ふるうと

詩を書いています。

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最近の記事

昔から油揚げが好きな男なんて

おねいさん、おねいさん。悪いことは言わないからあの人だけはやめておきな。だってあの人、人を殺しちまうんだから。前の女もいなくなったよ、きれいなキツネ目の女だった。仲良くしてんなぁと思ってたら、ある日あっちの山で死体が見つかった。その前の女だってそうだ、そっちは川に浮かんでた。だから悪いことは言わねえ、おねいさんだってきれいな女なんだから何も人殺しと仲良くすることねぇだろうと思うんだ、おれは。あの男、油揚げが好きだろう?油揚げが好きな男にいいやつなんていねえってもんだよ?昔から

    • 何も持たずに生まれた人

      特殊な能力を持って生まれた人たちがいる。 いいなあとずっと思ってきた。ふつうの人には無い特別な力。多くの人を惹きつけ大切にしてもらえる。 だがなんと苦しみがあるらしい。いつも特別扱いをされてるけど、自分に対してではなくて、特殊な能力を大事にしてもらっているだけだ。それがつらいと。何も持たずに生まれていれば、自分自身とつながってくれる人と出会えたかもしれない。けど、今はもう難しいと。 似たような特殊能力を持っている人たちの集まりにいくのがラクらしい。いちばん自分が薄まっていて、

      • ラピッドのいつか

        早く早くを聞きすぎて、何が早いかわからない。 前より早くやれているのに、早く早くでわからない。 お風呂に入れば早く早く。ごはんを食べれば早く早く。 朝目覚めたら早く早く。しっぽを振って早く早く。 会社に行ったら早く早く。 早くやらない、ゆっくりやろう。たくさん進むなひとつだけ。 早くもらうな、後からもらおう。ゆっくりゆっくり、遅くして。 遅らせろ遅らせろ。もっともっとゆっくりやって。もっと。 もっとゆっくり起きて、もっとゆっくり仕事して、もっとゆっくりご飯食べて。 早くて

        • 時林檎

          こっちをみている林檎 用事があるのか林檎 聞きたくないから無視 色が変わり始める林檎 動けないから下から林檎汁 ずっとこっちをみてくる林檎 同じ場所から同じ目で ダラダラしてくる林檎 カサカサになって終わる林檎

        昔から油揚げが好きな男なんて

          報酬虫

          苦い溜息それもよし 甘い腰痛それもまたよし 労働の報酬をください 働いたつもりじゃなかった 誰にも言わないだけだったのに 報酬が命令です 弱い声では届かない 強い声でも届かない 自分の声を出せるように 自分の声を出せるように 玉虫色の文字は黒い 混ざりあえば黒い 混ざらないやつは白い 何も知らない白いやつ 報酬をください

          こんな日は甘いお菓子をつくろうよ

          今日は誕生日 甘いお菓子をつくろうよ 友達呼んで 甘いお菓子を食べようよ 砂糖をさらっと、塩でピリッと、量なんて気にしない この日のために断食してた だから大丈夫 すりこぎ棒で半殺し 豆はつぶさないように煮よう みんなで丸めよう 変なかたちも作っちゃおう ほら おはぎができたぜよ

          こんな日は甘いお菓子をつくろうよ

          闘いの途中で

          リズムが狂えば右腕も狂う 理想が狂えば模倣も狂う 虎のつもりで狂えばいい  熊のつもりで立ち上がってしゃべればいい 感じの悪さもあきらめたらいい 密閉されて威張ればいい 雨に何も感じない人間でいればいい 虫の世界を見くびっていればいい 上手に踊ることだけ考えておけばいい

          闘いの途中で

          粒粒の息

          王者は下界を支配しているとは思わない 秩序と生きる枠組みを与えている 仕組みがなければ自由が生まれ 今よりも息苦しく無駄な命があふれる世界になる 粒は見えない触れない 先生に聞かないと見てはいけない 予習が済んでるから次の課題を考えている アタマの中身はどう覗く 手足の動きに息の音 無意味な真剣だけが武器 海をうろつき、紙を準備しよう

          糸生まれの声

          関節が硬いのは生まれつきかと思っていました。 天井に向かって伸びる細い紐が付いていて、自由に動かせないことを知りました。29年かかって気が付きました。友達はみんな気付いていたそうです。 下を向かされていることが多いので、鼻水や涙が出るとすぐに地面に向かって液体が落ちていきます。靴の先っちょに当たってしまうこともあります。 上を向かされているときは、液体は出てきません。 想定以上の液体が体内から出てくると、上を向いていても溢れ出してきます。涙や鼻水が溢れても何かが変わるわ

          糸生まれの声

          遠くから見ないと

          近くで見てはいけません。目が悪くなるから。 近くで見てはいけません。近くで見るのはまだ難しいから。 近くで見てはいけません。近くで見るとわからなくなるから。 近くで見るのは賢い人。 遠くから見るのはもっと賢い人。 近くで見るのが楽しいならいいけど、楽しいから近くにいるのはいけません。遠くから見るのも楽しいからです。 遠くから見てはいけません。音が聞こえなくなるから。 遠くから見てはいけません。ひとりになってしまうから。 遠くから見てはいけません。熱を感じなくなるから。

          遠くから見ないと

          明日から人の目を見て話そう

          おかしいだろ 黙ってるのは おかしいだろ 寝てばかりなのは おかしいだろ アニメばっかり見てるのは おかしいだろ ぶどうパン毎日なんて  おかしいだろ 仕事が趣味だなんて おかしいだろ 4ヶ国語話せるなんて おかしいだろ 新卒ですぐにボーナスなんて おかしいだろ 水道止まるなんて おかしいだろ 公園から水汲んでくるなんて おかしいだろ 論理的なんて おかしいだろ 通貨発行権なんて おかしいだろ  明日から人の目を見て話そう

          明日から人の目を見て話そう

          犬を見ろよ

          繋がれててもしっぽふるのは、餌くれるからじゃないだろう 飯を食わせてもらってもあんなに誰かを信頼しないだろう 犬を見ろよ 飼い主を信用して裏切らない。裏切る方法なんて思いつかないんだろう。餌をくれるから裏切らないのか。散歩をあんなに喜ぶなんて。野良犬はしっぽ振って散歩しない。 犬を見ろよ 言葉が通じてないようで、ちゃんとわかってくれてるんだろう。 言葉を発さなくてもわかってくれるときだってあるだろう。 犬を見ろよ どうしようもないなら、犬を見ろよ

          犬を見ろよ

          アーモンドな雫

          涙は真っ直ぐ 目に落ちる 増えた涙が 耳に向かう 眉間のドレープ 雫の重さに 黒目の闇は声をもたない 猫の鳴き声おもいだす つがいのアーモンド 結局、時間が経てば忘れる

          アーモンドな雫

          親取引

          親の言葉 子が吐き出す 咳の動き 親の動き 地に足着く角度 子が受け継ぐ 置かれたものを丸ごと受取る 子の言葉 孫は使わず 亀がつないだ二番煎じの恋物語 取り残されるは妄想癖 偶然たまたま支配層 取引しては生き残れない 受取り減少 付与は過多 取引しては生き残れない 大事なものがちがうのだから

          心音晒して 吐息聞かせて

          鏡 我が身 映し出す 声色 香り 見えぬまま 言葉 その場 決めつける 理想 言いそう 顔見りゃわかる 胡座 落雷 オニボウフラ 視線 激戦 マングース 鏡 我が身 映し出す 心音晒して 吐息聞かせて

          心音晒して 吐息聞かせて

          朝食

          黒とも言えず、むらさきとも言えない 小さな黒目が集まっている あきらめて こちらを見ているのか ただそこに置かれているだけか わたしは見ている 地中から出てきた黒目 恐怖があるだろう 生まれてきた意味など感じないだろう 噛み砕き、仕事へ向かう