、今作から初めてプロムン作品に触れる人もとっつきやすいように、公式サイトで頻出する単語の紹介がされたり、主人公のダンテが記憶喪失なのでプレイヤーと一緒に学んでいくようなスタイルになっているので、リンバスが初めてのプロムン作品でも大丈夫です。

とりあえず、公式サイトを見て好みのキャラや世界観の感じを掴んでください。
ちなみに上部画像のオレンジ髪の女の子が今回(5章)の主役です。

個人的にこのゲームの良い所は、最初からプレイアブルキャラクターが全員揃っているところです。

ガチャ要素になっているのは、戦闘を有利に運ぶための必殺技と、IFの世界線のキャラを「人格」というシステムで引き当てる、という(物騒な)ものになっています。
リンバス社ではなく、「戦争を公的に請け負う組織の戦闘員」として生きた世界線のキャラの人格を引き当てる(それをリンバス社のキャラの人格に被せると、戦闘経験などが上書きされて強くなる!)、みたいなシステムです。

なのでソシャゲ特有の「私このキャラが気になってるんだけど、ガチャで引けなくて、そもそも持ってなくてぇ…どういうキャラなのかが二次創作越しでしかわかんなくてぇ…」という現象が一切ないのが嬉しいです。
みんないます。
その初期配布のキャラも育てればしっかりと使えるうえ、ストーリーでは12人全てのプレイアブルキャラにスポットが当たるので、ガチャを引けなかったことによるデメリットが限りなく少ないです。

ついでに天井要素や交換アイテムもあるので、毎日コツコツプレイしているとガチャで実装された目当ての人格も大抵は手に入ります。
レベル上げは「経験値素材」のみ、覚醒などの育成素材は「キャラ専用アイテム」と「共通素材」の二種類だけです(今のところ)。
ついでにオート戦闘や戦闘スキップまであるので、レベル上げ(上限は時期開放)さえしておけばとりあえず勝てるまであります。
ソシャゲとして本当に優しいシステムです。

あとボス戦で流れる曲がすっごくいいです。

これは5章のボス戦で流れる曲なのですが、聴いてください。

ネタバレになるのでは?と思うかもしれませんが、そもそもリンバスのキャラやストーリーは多数の文学作品が元ネタになっており、それをプロムンという世界観で解釈・再構築した作品なので、文学に詳しい人ならその章でメインになるキャラを見れば、これから出てくるキャラの名前や立ち位置、取り扱うテーマは大体予想がつくので、その辺は些細なことでもあります。

その上でこの曲がゲームの中でどんなふうに機能するか、どんな展開を踏まえた上でこの歌詞が選ばれているのかが重要であり、私が本当にプロムン作品が好きな所以です。

このゲームをプレイするにあたって気を付けることといえば、
レーティングが18歳以上を対象に設定されていること
思いつく限りのむごたらしい描写がお出しされること
くらいです。

過去に公式から出された注意画像を締めにして、リンバス未プレイ者へのプレゼンを終了します。

ピエロの登場、実際に起こってはならないことらしい



で、俺は文学作品に全く詳しくないわけだが…

散々言っといて?
読書は好きです。
あの中でいうとドン・キホーテは既読、神曲は登場人物の名前は知ってる、それくらいのオタクです。

先に言うとイシュメール自体もキャラクターとして完全にマークの外で、「あぁ~毒舌の女の子、人気あるよね~」というのが5章をプレイするまでの所感でした(オタクは正直)。
イシュメガチ勢に殺される。

うみダとかいう(いろんな意味で)狂ったイベント中はずっと「完全に雰囲気悪くしに行ってるし突っ走りすぎているが、自分しか知らない危機にそれを知らない・軽視している大勢で乗り込むことへの焦りの気持ちはわかる…大丈夫かな…」とハラハラしておりました。

何が?

これどうやって収拾つけんの?

TGSを経て満を持して公開されたトレーラー。
おどろおどろしいBGM、海の過酷さと不安を掻き立てるテキスト文、新E.G.Oを引っ提げた勇ましいイシュメールの立ち絵、海洋恐怖症のオタクに一切配慮をする気のない本気スチルの数々。

海はオタク文学では神だとかクトゥルフだとかに通ずるらしいですが、その辺にも自分は全然詳しくなく、けど海の美しく穏やかな部分と暗く恐ろしい部分の二面性が好きなオタクだったので、この時点でかなりワクワクしていました。

ちなみにロボトミ推しのケセドは穏やかな海のイメージを持ち合わせているキャラだと思います。ラオルの背景とBGMいいよね。

そもそも都市って海とか船の概念あるんだってぼんやり思ってたので、都市の外である大湖が描かれるのも楽しみにしていました。
あまりにも閉鎖的な世界観だったので、あの世界の外側どうなってるんだろうとずっと気になっていました。
まあプロムンの世界だし一筋縄ではいかないんだろうな…なんかバカでかい化け物が海面から巨大な目玉を覗かせるスチルとか実装されないかな~…

あ!

やった~~~~!!!!!



5章をプレイして


ネタバレがあるんじゃ。


全体的な感想

5章は全体を通して未知への恐怖を前面に押し出したホラー回でしたね。
BGMも敵も全部がおどろおどろしくて一切の予断を許さない感じが最高。
陸地という、(都市に限っては化け物が跋扈してはいるし人知の及ばない技術もありはするけど)常識の通じて文字通り地に足の付けることのできる場所とは別の、海という常識の及ばない、理屈が通じない死と隣り合わせの異世界に放り出されて、その極限状態で人間関係がこじれ…という海におけるテーマあるあるかつみんな大好きなやつの全部の詰め合わせ。
こんなん嬉しくないわけがない。
何で白鯨読んでないんですか?知らなかったから…

それにしても鯨と人魚の概念キモすぎる。
食人文化はあるから今更にしても、変異した元人間の化け物を特産品として扱う海上都市が栄えてるの、流石に想像できんかった。
普通の魚だけじゃやっていけないんだろうか…

全体を通して怖くて気持ち悪くてギスギスしっぱなしの5章、本当にどう収拾つけるんだ?と始終思っていましたが、あんなに美しい終わり方ができるとは思いませんでした……
Compassのイントロが流れた瞬間、本当に一切の誇張なくスッ…と涙が流れました。

狂気的なテーマ、巨大生物の腹の中に心臓眼前という生々しい背景、再会するも対立する悲しき友人たち、エイハブとかいう怒涛のクソアマからお出しされる専用BGMがあんな穏やかな海のような、無音の深海に響くソナー音のような美しい曲なことあるんだ!?
海の二面性要素、回収。オタク大歓喜。
「Bon Voyage お前の人魚が出航する」←本当に天才の作詞

ところでヘアクーポン兄貴の異物感、何?
あとイサンが一生ゲボってたな…


イシュメール

よかったね!

結論から言うと、メチャクチャ好きになった。
終盤のイシュメールの泣きながら声を詰まらせながら必死に喋る演技にやられちゃってぇ…

エイハブへの怒り、クィークェグへの懺悔、何より自分自身へのそれらを滲ませた凄みのある声、本当に好き。
からのサラジネの、波のように力強くも潮風のように爽やかな声。一番好きかも。

プロムン作品以前は他国の声優なんてな~…という関心具合だったし、ラオルの時もフルボイスと聞いてえ~別にいらんし…と乗り気ではなかったレベルなのですが、プロムン作品で認識が変わりました。
皆本当にレベルが高い。

「…私をイシュメールと呼んでください」
「私を…イシュメールって…呼んでよ…」

全てのオタクは同じフレーズを別のシチュエーション別のニュアンスでリフレインする演出が大好きなんだが……?

まだ友人なりたてで初々しい、他人行儀な喋り方の一度目、
生と再会を喜んだのもつかの間、助けられず眼前で死に行く友人に向けた二度目。
こんなんずるない…?

人は死の際、最後まで残っているのは聴力だと言うので、普通ではない死に方だったけれども、ちゃんと聴き届けられてたらいいな…と思っています。
これは願いです。

私はバトル作品において髪の長いキャラが好きになりがちなのですが、その理由は「長さが邪魔にならないくらいの戦闘能力、または容姿において戦闘より優先すべきプライドがあるから」「そういうキャラが舐めてた格上キャラに髪の毛引っ掴まれたりするの萌えるから」なのですが、イシュメールはあの長髪を苦にしない戦闘力もなければ、身だしなみに関係するプライドもなさそうなので、あまりの長髪の強調具合に、

「何でそんな髪長いん?切った方がよくない?」

と思っていました。
しかしプロムンは全てに意味のあるゲームを作ることに定評があるため、私は完全にプロムンの掌の上で転がされていたことに気付きました。
そりゃ伸ばすわ…
しかしあれだけ短かった髪をあそこまで伸ばすのに、どのくらいの年月が必要だったんだろうか…都市だし育毛に関する手軽な技術くらいはありそうだけども。また髪の話してる…


クィークェグ

なれてたよ~~~~~~!!!!!!!!!!
本当にいいキャラだった。何でプロムンの善人(ではないけど)すぐ死んでしまうん?

部族系(これは原典的に合ってるっぽい)の見た目で喋り方が独特なのもあって、初出の時はなんかちょっと強いけどすぐ死ぬモブの一人くらいかと思ってました。
まさかイシュメールが気に掛けていた友人とは思わず。

実際は見た目以上に思慮深くていろんなことを考えてる人なんだな…というのを会話のたびに知っていっては気付いたら好きになってました。
だからこそあの状況では人魚化しない方法がエイハブに従うしかないというのはもう見ていてわかるし、自分から言い出した友人関係を自分の心を保つために殺したことにしてしまったことへの申し訳なさって途方もないよな…と思いました。
本当は彼女もイシュメールがそうしたみたいに武器を投げ出して真っ先に抱き着きたかったはずなんじゃないか。

「あのな」
「きみのなまえ。もういっかい。おしえて」

クィークェグが最期にイシュメールの名前を尋ねるの、あの場面でイシュメールがこれ以上後悔の渦に飲まれないように、かつ自分たちの友情をもう一度強固に結び直すために、死にゆくクィークェグが朦朧とした意識の中で無意識に出した最期の優しさだったのではないかな…と思っています。
これは願いです。

都合のいい幻覚なのか、鯨の腹の中やE.G.Oという異常事態だからこそ起こった奇跡なのかは分からないけど、白鯨の心臓に銛を投げるイシュメールに寄
り添ってくれたこと、本当に嬉しかったです。
今度はちゃんとイシュメールの中に生きてくれて、先に進むための支えになってくれるんだろうなあ…


エイハブ

100億点満点のクソアマ!!!!!大好き!!!!!!!!!!
声がまずいい。高慢さに満ち満ちている。
イシュメールとの掛け合いが聞いてて本当に気持ちよかった。
あまりの意志強っぷりにカルメンの面接をスルーしてE.G.O開花させたのは流石に草です。

海の上の船の中という極限状態の狭い世界で、自分に縋るしかなくさせて自分と同じ仇敵に憎悪が向くように仕立て上げ、自ら命を捧げさせるような状況に持っていき、それを正当化し、例え自分自身が死んだとしても自分と同じ思考を持った存在が敵を討つならそれでいい…

いくら原典があるとはいえ洗脳描写が上手すぎんか?
大学でガスライティング学取ってた?

「私が死ねば世界も死ぬ。それなら私の生き方と存在方法こそ世界そのものだ!私が決めたのさ!」
「誰も他人の人生の責任を取っちゃくれないし、生きてもくれない!!!」

こんなに見ていて気持ちのいい敵キャラは久しぶりに見たかもしれん。
そりゃねじれじゃなくてE.G.Oだわな…あんなに邪悪な個人発現のE.G.Oって初めてでは?
価値観の凝り固まった年寄りの狂気的な部分と、時折見せるあれ?元々はまともな人だった…?と思わせる描写の塩梅が凄い。
でもこれくらい意志強じゃないと都市って生き抜けないよな。
カルメンもそうだそうだと言っております。

ガスハープーン、ぱっと見は綺麗に見えるんだよな。
実際は影掛かってる部分にモロ犠牲になった船員の顔付いてるらしいけど…
大義名分で飾ってたエイハブの綺麗事と同じなんだよな。
でもデザインは本当に好きです。
片腕巨大化・異形化が性癖のオタクなので。

取り込まれた船員の自我を消費させる戦闘という、デザインからも、システムからも、ユーザーとイシュメールを絶望させるための戦い。
どこまでも低俗で悪辣な戦闘。
プロムンは本当に描写が上手い。

ヘルマン、拾うな。
可能性世界の白鯨無限殺しさせるの最悪すぎる。
スーパーエイハブになって再登場するんだろうか。やはりあの時殺しておけば…とならなければいいけども。無理か。

ところで、やっぱりそのうち船長イシュメール人格来るんだろうか。
握らんとする者シンクレアの時も賛否あったらしいけど、私は可能性は可能性として否定された上で、その可能性の力すら乗りこなして先へと進んでほしいタイプの解釈オタクなので、遠慮なく引くし、欲しいです。


目標はあの白い奴だ!総力で!!!!漕げ!

というわけで、オタクは他のソシャゲと相談しながら、白鯨の日本語訳を読んで年末年始といたします。
よいお年を。