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入社時の健康調査の限界>労働法務百科>企業法務大百科

相談者プロフィール:
孔雀(クジャク)ホールディング株式会社 専務取締役 里目 太一(さとめ たいち、21歳)

相談内容:
先日、ウチの会社の業務拡大のために新人を雇うことにしたんです。
一応、入社テストやったり、経歴書提出させたり。
ご存知のとおり、父から会社を継ぐ前提で人事の総責任者をやらされているんですが、このご時世、まともな人間を採用するのって、結構大変なんですよ。
それで、ウチの会社の顧問をお願いしている北野社労士の意見もあって、今回、入社希望者の全員に、指定の病院で健康診断を受けてもらうことにしたんです。
だって、最近は、入社したとたん、
「持病があるので、キツイ仕事はできません」
とか、面倒くさいことぬかす新人がたくさんいるじゃないですか。
だから、最初に健康診断を受けさせて、面倒くさいことを言いそうな奴は、選考から外そうってことにしたんです。
そしたら、先日、ウチの採用試験を受けた西山ってやつが、
「オレが落とされたのは、オレの持病のせいだろう。差別だ。損害賠償だ」
って騒ぎ出したんです。
確かに、本人に内緒で行った血液検査の結果、ちょっと、面倒な病気をもってたんで、適当な理由をつけて採用見送りにしたんです。
だって、こっちだって、健康な人間を雇いたいわけだし、まだ内定すら出してないし問題ないですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:採用の自由
企業にとってみれば、採用する人間の能力や考え方、健康状態などは、今後の人事などを考える上で最重要課題となるはずですが、“採用時”に得られる情報には限界がありますので、企業にとっての
「採用」
は、一種の“カケ”の様相があります。
それゆえ、どのような人間を雇うかは、基本的には、経営責任を負う経営者の自由な判断に委ねられるべきであると考えられています。
特に、終身雇用制という独特の雇用システムを採用しているわが国の場合、これまで本連載で何度も取り上げてきたように解雇が極めて限定されているので、企業への“入口”である採用時に、ある程度、企業側の自由を確保しなければならないという実際上の要請もあるからです。
このような、採用時における企業側の自由を、
「採用の自由」
といいます。
そして、この採用の自由は、採用を望む者との間で雇用契約を締結する自由、すなわち私的自治の中核をなす
「契約の自由」
の一部として位置付けることができ、さらには、企業の経済活動の自由のひとつとして、憲法にその根拠を求めることができます。
例えば、企業の採用の自由について争われた、いわゆる
「三菱樹脂事件」
では、・・・(以下、略)

以下、ご興味のある方は、

をご高覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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