【読書記録】2023年3月26日〜4月1日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 あっという間に4月、気がつけば今年の4分の1が終わってしまったんですね。本当に月日と経つのは早いものです。
 1日1日が飛ぶように過ぎていくのに、読みたい本ばかり増え、積読はちっとも減らない。
 特に今月は、あの作家さんに巡り合ったというか、たどり着いてしまったので…。

 ということで、今週出会った本たちをご紹介します。

【2023年3月26日〜4月1日に出会った本たち】

●蓮花の契り 出世花

著者 高田郁
【内容紹介】
 下落合で弔いを専門とする墓寺、青泉寺。お縁は「三味聖」としてその湯潅場に立ち、死者の無念や心残りを取り除くように、優しい手で亡骸を洗い清める。そんな三昧聖の湯灌を望む者は多く、夢中で働くうちに、お縁は二十二歳になっていた。だが、文化三年から翌年にかけて、江戸の街は大きな不幸に見舞われ、それに伴い、お縁にまつわるひとびと、そしてお縁自身の運命の歯車が狂い始める。実母お香との真の和解はあるのか、そして正念との関係に新たな展開はあるのか。お縁にとっての真の幸せとは何か。生きることの意味を問う物語、堂々の完結。
裏表紙より

【収録作品】
・ふたり静
・青葉風
・夢の浮橋
・蓮花の契り

【感想】
 高田郁さんの小説家デビュー作〝出世花〟の続編にして完結編です。
 読了後にまず浮かんだ言葉は「大人の文学」でした。
 なんというか静かで、力強くて、味わい深くて、温かい。これはお縁さん、いや正縁さんのイメージそのものです。
 女性として(こういう書き方をすると最近は炎上するのか奈)、妻として、母としての幸せを選ぶのか。仏道を極め尼僧の道を歩むのか、それとも三昧聖として湯灌の道を貫くのか…。
 お縁さんが自分の道を決めることになるエピソードは、読みながらなぜか頭の中で自然に手を合わせていました。
 江戸時代、一般のお寺に比べ死者を弔ういわゆる墓寺が格下とされ、寺社奉行の管轄外にあったという話には驚かされました。

●北斗 ある殺人者の回心

著者 石田衣良
【内容紹介】
 両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始めー。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。第8回中央公論文芸賞受賞作。
裏表紙より

【感想】
 前半、北斗が親から虐待される場面の連続に、何度読む手を止めたことか。
 中盤は里親の綾子との信頼関係が築かれていく過程で愛し方、愛され方を知らない北斗がとった行動と、信頼関係が築かれてからの北斗の甘えっぷり、そしてまさかの別れはかなり切なく。
 後半の5日間にわたる裁判の場面では、被害者家族の心情、北斗の過去から減刑を願う弁護側の証言、そして最終意見陳述での北斗の心からの言葉にグッときて、読了後に大きなため息を一つ。
 この気持ちをうまく表現する言葉を、残念ながら私は持ち合わせていません。

●波のうえの魔術師

著者 石田衣良
【内容紹介】
 あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの“おれ”だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは…。新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。
裏表紙より

【感想】
 就職浪人中の青年が投資家の老人に見込まれ投資の世界にのめり込んでいく話です。
 確かにお金持ちにはなりたいけれど、自分の中には当たり前に働いて当たり前に住宅ローンを払うという生き方しか浮かばず、「お金を増やす」ということにまで頭が回らなかったので、今までこっち方面には全く触手が動きませんでした。
 なのでこの歳になっても経済の仕組みや専門用語はやっぱり難しく感じてしまいます。なにせ「風説の流布」なんて言葉もこの物語を読んで初めて知ったくらいですから。
 とても面白い物語でしたが、やはり自分はお金は汗水垂らした代価と考えていて「金で金を産み増やす」というのには正直今だに抵抗があります。

●美丘

【内容紹介】
 美丘、きみは流れ星のように自分を削り輝き続けた…平凡な大学生活を送っていた太一の前に突然現れた問題児。大学の準ミスとつきあっていた太一は、強烈な個性と奔放な行動力をもつ美丘に急速に魅かれていく。だが障害を乗り越え結ばれたとき、太一は衝撃の事実を告げられる。彼女は治療法も特効薬もない病に冒されていたのだ。魂を燃やし尽くす気高い恋人たちを描いた涙のラブ・ストーリー。
裏表紙より

【感想】
 読了後また深いため息をついてしまいました。
 主人公は大学生の太一と、同級生の洋次、邦彦、麻理、直美、そして美丘。基本的には太一と美丘のラブストーリーなのですがこのヒロイン美丘、美しい丘というよりは嵐が丘という感じの、一瞬一瞬をメーターを振り切るように生きる女性。美丘がなぜこんな生き方をしているのか、それは彼女が抱えている不治の病の発症を予感し恐れていたから…。
 前半は大学生の眩しくて瑞々しい青春が描かれているので、後半の病気との戦いの日々、そして美丘の最後の願いと太一がとった行動はとても切なく、やるせなく…。
 我々読者は読み始めからその結末を知っているので余計に…。

●5年3組リョウタ組

著者 石田衣良
【内容紹介】
 希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪…教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説。
裏表紙より

【感想】
 主人公は、教師歴4年の熱血小学校教師・中道良太、26歳。
 彼はとにかくまっすぐ。物事をあまり深くは考えない。考えるよりまず体が動いてしまう。だからといっていわゆる単なる脳筋タイプではなく、子供達の気持ちの変化を感じるアンテナの感度は最高。
 なんだか今の時代にはそぐわない気もするけれど、逆にこんな時代だから、掛け値なしのどストレートな物語がグッとくるのかもしれません。
 ライバルでありながら良き理解者で協力者の染谷先生の存在もGOOD。
 全4編の連作形式ですが、第3話の子供達が家を作る話のその先も読んでみたかった。この後のリョウタ先生の活躍も。

●事物はじまりの物語

著者 吉村昭
【内容紹介】
 江戸から明治、人々は苦労して新しいものを取り入れ、初めてのものを作りだした。歴史小説家が豊富な史料を駆使して書いたパイオニアたちのとっておきの物語。
裏表紙より

【感想】
 作家である著者が小説執筆のために収集した資料をもとに、13の事物の始まりからその歴史についてまとめた本です。
 収録されているのは解剖、スキー、石鹸、洋食、アイスクリーム、傘、国旗、幼稚園、マッチ、電話、蚊帳・蚊取り線香、胃カメラ、万年筆と様々。
 この中で興味深いのは、蚊取り線香と胃カメラは、日本で発明された物だということ。

【まとまらないまとめ】

 毎年3月になると慌ててその年の本屋大賞ノミネート作を読み始める私です。
 今年も例に漏れず前半はそんな感じでしたが、一息入れるつもりで手に取った石田衣良さんの物語にすっかり魅了されてしまいました。
 特に今週読んだ〝北斗 ある殺人者の回心〟は本当に寝る間を惜しんで、夢中になって読みました。そして泣きました。
 年に数冊こんな物語と出逢います。
 だから読書はやめられません。

最期に
 読書っていいよね。


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