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居合練習刀 ZS-105S

●居合練習刀の上位バージョン

少し長めの刀身と樋の効果を体験したく居合練習刀 ZS-105Sを入手しました。

こちらは以前レビューした居合練習刀ZS-103 の上位仕様の位置付けのようです。

品番ZS-105の後につくアルファベットがSは刃紋が直刃、のたれはN。

価格はどちらとも24000円前後で流通しています。

●各部の詳細

刃渡は74cm(約二尺四寸五分)で身長175㎝前後の方に適しているよう。

鞘を抜いた状態でキッチンメーターで重量を計ると875gでした。標準的な木刀より重くなっています。

艶が抑えられたメッキ仕上げ合金製の刀身には樋という溝があり、これにより刀を振ると、

「ヒュッ!」

と風切り音が鳴ります。

刀を振る速さや向きにより風切り音の音程が変わるので、力を刀に伝える振り方ができているかの確認や、剣筋を確認する練習の目安とできそうです。

黒色の綿の柄糸が巻かれた柄の長さは25cm(約八寸五分)刀身の長さに適した標準的な長さになっているようです。

鍔の意匠は鶴をあしらったもので、塗装仕上げのよう。標準的な物より肉抜き部分が多く軽量に仕上がっているように思えます。

はばきは黒色仕上げ。
はばき付近で刀身の幅、元幅を計測すると約31㎜、重ねの厚さは6.5㎜、中央付近の最も鎬の高い場所は7.3㎜で0.8㎜の高低差があります。

鍔の周りの作りはしっかりとしており、刀を強く振ってもきしみやぐらつきはありません。

縁の金物には龍がいらっしゃいました。

刀身と柄を繋ぐ役目をもつ目釘は竹製で斜めに入っており、目貫は玉を手に持つ龍です。

柄頭も龍で、ZS-103 と同じく龍をメインテーマとした拵えとなっています。

鞘は木製でした。鯉口はしっかりとしており、刀を納めた状態で下に向けても自重で落ちてはきません。

なるべく今の鯉口の状態で使い続けたい為、居合刀を使わない時はあえて鯉口をぴったりと合わせずに、2〜3ミリの隙間ができるようにして収納しています。

●似てはいるが違う鞘

鞘の形状がZS-103 非常に良く似ていましたので、試しにZS-105の鞘にZS-103の刀身を入れてみました。

結果、収まりました。

が、

再びZS-105の刀身を入れようとした所、はばきが途中までしか入らなくなってしまいました。

多分鯉口の周りか、鞘の内部の寸法が微妙に変わってしまったのかも知れません。

何度か抜き差しを繰り返していると再び刀は納るようになりましたが、形状は似ていても違う刀の出し入れはもうやらないことにします。

●ZS-103とZS-105の比較

ZS-103 と比較すると価格が6000円程上がっています。その為か刀身はキラキラとした艶をあえて抑えた仕上げや、はばきが黒色仕上げになっており全体として落ち着いたイメージになっています。

はばき付近の刀身の幅はZS-103が29.8㎜、ZS-105Sが32㎜となっており、ZS-105Sの方が幅広でした。また、樋が入っていたり鎬の高低差もありZS-103より刀身の造形レベルが上がっているように思えます。

個体差もあるとは思いますが、ZS-105Sでは鞘もしっかりと鯉口が機能するようになっており、質感も機能もワンランク上がってます。

鞘を払った重量は実測でZS-103 は887g、ZS-105Sは875gとZS-105Sの方が刀身が長いのにも関わらず12g程軽くなっています。これは刀身の樋の有無や鍔の形状によるものでしょう。

刀を振った時の感触は柄の長さの影響で若干違いはありますが、私の技量では重量差や長さの違いをはっきりと感じることはできませんでした。

逆を言えば長さや重さが違うのにも関わらず振った感触は大きく変わらないのは、どちらも居合刀として使いやすいよう重量バランスを考慮しながら部品の選別や調整がなされているのかもしれません。

刀身の長さの違いの影響は、振り心地にはあまり出ませんでしたが、抜刀と納刀動作の時は顕著に現れました。

たった2.8㎝程の違いですが、刀身の長いZS-105はより丁寧に身体を使わないと、動作がぎこちなくなってしまいます。

●まとめ

総じて、身長がある方や流派の要求等で長めの刀を使いたい方、樋のある刀身が好みの方には、ZS-105が適しているように思えす。

樋により発せられる音に耳を傾け、振り方が適切かや、異なる振り方でも一定の音程になっているか等チェックでき、練習のバリエーションを増やせそうです。

また、抜刀や納刀動作をより深める練習の際にもあえて長めのZS-105を使ってみようと考えています。動作を勢いにまかせるのではなく、ゆっくり行なってもスムーズに抜き差しできることが目標です。

同価格帯の外観を重視した美術刀と比べると大分地味ではありますが、居合練習刀は型の稽古や素振りで実際に使ってみることで機能まで体験できる点が非常に気に入っています。

この価格帯の模造刀は、撮影や鑑賞目的なら美術刀、使用目的なら居合練習刀と使い分けるのが良いかと思えました。


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