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モンブラン
そろそろ今年も忘年会シーズンだ。
私は一次会の後、二次会へ移動する時に、さり気なく消えることがある。
今回も、一次会がお開きになった後、二次会にも行くつもりでいたのだが、宴会場から出るのが最後になってしまい、誰と絡むこともなくゆっくり会場に向かっているうち、何だかなーと思い始めてしまった。
私以外の人がお店に入ったのを見届けて、誰にも気づかれていないな、と思った途端、別の道を歩き始めていた。
池袋は10年ほど前、毎週のように飲みに通った場所。
よく行っていた焼き鳥屋の看板が明るく光っていた。
コロナ禍を乗り切ったのだろう。
飲み屋が続く道をひとりで歩く私の目の前に、これから居酒屋にでも行くのだろう数名が、大きな声で話しながら歩いている。
鞄の中で、lineの呼出音が鳴った。
二次会へ行った、仲の良い年下の男性友人からだった。
「来ないんですか?」
二次会メンバーの中でも、彼からのメッセージで、私の頬は緩んだ。
しかし今日の彼は、最近出来た彼女を連れての参加だった。
既読スルーのまま、駅に向かう。
電車に乗ってから、
「体調が悪いから、先に失礼するね。」
とスマホに入れた。
携帯がまた鳴った。
今度は、奥様がいる彼から。
駅チカまで迎えに来てくれるという内容のline。
たぶん、二次会へ行っていたら、連絡は取れなかっただろう。
降車駅は、彼が来る駅。
私が先に着いた。
階段を降りてすぐにあったケーキ屋に、夫婦のようなカップルが品選びをしていた。
「美味しそう!」
女性が思わず口にした。
つられた私も、ウィンドウを覗く。
今年の秋は、モンブランのお店の番組をよく目にした。
そこには、私に買えと言わんばかりのモンブランが並んでいる。
「モンブランをひとつ、ください。」
ケーキ2個入用の持ち帰り箱に、1個だけ入れてもずれない仕切りと、モンブランが入った中身を見せてくれて、
「こちらでお間違いないですか?」
と、バイトのお姉さんが私に聞いた。
1月の自分の誕生日にも、1個だけケーキを買ったことを思い出した。
今日も自分のためだけにケーキを買った。
「ありがとう」
と言ってケーキを受け取った。
ロータリーには見覚えのある車が停まっていた。
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