いち愛好家のショートショート『儀礼開花』

めでたい病がある。

何億人に一人の確率で発症する奇病。
生まれつき、ふるまいが美しいのだ。
そのふるまいは、希少性の高さから、ふるまい型(儀礼)として、市場に流通する。
五千円札、一万円札、その上の札が、儀礼(ぎさつ)。
NFTの亜流で、専用通貨が発行される。

疾患した子の親は、病院で
「儀礼開花、おめでとうございます。」
と言われて、初めて気づく。
極稀に、素養のある人にしか伝染しないので、ふつうに暮らせる。
よろこべる。

ただし、経済への影響が大。
医師は日銀へ報告。
日銀は、ニュースで、儀礼開花予報を発表する。
さすが、花の国の国民は、違う。
「私たち、いつ頃、見られるんでしょうね?」
と挨拶の話題に、のぼる。

これは決して、自分に伝染り、稼げるようになりたいからなんかじゃない。ただただ、新しいふるまいの美しさに、感動したいからだ。

 ところで、患者さん家族からの、お見舞い返しは何? 聞かれる前に答えておこう。
花見だんご。
失敗を重ねた人ほど、それは、よりおいしく感じられるそうだ。

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