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【読書記録】2024年7月7日〜7月13日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 7月12日、私がよく観ている古本店「もったいない本舗」のYouTubeチャンネルに、こんな動画がアップされました。

 確かに装丁というか書影は本の顔。
 書影に惹かれて手に取り、そのままレジへ直行なんてことも結構あります。
 角川が数年前から名作小説を「文豪ストレイドッグス」カバーにして売り上げを伸ばしているようだし。
 そういえば、装丁って電子書籍では味わえない、紙の本ならではの魅力なんだなぁ。なんて思ってみたり。伊吹有喜さんの単行本〝犬がいた季節〟の仕掛けとかね。
 ちなみに私がこれまで手に取った本の中で一番好きな書影がこれ。

八月の銀の雪
著者 伊与原新
新潮文庫

 とてもダイナミックで、なんとなく寂しいような、でも温かいようなこの書影。できれば大きく引き伸ばして部屋に飾りたいし、Tシャツがあったら買っちゃうかも。…って、これ去年も書いたかな?
 権利関係とか難しいかもしれないけれど、どうでしょうアパレルメーカーさん、「企業コラボTシャツ」的なノリで、「本好きの投票による『書影Tシャツ』」とか作ってみては?

…ということで、いつもの本紹介、いってみよー!!

【2024年7月7日〜7月13日に出会った本たち】

⚪️オオルリ流星群

【内容紹介】
 人生の折り返し地点を過ぎ、将来に漠然とした不安を抱える久志は、天文学者になった同級生・慧子の帰郷の知らせを聞く。手作りで天文台を建てるという彼女の計画に、高校3年の夏、ともに巨大タペストリーを作ったメンバーが集まった。ここにいるはずだったあと1人をのぞいて――。仲間が抱えていた切ない秘密を知ったとき、止まっていた青春が再び動き出す。喪失の痛みとともに明日への一歩を踏み出す、あたたかな再生の物語。

裏表紙より

【感想】
 45歳という「人生のB面」に突入した男女の物語。
 この世代は仕事のゴールがなんとなく見えてきたり、子供が思春期だったり、体調や気分の浮き沈みが激しくなったり、物語では描かれなかったけれど親の介護問題に直面したりと気の休まらない世代。
 こんな時に心の支えになるのは青春時代を共に過ごした仲間たち。
 人は何歳になっても、この物語でいう「天文台を自作する」みたいな、仕事以外で何か夢中になれる物事が必要なんだと感じました。
 過剰な演出のない落ち着いた物語ですが、最後に街の明かりがポツポツと消える場面は…。この全部は消えないというところがね。再読でもグッときました。
 …!?
 この記事を書いていて今気がつきました。書影の左下にちょこんとオオルリらしき鳥がいるのね。
 なんだかちょっとハッピーな気分。

⚪️塞王の楯(上)

著者 今村翔吾

【内容紹介】
 時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人"穴太衆"の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人"国友衆"の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念。対決の時が迫る!

裏表紙より

【感想】
 戦国時代末期、最強の楯(石垣)を築く穴太衆vs至高の矛(鉄砲)を創作する国友宗の戦いの結末は!?
 …と結論を急ぐ前に、上巻ではそれぞれのホープ、匡介と彦九郎の生い立ちやら矜持が語られていきます。
 とにかく一章、いやもう序章からジャンプ漫画のような王道展開で、心を鷲掴みにされます。
 石垣はただ石を積めばいいというものではなくて、積むためにはまず石の切り出しや運搬が大切とは確かに。
 もちろん主人公の匡介や彦九郎はかっこいいけれど、個人的には奥さんの初を「陽だまりのような女」と称した大津城の城主・京極高次がイチオシ。

⚪️塞王の楯(下)

著者 今村翔吾

【内容紹介】
 太閤秀吉が病没した。押し寄せる大乱の気配。源斎は、最後の仕事だと言い残し、激しい攻城戦が予想される伏見城へと発った。代わって、穴太衆・飛田屋の頭となった匡介は、京極高次から琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。立ちはだかるは、彦九郎率いる国友衆と最新の鉄砲。関ヶ原前夜の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける! 最強の楯と至高の矛、二つの魂が行き着く先は――。

裏表紙より

【感想】
 例えば物語や映画の書評で「息をつかせぬ展開」という表現を目や耳にします。でも実際に触れてみるとそれほどでもないこともしばしば(まぁ、こう言う感覚はあくまでも主観ですが)。でもこの物語はとにかく一気呵成、疾風怒濤という言葉がピタリとハマる物語です。
 穴太衆の匡介、国友宗の彦九郎、どちらが正義とか悪とかそういう単純な二元論では語られない2人の生き様に心が震えます。
 世の中というか人生すべてそうかもしれないけれど、諦めないことと、自分が信じた道をひたすら突き進むことの大切さを再認識。
 「歴史時代小説なんて年寄りが読む古臭い娯楽」なんて思っている若者にぜひ読んでほしい。…「若者」って言ってる時点ですでに年寄りか。

⚪️世界でいちばん透きとおった物語

著者 杉井光

【内容紹介】
 衝撃のラストにあなたの見る世界は『透きとおる』。大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだが――。予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。

出版書誌データベースより

【感想】
 昨年「成瀬」と「レーエンデ」と同じくらいよく見かけた本書。
 皆さんの感想に必ずと言っていいほど書いてあった「電子書籍化不可」という言葉。コレがどういう意味なのか気になってはいましたが、なかなか手に取る機会がなく、今回新潮文庫の100冊2024にラインナップされたことをきっかけに手を伸ばしました。
 物語自体は、ある作家の最後の原稿を探すために、主人公がゆかりのある人たちを訪ね歩くというものですが、もうタイトルの意味と仕掛けが気になって一気読み。
 もちろん仕掛けには驚かされたけれど、それよりもびっくりしたのは京極夏彦先生のこだわり。

⚪️許されようとは思いません

著者 芦沢央

【内容紹介】
 「これでおまえも一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が強張る。本来の注文の11倍もの誤受注をしていた――。躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。

出版書誌データベースより

【収録作品】

【感想】
 5編のイヤミス短編集。
 2話目の「目撃者はいなかった」は仕事のミスを隠そうとした男がどんどんドツボにハマっていく話だけれど、何十年も仕事をしていれば多少の失敗やその隠蔽は…無いとは言い切れないのが辛いところ。
 4話目の「姉のように」も、姉が引き起こした事件をきっかけにその妹が加害者家族ということを意識しすぎて実際に転落してしまう話で、精神的にどんどん追い詰められていく姿がリアルで読み進めるのが辛かった。コレは実際にありそう。
 3話目は、祖母が子役志望の孫のマネージャーになって大暴走。サスペンスかと思ったら…えっ、そっち!?

⚪️アパレル興亡 上

著者 倉木亮

【内容紹介】
 「俺、東京に行きてえんだ!」昭和28年、山梨県の貧農生まれの田谷毅一は、高校卒業後、親の反対を押し切って東京・神田の小さな婦人服メーカーオリエント・レディに入社。既製服メーカーが“つぶし屋”と蔑まれる中、人並み外れた努力と才覚で会社を急成長させる。高度経済成長と既製服の普及の波に乗り、事業はますます大きくなるが――。日本経済の栄枯盛衰とアパレル産業の裏側を活写する長編。

出版書誌データベースより

【感想】
 戦後から平成20年代までの日本のアパレル業界を取り巻く出来事を、オリエントレディという架空のメーカー(モデルはあるらしい)を通して描いた物語。
 上巻は戦後の立ち上げから昭和50年代のバブル崩壊前まで。その当時の日本のようにアパレル業界も常に右肩上がりでイケイケドンドン状態。
 登場人物の気持ちはあまり語られず、その時代の出来事とアパレル業界の変遷を淡々と積み重ねていく感じなので新書を読んでるような印象。
 ところで途中にあった作家・遠藤周作氏が灘校で講演する話はなんだか唐突な印象だったのだが、下巻に向けての伏線?

⚪️アパレル興亡 下

著者 黒木亮

【内容紹介】
 非凡な才能で婦人服メーカーオリエント・レディの社長に上り詰めた田谷毅一。今や絶対的権力者となったが、株を買い占め、経営者に容赦ない要求を繰り返す“物言う株主”村上が現れ、状況は一変する。村上との攻防は次第に「会社は誰のものか」という日本中を巻き込む大騒動に発展していき――。リアリティを追求する経済小説の旗手が戦後日本経済の栄枯盛衰とともに描く、巨大産業の一大絵巻!

【感想】
 下巻はバブル崩壊に始まり、銀行や証券会社の倒産、郊外型大規模ショッピングモールの登場によるデパートの経営不振、ユニクロやしまむら、青山などいわゆるカテゴリーキラーの台頭などの外的要因によりオリエントレディはジリ貧状態に。
 また内的要因としてはやはりワンマン経営が仇となる。どの業種でもそうだが、トップダウンの会社は後継者の育成とバトンタッチのタイミングが大切だしコレがなかなか難しいと感じます。
 今回黒木さんは初読みでしたが経済小説が専門の方だそうで、株取引や株主総会のあたりはリアリティとスピード感がありました。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 「夏の文庫フェア縛り」2週目。
 今週は文庫化したことでの再読が2冊。その他は初読みの作家さんでした。
 私は読書を始めたのが遅かったこともあって、新しい作家さんや物語に目が移ってしまい、一冊の本をじっくり読んだり、再読したりと言うことがあまりありませんが、今回2タイトルを再読したことで、一読しただけでは気づかなかったたくさんのことに気づくことができ、新たな感動を覚えました。
 好きなジャンルや追いかけたい作家さんもだいぶ固まってきたし、ここらで一度立ち止まって、これまで読んできた本をじっくり再読する時間をつくってみようかな。
 その前に大量の積読をなんとかしなくちゃ。

最後に
 読書っていいよね。


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