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五十音小説「か」

階段を上がるヒールの音が近付いてくる。


ピンボーン。

扉を開けると
さっきまでLINEをしていた幼馴染が満面の笑みで立っていた。

「今日はキムチ鍋にしてみた!!!」


前もって言ってくれれば俺が買ってくるのに…
いつも家に来る少し前にLINEをしてくるから
俺は家で待つしかない。


鍋を食べながらいつもの如く中身のない話をダラダラしていると3ヶ月後にある同窓会の話になった。

俺は当たり前のように一緒に行くつもりだったが
当日は仕事で少し遅れて行くらしく別々で行くことになった。



そして
同窓会当日、少し遅れてきた幼馴染は
普段は着ないような肩が露出された
きれいめなワンピースを着ていた。


それを見た俺の周りにいる男達は


「お前の幼馴染綺麗になったなー。お前ら本当に付き合ってないんだよな?」

明らかに狙っている目つきに
イライラを誤魔化すように酒を流し込む

「…あぁ。」



鍋を食べて以来、
何故か会えない日が続いていた。

だからやっと会えると楽しみにしていたんだが…


「もしかして好きなやつでも出来たんかなー
お前、幼馴染なんだから何か知らんの?」


ドクン…


嫌なドス黒いものが自分から滲み出る。



先程の男の言葉に
暫く会えていない現状と
今日の幼馴染の姿に嫌な考えがよぎる。



このままでは駄目だと
気分を変えるために外の空気を吸いに行くも
対して効果はなく、

とりあえず長居するわけにはいかないため、
渋々会場に足を進めた。




そして

もうすぐ会場に着くというところで
一番会いたかった人物を見つける。
化粧ポーチを持っているのを見る限り
化粧室に行くところだろう。


そう頭の片隅で考えながら
視線は吸い込まれるかのように
露出された肩にいく



…またドス黒いものが滲み出る。





(…もう限界だな…)



足の速度を早め
幼馴染みと距離を詰めると
露出された肩に
口を近づけ…



キスをした。


そして…






固まった。





自分からやっておきながら
予想外の込み上げる欲求に戸惑う。



暫く葛藤をして何とか離れたが


一瞬魔が差して…


キレイな肩に歯を立てた。



気づいたときには時既に遅し。
顔を合わせる事もできず
上着を押し付けて逃げるように会場に戻った。






席に戻ると、すぐさま男達が聞いてきた。

「お前。上着はー?」



「…大事な幼馴染が寒そうにしてたから渡してきた。」



(‥これ以上おまえらの視界に入れてられっか。)



先程の自分の過ちと欲求に戸惑いながらも
自分の意志がハッキリしたことにドス黒い気持ちは消え
不思議なほどに清々しい。






解散まで残り15分。









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