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企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(18)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその11_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅸ)_(h)正しく試行錯誤する_M&A法務百科>企業法務大百科

前号において
「(g)命令の達成状況を確認する」
というビジネス上のタスク・アイテムについて、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ事態が稀有である、という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておく重要性をお話しました。

ところで、正しい命令が、正しく、予定どおり実行さえすれば、成果は
「必ず」
出る、といえるでしょうか。

前提として、ここでテーマにしているのは、M&Aのような、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行についてです。

「電車で3駅先に辿りつく」
とか
「電話をかけてメッセージを伝える」
とかの雑用・ルーティンではなく、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行です。

当然ながら、そんなご大層で面倒なものが、一発で想定どおりの成果が100%出るなんてことは、およそあり得ません。

仮に、成果が出たとしても、当初の想定よりずいぶん劣化したものであったり、成果は出るには出たがとんでもなく時間や労力やコストがかかってしまい、経済的にはほとんど意味がなかった、という結果に終わることがほとんどです。

その意味では、プロジェクトの遂行責任者としては、まず、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要です。 

~中略~

もともと、人間の脳内には、
「楽観バイアス」
という、
「しびれるくらい愚劣な、『思考上の偏向的習性』というか、『脳の予測機能における、絶望的なまでの構造的欠陥』」
が備わってしまっており、これに、
「忌み言葉」だの、
「精神力で負けるな」とか、
「メンタルを強くしろ」、
「熱くなれ」とか、
意味不明の集団内の同調圧力にさらされると、
「想定すべき病理的事態」
を考えること自体に罪悪感を感じてしまい、
「病理的事態」とか
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまいます。

ところが、そもそも、プロジェクト遂行責任者として、与えられているテーマは、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
です。

責任者がどのような思考をするかどうかに関係なく、
「想定外」とか
「うまくいかない」とか
「そんなはずはない」とか
「あるべき姿と違う現実に直面する事態」
など、ゴマンと出てきます。

さらに、悲劇は訪れます。

想定外の事態に直面すると、人間から冷静な思考力を奪い去ります。

「当初想定」

「直面した病理的結末」
に齟齬が生じた場合、
「当初想定」
を前提とした
「当初戦略」
が機能しないわけですから、
「当初想定」
「当初戦略」
にこだわらず、さっさと、逃げて戦線を離脱し、
「現実に直面し、新たに把握し認知できた現実」
に即応した
「第一次修正戦略」
を練り直して、陣容を整えて再戦を期すべきです。

ところが、
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまった挙句、想定外に直面して冷静な判断力を喪失した(言葉を選ばないとすると、「アホ」になった)責任者は、混乱したまま、愚劣に当初戦略にこだわり、すべての資源を無駄に消失(戦争で言えば、戦果なく部隊全滅)という愚劣な帰結を招きます。・・・(以下、略)

以下、ご興味のある方は、

をご高覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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