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【読書記録】2023年2月5日〜11日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 立春を過ぎていよいよ春かと思いきや、いきなりの雪。
 私の住んでいる地域では、あっという間に溶けてしまって、嬉しいような悲しいような。

 雪にも負けず。
 花粉にも負けず。
 コロナだってなんのその。
 今日もページをめくります。

【2023年2月5日〜11日に読んだ本】

●サンセット・サンライズ

著者 楡周平
【内容紹介】
 築9年、3LDK、家具家電付きーなのに家賃8万円!?大手電気機器メーカー「シンバル」に勤務する西尾晋作は、海釣りが大好き。コロナ禍で業務がテレワーク化されることを機に、海に近い田舎に移住を考え始めると、宮城県に家具家電付きの神物件を発見する。家賃の安さに惹かれ、「お試し移住」を始め、夢のような山海の幸に大満足。地域民とのいざこざを経験しながら、晋作はこの楽園で、ある新事業を思いつくー。
版元ドットコム書誌情報より

【感想】
 お仕事小説、社会派小説、恋愛小説、家族小説と色々な側面を持つ物語ですが、この物語のキーパーソンは主人公ではなくて柔軟な思考を持つ家電メーカーの社長だと思います。
 若手社員とも気軽に話をし(声をかけられた社員は冷や汗ものでしょうが)、そこから得た新しいアイディアをブラッシュアップしてビジネスに繋げていく。このワクワクするようなプロセスが堪能できるのがこの物語です。
 しかしそれだけではなくて、舞台が宮城県なのでやっぱり東日本大震災の話題は避けて通れず、あの当時の様子や遅々として進まない復興の問題などもしっかり描かれています。

 主人公が言ったこんな言葉が心に残ります。

 「できない理由を語るより、どうしたらできるかを考えた方が、何倍も楽しいじゃないですか。第一仕事は楽しくなけりゃ苦痛になるだけですよ」
本文より

確かに。

●新世界より(上・中・下)

著者 貴志祐介
【内容紹介】(上巻)
 1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。
裏表紙より

【感想】
 上・中・下の全3巻、約1500ページの大長編。いつかは読みたいと思っていたものの、これだけで二の足を踏んでいました。
 世界観や歴史、文化、生物、そして宗教までしっかり描かれているSFやファンタジーは、その世界に入り込むまでに時間がかかり、ちょっと敷居が高いと感じていました。しかしこの物語、舞台が1000年後の日本で耳に馴染んだ地名が出てくるからか、それとも登場人物たちが日本人名だからなのか、読み始めからすぐにこの世界に没入!

 ちょっと不便で平和そうな、どこか違和感がある社会。
 「呪力」と呼ばれる超能力。
 そして異形の生物たち。

上巻は、呪力を磨く学校の話から、異形の生物バケネズミのコロニー間の争いへと展開していきます。

中巻はこの世界の歪さがどんどん明かされていきます。
 なぜ、日本の人口は5万人〜6万人程度まで減ってしまったのか。
 なぜ、人類は化学文明を失ってしまったのか。
 なぜ、クラスメイトが突然消え、そのことを誰も覚えていないのか。
 なぜ、同性愛に対しては比較的寛容なのに、異性間の恋愛に対しては厳しいのか。

 人類は、徹底的に管理する社会を構築します。
 これだけでも恐ろしいのに、労働力として重宝しているバケネズミにも何やら不穏な動きが…。
 物語は少年少女の冒険ファンタジーからディストピア小説に変化していきます。

そして下巻は、噂通り怒涛の展開と伏線回収の嵐!
 用意周到に寝られた反乱、
 人間たちがずっと恐れていた悪鬼の出現。
 支配するものとされるものの立場の逆転と、このことによって起きる虐殺シーンでは、何度も手が止まってしまいました。
 その後は悪鬼を倒すための最終兵器を探してまた旅に出る主人公たち。
 そして結末というかバケネズミの正体が明かされた時の驚愕。その一節を目にした時まず浮かんだ言葉は「人間の愚かさ」そして、それでも希望を胸に前に進む「力強さ」でした。

 最期に、物語に度々登場するドボルザークの交響曲第9番「新世界より」の第2楽章「家路(遠き山に日は落ちて)」を改めて聴き、懐かしさと、寂しさと、美しさに胸が詰まりました。

●口福のレシピ

著者 原田ひ香
【内容紹介】
 留季子は、老舗の料理学校の後継者として期待される環境に反発し、大学卒業後は企業に就職した。しかしSNSで発信したレシピが注目され、料理研究家としての仕事も舞い込み始める。令和初の大型連休に向け、忙しい女性を助ける献立アプリの企画を立ち上げるが、制作は難航した。昭和二年の品川料理教習所の台所では、女中奉公に来て半年のしずえが西洋野菜のセロリーと格闘していた。二つの時代、二人の女性をつなぐ一皿の隠し味とはー。「生活」を描き続ける著者が家庭料理の歴史に挑んだ意欲作。巻末に料理家・飛田和緒さんとの対談を特別収録。
裏表紙より

【感想】
 とにかく美味しそうなお料理がたくさん出てきます。
 特に物語の中心に位置する「豚の生姜焼き」がとても美味しそう。それはともかく、特に新しい食文化、見たことも食べたこともない新しい食材と真剣に向き合う、そして「家」を存続させることが最優先だった昭和初期の物語はグッときます。

●たたかう植物〜仁義なき生存戦略〜

著者 稲垣栄洋
【内容紹介】
 じっと動かない植物の世界。しかしそこにあるのは穏やかな癒しなどではない!植物が生きる世界は、「まわりはすべてが敵」という苛酷なバトル・フィールドなのだ。植物同士の戦いや、捕食者との戦いはもちろん、病原菌等とのミクロ・レベルでの攻防戦も含めて、動けないぶん、植物はあらゆる環境要素と戦う必要がある。そして、そこから進んで、様々な生存戦略も発生・発展していく。多くの具体例を引きながら、熾烈な世界で生き抜く技術を、分かりやすく楽しく語る。
裏表紙より

この本はYuuuKiさんの記事を読ませていただいて興味を持ち、手に取りました。

【感想】
 農学博士で雑草生態学を専攻する著者が、植物の生存戦略についてわかりやすく解説した本。
 植物の世界はまさに弱肉強食。同じ植物同士、菌類、昆虫、鳥類・動物、そして人間。どんな敵に対してもあらゆる対処法を駆使して対抗してきた植物たち。植物をこういう視点で考えたことがなかったのでとても新鮮でした。しかもどのエピソードも興味深く驚くことばかりでした。
 もしかしたら変な物語より面白いかも。
 しかし植物のすごいところはこれだけではなくて、なんと植物たちは常に敵との共存を模索しています。まずは与えることで。
 …人間に足りないのはコレかも。

●わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

【内容紹介】
 近頃の若者に「コミュニケーション能力がない」というのは、本当なのか。「子どもの気持ちがわからない」というのは、何が問題なのか。いま、本当に必要なこと。
裏表紙より

【感想】
 約6年ぶりの再読。
 再読のきっかけは同僚。
 同僚とは仕事への向き合い方、考え方が全く噛み合いません。
 話をしても対話にならない。
 そもそも対話って…。
 この本では

「AとBという二つの異なる論理が摺りあわさり、Cという新しい概念を生み出す。AもBも変わる。まずはじめに、いずれにしても、両者とも変わるのだということを前提にして話を始める」
本文より

と書かれています。
 …そうか、自分は同僚の言葉に耳を傾けず、自分の気持ち・考え方を一方的に押し付けていただけなのか。そこには「自分は絶対に正しい」という傲慢さもあったのかもしれません。
 ダメな自分を再発見。

【まとまらないまとめ】

 今週はいつかは読みたいと思っていた超大作に挑戦したり、ダメな自分を再発見して落ち込んだの慌ただしい1週間でした。

 今週は〝わかりあえないことから〟のこんな一節で終わりたいと思います。

「心からわかりあえないんだよ、すぐには」
「心からわかりあえないんだよ、最初からは」
p.208

最後に
読書っていいよね。


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