ii never fails. —𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 『愛と呼ぶなら』の歌声について—

◯はじめに◇

本ページは、ぷるおさん主催「harmoe Advent Calendar 2024」12日目の記事です。
詳しくは以下をご覧ください。

adventar.org

書こうと決めたのが前日なので、他の方の濃ゆい記事に比べるととりとめもなく短めですが、お付き合い頂けると幸いです。

◯自己紹介◇

はじめましての方もいらっしゃると思うので、一応自己紹介しておきます！ (意外と長くなったので読み飛ばしてください)

私が𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖を知ったのは、結成が発表された2020年の12月のあの日(もう4年なんですね！！)。
当時からスタァライトにハマってたので九九組周りの情報は追ってたのですが、その時は「まひるとななの人がユニット組むんだ〜 ポニキャンでスタァライトのスタッフさんもいるじゃん」くらいの印象でした。

その後、ビジュアルが出て、曲が出て、配信やYouTubeで見て、「普通に好き」ぐらいの距離感だったんですが、2022年に自分が車を購入したのを気に、特にドライブ中に1stアルバム『It’s a small world』をリピートするようになり、車内で「ウー！ ハー！」とかひとりで叫んでるうちに「好きなアーティスト」に変わっていきました。(スタァライトはあまりに運転に合わない曲が多い！ そこが好きなんだけど！)

それから一作ごとに違う角度からパンチを喰らい底知れぬ沼に突き落とされ続けて、今年の夏、やっとはるもえroomに入会しました！ あまりに遅すぎた……！

𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖をずっと知っているようで実は全然知らなかったようで…… そんな私が初めて手にした𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖のフィジカルCDが『radii」です。

曲のクオリティの高さ、アルバムのテーマ、CDを買う意味を見出させてくれるようなアートワークと細部へのこだわり。自分のオールタイムベストに入れたいぐらい好きなアルバムです。
そんな数多ある魅力の中でも、やっぱり自分が𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖を、岩田陽葵さんを、小泉萌香さんを好きでいる理由は二人の歌声そのものです。

というわけで、本記事ではアルバム新録曲で「無償の愛」をテーマにしたバラード『愛と呼ぶなら』のお二人の歌声について、私が感じ取った脳直怪文書を徒然なるままに記したいと思います。

『愛と呼ぶなら』

作詞・作編曲 : ヒゲドライバー

1A

わたしの目をあげましょう
孤独で震えてるあなたに
曇りがちな世界が
光で満たされるように
さあ
さあ

無から、まるで生命が再び吹き込まれるようなブレスで曲が始まります。岩田さんのブレス大好き人間の会のみなさんもきっと歓喜していることでしょう。像になった幸福の王子の、新しい世界が始まる予感を感じさせます。

『曇りがち〜』のフレーズは特にそうなんですが、ガラスの置物を扱うかのような丁寧さと優しさに吐息を少し混ぜて、言葉の出だしから余韻の震えまで耳に刺さらない音で、高音も非常にやわらかく歌っているなという印象です。バックグラウンドのピアノも音数が少なく、繊細な歌声に思わず息を呑んでしまう始まりです。

そして、最後の『さあ』で入る小泉さんがあまりに優しく、主旋を引き立てつつもぶつからない「溶かした声」(一人で歌う時と比べて岩田さんに溶けあう声で且つ、アタックや子音の主張を薄め、声の輪郭をぼやかしたハモり向けの歌声！) であり、『愛と呼ぶなら』の他の場面でも顕著に見られるのは特筆すべき点です。さすがハモり部。
小泉さん、メロディの時とハモりの時で発声の質(言葉を包み込むフィルム？)が違いすぎてすごすぎます。

涙を流すあの子も
絶望の崖に立ってるあの子も
誰かのためになるなら
この身尽きるまで飛び続けましょう

ツバメパートに入るわけですが、この節は、ひと言で表すなら「まろやか」というのが適当でしょうか。岩田さんパートのやわらかさを引き継ぎつつ、小泉さん本人名義だからこそ出せるナチュラルボーンの優しさが溢れているように感じます。

冒頭『涙』の2音目ではファルセットに切り替え、『あの“子”も』は「ko」と「ku」の間ぐらいの発声であくまで控えめに。

『絶望の崖』の低音の沈み込み方は本当に絶望って感じですが、『立ってる』はあくまでそっと優しく置くように歌ってバランスをとっています。そして『あの子も』のエッジボイスは小泉さんの真骨頂ですね。

『なるなら』は『ら』の後に続く『この身尽きるまで』とのシームレスなつながりを意識した伸ばし方でありつつも、小泉さんの地声の低さが窺えてとても好きです。

このパート全体の「まろやかさ」の主因は、母音の生かし方にあります。たぶん。
スローテンポなので必然ともいえますが、フレーズ終わりのロングトーンで母音だけを残して丸く閉じる歌い方に、小泉さんの声質が相まってそう感じさせるのかなと考察しておきます。

1B

命あるものはみんな
誰かの思いをもらって生きている
そう   いつか
わたしもあなたにもらったように

ここでもブレスから始まるBメロ。バトンは再び岩田さんに渡されました。

『思い』の“も”の懐と『もらって』の促音(っ)のタメ、いいですよね。すごく大切に抱えている様が。

『いつ“か”』は岩田さんのこれまでの歌唱の中でも三本の指に入るフレーズです。金属質の鳴りと響き、研ぎ澄まされた繊細さ、なのに感じるあたたかさ、ゆらぎ、最後の息の切り方、どれをとっても至高です。

ツバメと出会って愛を届けるうちに、先ほどよりもひとつ世界の曇りが晴れたようなBメロを締める『もらったように』は一転、力強さがありサビへの橋渡しになっています。

1サビ

ああ
あなたのかじかむ心を温めよう
この鉛の心臓
この小さな体を
動かすものを愛と呼ぶなら…

ユニゾンです。ありがとうございます。ここはファルセットいくかいかないかギリギリのところで、絞り出すかのような表現ですね。サビ頭ということもあり『ああ』の出音は結構強めなんですが、語尾は途切れそうなくらいにかなりやさしく置きにいってます。

それを受けた『あなたの〜温めよう』は後半にかけて上がっていく構成で、讃美歌のようなコーラスも美しい。

自分の力だけでは動かせなくなってしまった王子の『この鉛の心臓』は少し抑えめなのですが、対してツバメの『この小さな体を』の小泉さんの表現はあまりに情感が込められていて、涙が溢れそうになります。
Aメロの項で「フレーズを(まろやかに)丸く閉じる」と言いましたが、ここは真逆で、『を』の声を強く出したまま息を切っています。

『動かすもの』の岩田さんの『う』はwooって上がってくるのが好きです。

サビを通して、小泉さんの方がより感情を曝け出して歌っている印象を受けました。『愛と“呼ぶ”なら…』でも結構低音のこぶしが効いてます。ただ、フレーズの一部で強い表現をしても、別の場所ではやわらかく、あくまで全体のバランスをとっているのが、まだ1番のサビなんだなという感じです。

2A

あなたがいてくれたこと
笑ってくれたこと
やさしい言葉をくれたこと

ソロパート→ユニゾンときたら、2番は掛け合いでスタートします。ありがたい構成です。

『あなたがいてくれたこと』は真っ直ぐな透明感を湛えつつ、口元に笑みを浮かべながら歌っているような晴れやかさで、『笑ってくれたこと』はまさに慈愛の女神です。

『“や”さしい』は来ました！ エッジ！ 文字にするなら「ぃやしぃいぃ」でしょうか？ 

『くれたこと』の『とーぉー』はかなりギリギリを攻めた下げ方です。『くれたこ』までは音符に対して真っ直ぐ音をあてているのに、『と』では違和感あるぐらい大袈裟に外してきてきます。
かなり細部まで突き詰めていたらしいディレクションがどうだったのか、気になるところです。

理由なんてそれだけで  (それだけでも)
きっといくらでもがんばれるよ

※括弧内は歌詞カードには書いてありません

真っ直ぐな主旋律とそれに寄り添うハーモニーという構図です。『理由なんて』ぐらいの音域の岩田さんをもっと聴いていたいです。
隙間を縫うように追っかけしてる小泉さんの『それだけでも』は出だしで存在感を主張して、主旋に重なる『でも』を少し抑えてるのはさすがですね。

『いくらでも』は音程的には「ソミレドド」だと思いますが、誇張すると「いーくう↑↘︎ら』(母音の「う」に高めの重心を持ってきて、そのまま「ら」で下ろしていく) ぐらいの上下動がありますね。
『がんばれるよ』はハーモニーが一級品です。小泉さんはまさに「溶かした声」です。『が』や『ば』の濁音の重なりも決してきつくならず、淡く、それでいて確かにやさしく添りそっていて、歌声を上へ飛ばしていくようなハーモニーが本当に素晴らしいです。

2B

目に見えるものがすべてじゃないと
そう思えたから
もう
誰にどう見られてもかまわない

2Bは、1サビ後から入ったバンドサウンドが消えて、再びピアノと歌だけになります。歌詞としても「無償の愛」の本質に迫っていく部分ではないでしょうか。

やっぱりこういう場面展開は岩田さんにまかせろ！ です。あまりに静寂に似合う澄んだ歌声。どちらかというと「真っ直ぐ」「おだやか」なイメージだった2番でしたが、『すべて』の入りなんかは特に、1番Aメロのような吐息加減に戻っていますね。

その後『から』で元に戻して『もう』で二人のハーモニー、小泉さんの『誰にどう見られてもかまわない』はもう語るに及ばないでしょう。(あまりに良すぎて文章を放棄)

2サビ〜ラスト

ああ
あなたに届けたい
素直な   この気持ち
嘘偽りもなく
ただただ真っ直ぐに
伝えるから聞いてほしい

ラストスパートです。感情の揺れ幅もどんどん強くなっていきます。

『ああ』は1番と比較すると全然違いますね。特に岩田さんはファルセット使わずに伸ばしてて、そこがパッと聞いた時に目立つ部分かと思います。

1サビではフレーズ内の強弱について慎重にバランスを取っていたのが、2サビ以降は全文字フォルテです！くらいの強さです。頭からお尻まで全部はっきり発声してます。『嘘偽りもなく』も『ただただ真っ直ぐに』もそうです。

ああ
あなたのかじかむ心をあたためよう
この小さな心臓
鉛の心を
動かすものを愛と呼ぶなら
あなたのことをいつまでも

最後の『ああ』は小泉さんの伸ばし方が最大級に感情ONモードに変わってます。しかし、改めて聴いてみて、こんなに違うとは思いませんでした。みなさん、これはどの『ああ』でしょうクイズ(3択問題)があっても聞き分けられるように、今のうちに復習しておきましょう。

以降のソロパートでは、二人の歌声の質感が全開になってますね。『この小さ“な心”臓』の揺らぎ方とか、『鉛の心を』のハイトーンとか、『動かすものを愛と呼ぶ“なら”』の粘っこさとか……

愛してる

そして、二人の愛は永遠になりました。

最後にして最高のharmonyです。これぞ𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖。ありがとう𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖。

◯おわりに◇

以上、『愛と呼ぶなら』の歌唱について書いてみました！ まにまに…してたので最後はかなり駆け足になってしまいました。

ここまでお読みくださった方、いるでしょうか……？ もしいらっしゃったら、ぜひ『radii』の素晴らしい𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の歌声にもう一度注目して聴いて頂きたいですし、みなさんの「ここが好き！」もたくさん教えてください！

最後になりましたが、みなさんの𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖愛に溢れたアドカレを企画してくださったぷるおさん、本当にありがとうございました！

2025年もその先も、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の素敵な楽曲とお二人の活躍が見られることを願って、本記事を終わりたいと思います。