手段と目的~川勝知事の辞任を見て~

リニアの開業時期が2027年から、大きく延長された。
主に川勝知事が静岡工区の着工を認めないからだ、ということにされてきたが、知事は以前こんな発言をしていた

「静岡だけが問題なら、2027年に静岡以外は開通するはず」

https://www.at-s.com/life/article/ats/1388720.html


先日リニアの全線2027年開業が断念され、「早くても2034年」という言葉がちらほら見えてきた。個人的には、静岡だけが原因なら、7年も伸びるのだろうか?という疑問が生じた。静岡工区は10キロにも満たないし、そこだけで7年も伸びるのだろうか?

そして、最新のニュースがこれ。JR東海は4月4日(今日)会見を開き、静岡以外にも2027年までに間に合わない工区があることを明らかにした。

昨日までは静岡以外の工区が2027年までに間に合う予定だったのが、今日になって急に間に合わなくなった・・・という事があるはずもない。川勝知事のせいでいつ開通するか読めない、という点はあったのかもしれないが、このタイミングでこういう発表するということは元々2027年開業はムリだったのだ。

これについては今後、2027年までにどこまで開通するのかを見ればJR東海の話がどこまで真実だったのかわかるだろう。この記事によれば静岡以外でも問題が発生しているようなので、今後どんな言い訳が出てくるか見ものである。


しかし、私は川勝知事を擁護したいわけではない。
そもそも、川勝知事がリニアにNOを突き付けたのは、大井川の水源を守るためである。「リニアが通ると静岡に来る人が減るから」「静岡にリニアの駅が無いから」といった意見もあるが、リニアを使う人はどのみち今ものぞみで静岡県を通過しているだろうし、静岡のあんな場所に駅を作ってもたいして意味はないと思う。ここは私の個人的な意見なので、実際は違うかもしれない。
この、水問題について、大井川流域の自治体の代表として多く発言していたのが、島田市長である。

本来あるべき水資源の問題や環境の本筋から離れた様々な課題で 静岡県はいろいろとにぎわせてきましたけど、これでしっかりと本来あるべき議論に戻る1つのきっかけになればありがたいなと私は思っております

本来あるべき問題とは、当初の大井川の水源についての話だ。この問題があるからこそ、知事と関係市町は協力してJR東海と話を進めてきた。川勝知事がリニア問題で知事に再選したのも、ここに県民が賛同したから・・・ということになる。
しかし、それが本筋から離れた。発言をそのまま読み取れば、島田市長が考えている「本筋」とは離れた場所へ議論が移ってしまった、ということになる。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20231127/3030022313.html

この記事にもあるように、もはや島田市としては水問題は解決に向けて歩みだそうとしていた。しかし、川勝知事だけはNOを出し続けた。それが、「本筋から離れた様々な課題でにぎわせてきた」ということになる。

そして、知事の辞任を発表した後のインタビューによると、リニアの開通が延長したことが成果であると捉えていたようだ。

本来は、水問題を解決させることが目的。そのための手段が、JRと話し合い対策を決める。そこで工期が延長しても仕方がない。重要なのは水問題の解決であり、本来の工期内でも問題の解決が出来るなら、それでも良かったはず。
しかし、この記事を見るに、工期の延長が目的になっていたのではないか?という疑いが生じる。

手段が目的になっている、ということだ。

社会でもよくあることなのだが、こうなると何も生み出さない。
例えば、地域を盛り上げるためにイベントを始めたが、最終的には「毎年やっているから」という理由でイベントが続いている状態になったとしよう。
これも本来は地域を盛り上げることが目的、イベントは手段だったはずなのに、イベントをやることが目的になってしまっている。
本来の目的がきちんと共有されていれば、イベントが盛り上がらなければ内容を変えたり、イベントを打ち切って別の手を考えたりというのが出来るのだが、手段が目的になってしまうと延々と手段を遂行するだけ・・・何となくイベントをやり続けるだけになってしまう。
これを変えるには、大きなきっかけが必要だ。

なので、このタイミングで知事が辞任を発表したことは、島田市長のコメント通り、大きな転換点になると思う。

個人的には、リニアが開通しようがあまり乗る事もなさそうなのでどっちでもいいのだが、議論がきちんと前進することを望むばかりである。

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