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黒猫モッフりモフモフ

 黒猫って、西洋じゃ魔女の使いだなんだって言われて忌み嫌われるんだって。
 そりゃ、黒い毛皮は黒い夜にゃあ見えやしない。黒い犬だって、良いイメージを持っちゃいない。

 だけど、黒い猫をうたった詩。それを書いた詩人の生まれたまちでは、ちょっと愉快なことが起きている。
 黒猫が生まれるとき、きょうだいの中に2匹居やがるんだ。そう、1匹だけとか、3匹黒いとかじゃあない。何故か2匹セットなんだ。
 最早、かの詩が謎の言霊を発しているとしか思えない。猫は9つの魂を持っているなんて言うが、そのまちで生まれた黒猫は、あたかもその魂を分け合っているかの様に短命だという。

 まあ、元々治安の良い土地でも無いし、運転マナーはお世辞にも良いとは言えない。それでいて、大人の移動手段は基本的に車だ。暗闇で見えにくい黒猫が轢かれる事故は少なくない。
 そんな訳か、不思議と黒猫が生きられるのは他の猫に比べて半分位。それも、きょうだいの黒猫が早世した場合は、その魂を分け与えたかの様に、その黒猫は長く生きると言う。

 ある田舎に生まれた黒猫もそうだった。4匹生まれたうち黒い猫は2匹で、何時も何処でも寄り添って寝ていた。黒い毛皮はどこからどこまでがどちらか分からず、目を開かなければどこが顔かもあやふやな位だった。
 しかし、2匹の黒猫が走り回れる位に成長した時悲劇は起きた。1匹の黒猫が轢かれ、命を落としたのだ。

 残された黒猫は、きょうだいの黒猫の亡骸を舐め、他の兄弟と同じ位生きながらえた。

 ところで、かの県には猫の出てくる童歌がある。その歌がいうには、猫は足袋を買いに出かけるそうだ。手袋を買いに出る狐は有名だが、足袋を買いに出る猫の歌はそうでもないだろう。
 で、足袋猫だの靴下猫だの言われるのは、縞模様の猫に比べて背中が黒い猫に多い。タキシード模様とも言われる柄だ。

 それで、早世した黒猫はあの世で足袋を買うらしい。それも、前世できょうだいだった黒猫の分もだ。

 そして、一緒に毛皮を着替えて白足袋を履く。それで、また一緒に生まれて来ると言う。

 そう言う出自のきょうだいもそれはそれは仲が良く、黒猫きょうだいだった時は出来なかった分、長生きするんだってさ。

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