一筋縄ではゆかない其角

美術ミステリーアンソロジーの中に
俳句が出てきて驚いた。

美術愛好家が『椛山訪雪図かざんほうせつず』という紙本墨画淡彩(紙に描き、部分的に色をつけた水墨画)を説明するときに
宝井其角の句を引用する。

闇の夜は吉原ばかり月夜哉

この句
闇の夜は 吉原ばかり月夜哉
と読むと
 月のない夜だが吉原ばかりは満月のように明るい
と吉原の繁栄を詠んだものになる。

しかし
闇の夜は吉原ばかり 月夜哉
と読むと全く逆の意味になる。
明るい満月の夜だが
吉原ばかりは真っ暗だ。
吉原は嘘と駆け引きだらけ、煩悩の闇に閉ざされた世界なのだ…。

「椛山訪雪図にも、実は二重の意味が籠められていたのです」
 犯人はその二重の意味に気づかずに
墓穴を掘ってしまうのだった。

画題の意味は
「紅葉の山に雪を訪ねる」。
さて
どのような絵なのか?
知りたい方はコメント欄に
書き込んでほしい。
いや自分で読むよ
という方に⬇
『歪んだ名画』(朝日文庫)の
『椛山訪雪図』(泡坂妻夫)。