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「両面提示」は効果的な心理スキルだが、重要なのは構成だという話

「両面提示」という言葉をご存じでしょうか。何か商品を売るとき、または誰かを誘うときなど、いい部分だけではなく悪い部分も一緒に提示する、というものです。セールストークのセオリーの1つですね。
 

両面提示とは?

わかりやすい例として、デートに誘うという場面。そのときに、とてもおいしい何系のご飯でもいいんですけど、僕はオムライスが好きなので、とてもおいしいオムライスを出す店があるとします。デートに誘う相手もオムライスが好きだとしましょう。そのときに、いいところだけを提示するのであれば、「めちゃくちゃおいしいオムライスのお店見つけたんだよ。行かない?」という片面の情報です。

けれども、その店がまあまあ汚かったとしましょう。そのことを言わずに彼女と一緒にそのオムライスの店に行ったら「マジか」と、「こんなに汚いのか」とがっかりされる。いいところだけを言って悪いところは隠していると、「なんだかこの人は信用ならない」ということにもなりかねないですよね。なので、しっかり悪いところも言っておきましょうというのが「両面提示」です。

先ほどのオムライスの事例でいうと、「いやぁ、ちょっと紹介したいオムライスのおいしい店があるのね。たしかにお世辞にもみてくれはいいとは言わない。どっちかというと、ちょっとバッドな感じはするんだけど、その見た目を補ってあまりあるぐらいむちゃくちゃオムライスおいしいんだよね!行かない?」というような感じです。デメリットも伝えて、メリットも伝えていく。
 

両面提示の実験

この両面提示をすると、相手はその話に信頼感を得るので提案が通りやすくなります。誰がこれを提唱し始めたかが記事ではという方です。1949年、アメリカで提唱されたのではないかと聞いています。そのほかにもたくさん、この両面提示については研究がされ、実験もされています。日本国内では林さんと山岡さんという方が実験をしています。

どういう実験だったかというと、メリットだけを伝える「片面提示」と、デメリットも伝える「両面提示」を使った広告を作成しました。その広告をA、Bと出して、それを大学生に「どちらが好感をもてますか?」と聞きました。すると、80%を超える大学生が「両面提示」を使った広告の方に好感が持てると言ったそうなんです。

やはりマイナス面をしっかり出すことで信頼感が増すため、好感を持てる。そのような話になってくるのでしょう。これが両面提示の全体像です。
 

なんでもぶっちゃければよいのか?

でも、この両面提示はなんでもかんでもデメリットとメリット、両方の面を伝えればいいのか。相手にぶっちゃけていいのかということですが、そうではないということが僕の経験上わかっています

これは相手が信用できるかどうかが問題です。今の話の軸ですと、両面提示でデメリットも言うことによって信頼度があがるという部分。たとえ両面を提示したとしても、メリット10として、デメリットが2だと、「デメリットを言っているけど、本当はもっと大きいデメリットを隠しているんじゃないか」とか、「言ってもいいようなデメリットだけを言って、さも『デメリット言いました』みたいにしているのかも」というような疑惑が、意識まであがらなくても無意識の中に溜まるのが人間というものです。

メリットとデメリットの差が大きければ大きいほど、疑惑はたまりますよね。メリットが10でデメリットが1だと、「いやぁ、さすがにそれは……」とか。でも逆にこれが近ければ近いほど、買っていただけなくなるということも起きます。

簡単にまとめますと、メリットが10、デメリットが1、と離れているほど商品や提案は魅力的に見えますが、信頼度はあまりあがらないこの差が小さければ小さいほど信頼度はあがるけれども、メリットを感じにくく、セールスや提案が通る確率がさがるというところです。
 

自然と両面提示を使うには

ではどうしたらいいんですか、ということですが、僕は今のも踏まえて、あまり作戦を立てないというのが1番いいのではないかなと思っています。この両面提示を使ってきた上で感じています。

どういうことかというと、セールスや提案を通すために両面提示を使うという、この前提をやめるということです。そして、その商品を使った一個人、提案をする一個人としての本音や感想、そういうものをエピソードとして伝えていくことが1番いいんだと思います。

自分が信じている商品、あるいは提案したいものが自分で本当にいいと思っているのであれば、本音も感想も力を入れてオススメできますよね。でも、自分が「これがいいです!」と言ってしまうと、言葉による説得になってしまいます。言葉による説得は、相手に心の壁=心理的リアクタンスを生みます。なので、それをエピソードとして語っていくということなんですよね。
 

自然なセールストークの事例

事例として、僕が実際にやっているもので、「MonkeyFlip」というメガネのブランドをやっていますが、メガネのカスタムをいろんな方に強くオススメをしています。できたメガネに手を加える、みたいなことですよね。

これをふつうに言うと、「いやぁ、メガネのカスタムいいですよ。何がいいかというと、そのひと手間を加えることによって、今まで視力矯正道具というそういう道具だったメガネがそのカスタムで、自分のもの・自分の分身みたいになるんですよ。すごくいいですね。その分2週間ぐらいいただいちゃったりとか、何がしかの金額はいただくんですけど、でも自分のものになる良さは、たまらないですよ!」というものは、ふつうの両面提示です。

そうではなくて、自分の感想とか本音とかエピソードを語っていくわけですね、両面提示で

「メガネのカスタムなんて、そんなことをして何か意味があるのか?って僕は最初思っていたんですよ。けれど、自分で1回メガネのカスタムをやってみたら、『それどうしたの?』とか『そんなメガネ売っているの?』みたいに、今までまったく僕のメガネについて何も言ってこなかった人たちが、いきなりメガネについていろんな話をしてくれたんですね。

そうすると、僕もすごくうれしくて、『実はこれ、僕がデザインしてカスタムしたメガネなんですよ』と言ったら、『カスタムってなんですか?』と、このカスタムしたメガネを元に話題がワッと広がったんです。めちゃくちゃうれしかったなという思い出があるんです。確かに費用もかかるし、すぐメガネを受け取れないです。作るのに2週間か3週間、お待ちいただかなきゃいけないんですけど、そのかいが全然あったなというのが僕の素直な気持ちなんですよね。メガネカスタム、やってみませんか?」みたいな感じですね。

エピソードとして語る。自分の本音、自分が実際に経験した感想を語っていくと、自然と両面提示になっていますよね。デメリットも語っていくことで、「そうなのか!」と信頼度も増すと僕自身感じています。ぜひ両面提示をされる場合には、そのままセールストークとして使うのではなくて、本音や感想を交えたエピソードとして語っていただくということをやってみてください。
 



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