全人類、聖黒シリーズ読んでくれないか?

ご機嫌よう。このnoteを読んでいるあなたは先日角川文庫から出た、柴田よしき先生著の「所轄刑事・麻生龍太郎」を読んだこっち側の方でしょうか。それともこれから読む方でしょうか。
私は「所轄刑事・麻生龍太郎」「聖なる黒夜」に登場する及川純というキャラクターに沼っているただのオタクです。よろしくどうぞ。

もた…もた…してたら、新装版の「所轄刑事・麻生龍太郎」が出てから結構な日数が経ってしまった。

及川純と私の関係性(?)については上記を参考にしてください。

今回は「男同士の巨大感情を摂取するのが趣味」という同好の士へ、どういう流れでシリーズ関連作を読めばいいのかという話をしていきたいと思う。
同好の士ではない方には、何を思ってこいつは作品を読んでるのか?みたいな怒られが発生しそうなので、見なかったことにしてほしい所存。
すべて妄想の上で成り立っている、妄言です(免責されようとしている)

まずは「聖なる黒夜」を読んだことを前提に話をしていくのですが、もし、たとえば「所轄刑事・麻生龍太郎」から読んだ人がいたとして。そうしたら次は「聖なる黒夜」を読むことをおすすめしたい。
どのシリーズ関連作から読んでも、とりあえずは一旦「聖なる黒夜」を読んでほしいと思う。

まあ正直、どこから読んでもいいとは思うのだけど(私自身はアンソロジーに収録されていた「所轄刑事・麻生龍太郎」の「大根の花」という短編からシリーズに入ったし)分岐のはじめとしては「聖なる黒夜」を出すのがベターかなと思うので。

作品の時系列などは、よかったらこちらを参考にしてください


まずはここから「聖なる黒夜」

大物ヤクザの死からはじまるミステリ。同軸でとある男の冤罪と、狂ってしまった人生と、運命の恋と言っては軽すぎるかもしれないと思うほどの執着の話。

電子だと合本版が出ているのだけれど、もしまだ未読ならば上巻に収録されている短編「歩道」は下巻まで……本編を読み終わるまでは読まないでほしい。上巻本編を読み終わったら、そこから下巻に飛んでほしい。

麻生龍太郎のことを好きになれるかどうかで、このシリーズの印象って大きく変わるのかもしれないなあと思っていたりする。
私は麻生龍太郎こそが魔性の男というか、人を、男の運命を狂わせるのにその責任をとる術を知らない男、歯車のパーツを持っていない男なんだろうなと思っている。


及川純が気になった方は

「聖なる黒夜」を読んで、及川純という男が気になった方!お目が高い!(推しなので堂々と贔屓する)

「所轄刑事・麻生龍太郎」は「聖なる黒夜」の前日譚的な立ち位置。これから読んでも、支障はない。

及川純が麻生龍太郎の「過去の男」になる前のお話。どうしてもうまくいかないけれど、惰性のような、僅かな細い糸で繋がっていた時の麻生龍太郎と及川純を味わえます。緩やかに終わりを迎えていく二人の関係の話。
「聖なる黒夜」にあった灰皿シーンのような、語られていた拳銃のような、そんな一場面が出てくるまでに、二人がどんな関係性で過ごしていたのかが気になった方はぜひ。
意外と穏やかでびっくりするかもしれない。及川純は別にヒステリーだったわけでも、意地悪だったわけでもないんだ。

物語自体も、それぞれ独立している短編集なので、読みやすいと思う。
そして、これは中古で価格高騰してる新潮社版もあるのですが、間違えずに角川文庫版を入手してください。そして、新規書き下ろし短編「小綬鶏」を噛み締めてくれ……。
本当に「小綬鶏」を書いてくださって、柴田よしき先生ありがとうございます…泣いた…。


山内練と麻生龍太郎はそれから…?と気になった方は

「聖なる黒夜」続編の立ち位置。これは「聖なる黒夜」を読まないと、わからない連続性があると思う。

「私立探偵・麻生龍太郎」は「聖なる黒夜」で知ってしまった山内練の冤罪の原因に、刑事としてはいられなくなってしまった麻生龍太郎が、私立探偵事務所を開いている…という話です。
山内練とは一応、恋愛(お付き合い)をしている…?ような状態。結末はご自身の目で確かめてもらいたいですが、いっときの蜜月のようなものが味わえないわけではない。たぶん。

ミステリ短編集なので、読みやすいと思う。連作の中で一本軸として山内練との関係性、恋愛についてだけでなく、山内練のヤクザ(足抜け)問題が絡んでくる。
山内練以外には、田村が出てきたり、「所轄刑事・麻生龍太郎」に登場していた(「雪うさぎ」で及川純に刑事として拾われた)沖田が登場したりする。

私は焼肉食べながら田村が言っていたことに「ホントそうよな〜」と思った。でもそれを選べない、本人もなにが「普通」なのかわかっていなさそうなのに「普通」の道を選びたがってしまうのが麻生龍太郎なんじゃないかなと思ったりする。
山内練は麻生龍太郎と恋愛する気でいたのに、本気だったのに、麻生はそれを受信不良で受け止めきれなかったんだ。

この続編として「海は灰色」という作品があるのだけれど(玲子との決着がつく話のはず)2022年の10月現在は入手不可能。
読みたい方(書籍化を望む方)はファンレター送ったり、問い合わせたり(電子はKADOKAWAからだったので、 KADOKAWAがいいかと)正規ルート(ブックオフとか中古では買わない)で、シリーズ関連作を買ったりしましょう…!
柴田よしき先生も、出したくなくて出してないというわけでもないっぽいので(過去のツイート的に)
私も読みたい…なぜ買うだけ買っておかなかったのか、とても後悔している……。


麻生龍太郎という男が気になる方は

山内練のヤクザとしての一面を見たい方は

どちらもRIKOシリーズを推したい。作品紹介自体はまとめさせてもらいます。

男の人生(及川純とか山内練とか)を狂わしてきた男、麻生龍太郎。玲子には捨てられて可哀想…などと思ったことがあった方は、一度立ち止まってRIKOシリーズを読んでほしい。

RIKOシリーズは緑子という女性刑事が主人公の話。「聖なる黒夜」はそもそもこのRIKOシリーズのスピンオフという立ち位置。
そのため1巻「RIKO 女神の永遠」には麻生も山内も「聖なる黒夜」に出てくるお馴染みの面々は一切出てこない。けれど、緑子という人間を知るためには最初から読んでいただきたい。
なかなかクセのあるキャラクター性ではあるので、こちらもまた好き嫌いが分かれそうだ…。

2巻「聖母の深き淵」3巻「月神の浅き夢」での麻生龍太郎はなんだろう、すごく「人間」を感じる。「聖なる黒夜」や「所轄刑事・麻生龍太郎」「私立探偵・麻生龍太郎」は麻生の主観を読者も追う形になるのだけれど、RIKOシリーズや後述する花咲慎一郎シリーズはそうではなく。
特にRIKOシリーズは「聖なる黒夜」や「私立探偵・麻生龍太郎」で感じた麻生龍太郎への歪みのようなものの答え合わせの一部ができる気がする。(花咲慎一郎シリーズに出てくる麻生龍太郎はまじで1行なので…)

笑っちゃうくらい、格好つけてるのに格好悪い麻生龍太郎が見れます。2巻のラストなんて、その選択肢は独りよがりでなく?と思ったり、緑子への態度にもなんだかなぁと思ったりするけれど。仕方ない男だよね……。

対する山内練は、冷徹冷酷なヤクザの一面を見せてくる。目的のためには手段を選ばない、落とし前はきっちりつけさせる、そんなヤクザ。RIKOシリーズに登場したばかりの山内練にはあまり「人間」を感じない。緑子が怯んでいたからかもしれない。
遊ぶために鼠(緑子)を殺す猫(山内練)みたいな関係性でもある。山内練が緑子にした仕打ちは、脅しもあっただろうけど、遊び半分でも……(胸糞だな…)
だけど、山内練の冤罪問題や麻生龍太郎とのことを知ってしまった緑子は、どこか母性を感じてしまっている節もあると思う。1巻と2巻の間で緑子は母親になったのだけど、そのせいか緑子に感じる印象も1巻と2巻では少し違うし。

緑子と麻生龍太郎、緑子と山内練、どちらも色々とありますが。でも根底には麻生龍太郎と山内練との切っても切れない糸が見えてしまうので、緑子もこの二人の当てつけプレイに巻き込まれていると言えなくもない。
山内練の冤罪問題、解決(決着)させるならそれは緑子の手によってじゃないかと個人的には思っている(「海は灰色」がどうなっているのか知らないから…)

RIKOシリーズには緑子に相反する立ち位置という感じで宮島静香も登場するのだけど、彼女の麻生龍太郎への執着心もすごいよね……。諦めきれない恋…恋に恋する女……。自分が思う自分の価値に見合う男と付き合いたいんだろうなと思っている。

ちなみに田村も出てくる。田村ってヤクザだし、RIKOシリーズの田村は女転がしてるけど、なんか嫌いになりきれないところがありますよね。


第三者から見た麻生と山内の関係性が気になる方は

RIKOシリーズでも、味わえないことはないのですが、RIKOシリーズは緑子の主観が強いといいますか。ぶっちゃけ(ネタバレ)本意不本意は一旦脇に置いておいて、緑子は山内練とも麻生龍太郎とも寝ているので……第三者から見た「麻生と山内」というよりも、個々のキャラクター性の掘り下げの面がRIKOシリーズは強いと思う。

元刑事の花咲慎一郎の運営する無認可保育園の土地を持っていて、山内練はその権利を持っているので、金の取り立てをしてる…という関係性。借金返済のために副業として花咲慎一郎は私立探偵をやっているのだけど、それで事件に巻き込まれて…という話。こちら単体で読んでも問題ない。

長谷川環も登場したりする。意外と子煩悩。
野添奈美も登場するし、保育園に通う子どもを診てくれたりもする。奈美が闇医者のようになったのは刑事時代の花咲慎一郎が原因だったりする(韮崎へのガサ入れの一環で奈美の元にも押しかけていた)

花咲慎一郎の山内練も、まあ冷酷なヤクザではあるのだけど、RIKOシリーズよりもまだ体温がある感じがする。子どものこと、嫌いじゃなさそうだし。
この花咲慎一郎シリーズでの山内練は、超絶美人で我儘ビッチっていう感じがある。他人を振り回して振り回しまくっているのにも、どこか可愛げがある感じ。
時間軸としては「私立探偵・麻生龍太郎」だけれど、山内練からは麻生龍太郎との関係が続いているような雰囲気が漂っている…と個人的には思う。
オトして刑事辞めさせた斉藤とばっちり寝てるけど。斉藤との痴話喧嘩に花咲慎一郎巻き込むけど。

私は花咲慎一郎が偶然ハンバーガーショップで麻生龍太郎を見かけるシーン、その一文にたまらなく悶えた。
山内練が美形と花咲慎一郎に評されているのに対し、麻生龍太郎はくたびれたおっさんって感じで……。ここは読んでこそ味わえる滋養……読んでほしい。

ということで、第三者目線からの「麻生と山内」を吸いたい方には花咲慎一郎シリーズをおすすめしたい。

舞台をそっくり現代に移した新連載がJ・NOVEL WEBで始まっていたのだけど、現在連載休止中…こちらも続きが読みたいところです。




そんなこんなで、ざっくり書いてみた。齟齬があったら申し訳ない。優しく指摘してくれたら助かります。
関連作読んだら、この相関図も「あ〜そういう線の繋がりなのね〜」となることでしょう。

とりあえずは、予定されている及川純の新規短編を心待ちにし、「海は灰色」の書籍化が叶うよう柴田よしき先生を応援し続けましょう🕊


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