M&Aの基本2:M&Aの多くは、どん詰まって「身売り」のケース_M&A法務百科>企業法務大百科
企業は、そこらへんの市場に
「日用品」
として転がっているわけではなく、経営者が丹精込めて作り上げ、育て上げた、
「究極の一品モノ」
です。
当然ながら、手放す方は、愛着がありますし、ちょっとやそっとでは手放してくれません。
絵画や彫刻などの美術品なら、持っているだけで、たいしたメンテナンスをしなくても傷んだり、減価したりしません。
しかし、企業は、経営者がものすごい労力や精神力を投入して生かし続けないと、たちまち、市場から見放され、赤字をまきちらし、社会のお荷物になります。
経営者も若い間はいいですが、歳をとって、体が大変になってくると、企業メンテナンスするだけでも大変になってくる。
こうやって、
「愛着はあるが、持っているのは大変」
という状況をズルズル続けているうちに、企業が客からも市場からも見放され、劣化していき、最後は、倒産という恥さらしを回避するため、身売りを選択する状況に追い込まれます。
M&Aという取引の手段ないし方法は、まともな使われ方をする場合もありますが、現在においては、会社のたたみ方、さらには倒産処理方法の1つとして機能しています。
ある企業が倒産しそうになっており、完全に死ぬ前にどこかに安値で引き取ってもらいたい。
「身売り」
というと聞こえが悪いし、
「企業を産み、育ててきた、愛着というか執着というか怨念じみた感情」
に支配されたオーナー経営者が
「倒産」
という恥さらしの終わり方では納得しないし、話が進まない。
じゃあ、
「M&A」
というハイカラな言葉でごまかしてしまえ。
行き詰まっている企業にM&A話が出てくるとすれば、こんな状況が考えられます。
とは言え、
「便所」
のことを
「お手洗い」
と言い換えたのと同様で、品のいい言葉を使ったからといって、便所で行う行為が、華麗で美しいものになるわけではありません。
いろいろ外来語でごまかそうとしても、やっていることの本質は、
「身売り」
を前提とした買いたたきと、買いたたきを前提とした実地調査です。
・・・(以下、略)
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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