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風潮は法律より強い


そもそも法律は受け身なので、そこまで強くありません。
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私のようなどうしようもない人間も含め、皆さんが世の中を安心して生きていけるのは法律の力による所が大きいです。

悪いことというのははやったその時点で得になるとは言え、
それが罪として認められれば罰せられることになり、
その罰を回避するための方法として「悪いことを選択しない」という人がそれなりにいるという事実があります。
そしてそれなりの人が罪の対象になるような悪いことをしなくなった結果、必然と悪いことをされる回数も減り、
結果としてある程度安心して生きていける世の中が構築されています。

これらは法律の力による所が大きいのですが、法律の力というのはそこまで強くはありません。
何故なら法律は受け身の力であり、発生した物事に対して対応するというシステムだからです。


基本的に物事というのは先にアクションをした方が有利になります。
例えば悪いことは罰さえ無ければ(もちろん無くても)先に行為を起こしてしまえばその時点では得ですし、
これが悪いことでなければ尚更で、全く同じことをするのであれば先に手を出した方、世に出した方が有利です。
意図を持ったカウンター狙いならまだしも、法律のように常に100%後手で対応するというのはそもそもが弱いのです。

何かトラブルが起きました。
では今のトラブルは罪にあたるかどうか?
あたるとしてどんな罪に該当するか?
誰がどれくらいの罰を受けるのか?あれ、そもそも本当に罪かどうか?
そんなやり取りが長引けば長引くほど、次の手を考えられるアクションを起こす側が有利です。
親告罪のような犯罪の場合、気付いた時には犯罪行為と思われたことが無いことになっているかもしれません。

一方、先んじてアクションを起こすというのは有利は有利なのですが
誰がどんなアクションを起こすのかまでは通常分かりません。
向こう側から歩いてくる人が右に曲がるか左に曲がるか。そのまま通りすぎるか立ち止まるか。
自動販売機でジュースを買うかもしれないし、急に襲い掛かってくるかもしれない。
これは全く分かりません。
これは何も見知らぬ他人でなくても友人知人、親族、関係が深い相手であろうと何をしようとするかまでは通常分かりません。
しかしこれをある程度コントロールすることが出来るとなると、これは強大な力になります。

「お昼の時間帯に自動販売機を3箇所巡ってポイントをゲット!抽選で3000名様に2万円プレゼント大チャンス!

こういった謎のキャンペーンが仮に行われていたとして、
先程のシチュエーションがお昼であるなら見知らぬ他人とは言え自動販売機で立ち止まる可能性は一気に上がります。なんなら私も止まる。だってお金が欲しいから。

このように、動機があれば人は動きやすいです。
「赤信号の間に車にひかれずに渡り切れたら3万円ゲット!」
これでも動く人は動きます。だってお金が欲しいから。なんなら私も渡る。

通常は行わないようなことでも、動機が生まれれば人はその行動を行いやすくなるのです。
つまり動機を与えれば、ある程度の行動をコントロールすることが出来るとも言えます。


「人気俳優〇〇がゲス不倫!6歳の息子を置いて今夏には離婚も…」

こんな感じの記事があればその人のSNSは簡単に炎上します。
何故なら不倫は悪いことであるという価値観を持つ人が一定数存在し、
その中から悪いことをした人はいくら攻撃しても良いという価値観を持つ人が一定数存在するからです。
今回の例は人気俳優という点も一役買っていると言えます。
自分に持っていないものを持っている人を攻撃することで気分が良くなれる人というのは存在します。
皆さんの知人も昼休みにこの記事のニュースを見るかもしれない。もしかしたら何か書き込んでいるかも。

ではこの炎上で人気俳優の妻が精神的に酷いダメージを負ってしまったら?その子供が学校でいじめられたら?
こういった曖昧なケースでは被害者が訴えを起こそうと決意し、腕の立つ弁護士などがつかない限り基本的には泣き寝入りです。
法律はあくまで受け身の力なので、曖昧なケースでは動きません。
腕の立つ弁護士などが「この部分は罪に問えるのでは?」と法律に働きかけて始めて機能します。
傷ついたまま、悲しんでいるままでは動きさえしません。
罪になることなく、相手を傷つけることは可能ということです。

実際に法律が機能するかどうかはさておき、
不倫は悪いことであり攻撃しても良いという価値観に基づいた行動によって、誰かを傷つけるような結果を出すことは可能なわけです。
普段は誰かのSNSに入って罵倒することなど無い人でも、動機を与えればその行動を取る確率が高まるということです。


新型コロナウイルスが世に出て1年経ちますが、当初はウイルスにかかった人の家の壁に落書きをされるというニュースがありました。
酷い場合にはガラスが割られたというケースもあります。
これも同じです。
普通は人の家のガラスを割るということはしませんが、
何やら危険なウイルスがあり、感染している人間は悪い人間なので攻撃しても良いという考えで行動した場合、
このようにガラスを割るという行動を引き起こすことも出来るのです。


ここまでは「悪い」を動機として行動する例でしたが、
反対の「良い」を動機に行動するということも当然あります。

人気がある良い作品らしいからチェックする。なんならグッズを購入してみる。
あの素晴らしい人が良いと言っているからこれは価値のあるものに違いない。
良いものを攻撃してくる人間は悪い人間なのでいくら対抗して構わない。
「ゲス不倫俳優〇〇、恐妻のDVを恐れて5年間別居状態だった…子供に会うのは半年に1回だけ」
そういう事情があったのか、、なら叩くのは止めにしようぜ。


普段しないような行動でも、そこに動機が絡めば人はわりと簡単に行動します。
基本的に物事は先にアクションを取った方が有利であり、どんな結果であろうと行動した結果は形に残ります。
法律は罪かどうかしか問いませんが行動した結果はもっと幅広い結果をもたらします。
親切から殺人まで、もっと広い物事さえ全てが行動した結果起こるものなのです。

本来は自分の意志で決意し、行動するものですが
その行動を起こさせるための動機付けを与えることが出来、少しでも行動をコントロールすることが出来るならそれは非常に強力な力になります。
そしてその動機付けの多くは「良い」「悪い」というあやふやな形容詞の上に成り立っています。(形容詞に大して意味が無いことに関しては別にまた書く予定)
しかし人はその「良い」や「悪い」を信じて行動します。

ではこの「良い」「悪い」を印象付けるのは何か?
それは"風潮"に他なりません。

良いもの。悪いもの。
その対象など時代や文化で容易に変わります。
昔の良いものが今では悪いものになっていたり、その逆も然り。
しかし風潮の効果として変わらないのは「良いから行動する」「悪いから行動する」という動機付けを与える役割です。
今はこれが良いもの。だから購入する。応援する。それに属したい。
今はこれが悪いもの。だから非難する。攻撃する。排除しようとする。
などなどなど。

とある対象を「良いもの」として取り扱えば
一定数の人は対象を良いものとして応援するようになりますし、
とある対象を攻撃させたいと考えるなら「悪いもの」として取り扱えば
一定数の人は対象を悪いものとして攻撃するようになります。
あとはその対象をどうしたいかによって「良い」か「悪い」かを決めればいいのです。

こうしてみると実は「良い」「悪い」が何かなど実はどうでもいいということが分かります。
風潮が強力なのは、それによって人に行動を起こさせることが出来るというこの一点です。
風潮は動機を産み出し、
それを与えられた人は行動し結果が残る。
まるで操られたような人に見えても個人が望んで行動しているのであれば犯罪行為でも無い限り罪にはなりません。
例えば、自主的に人気作品のグッズを買って経済を動かしただけです。これは当然罪でもなく、法律には関係の無い世界です。しかし結果は起きている。
風潮は「良い」「悪い」という概念を巧みに利用して
対象へのアクションをそのどちらにもコントロールすることが出来ます。かなり強力です。


そもそも、この世の中において私達一人一人が全ての物事の仕組みを理解するのは不可能です。
深く知れてもせいぜい数ジャンルの物事でしょう。
残りの物事についてはどうしても外聞に頼るしかありません。
「〇〇は~らしい」という情報に頼らざるを得ない場合が出てきます。
その点から考えても、風潮は全ての物事をターゲットに出来るという点が強いです。
皆さんがよく分かっていない物事に対して予め評価付けをすることが出来ます。
「noteってすげー酷いサイトらしいよ。」
これだけで足止めをすることも出来ます。
「この前note見てみたら結構楽しかったから暇つぶしに見るのはアリかも」となれば人はアクセスしやすくなります。
どちらのセリフもただ書いてあるだけ。
しかも"note"の部分を他の何かに置き換えるだけで良いので非常に万能です。
特定の物事にどういう印象を与えたいかという狙いがあれば風潮はより機能します。
風潮があるだけで、あとはそれに影響を受けた人間が行動しやすくなるのです。


知らなければ知らないほど、人は無自覚に風潮の影響を受けます。
ゲス不倫という言葉に踊らされて実際に何があったかなど知る由もありません。
だから記事を見て学習する。そしてそこにある風潮の影響を受け行動を起こす。
こうなってしまうと、風潮を起こす側になればある程度の人の動きをコントロールさせることが出来ます。

法律は待ち続けるだけですが、風潮はいつでも皆さんのすぐ側にやってきます。
知らず知らずのうちに貴方の行動は風潮に影響を受けます。
法律にかからないやり方で人の行動に影響を与えます。

受け身の法律より、アクションを常に起こす風潮の方が圧倒的に強いと言わざるを得ません。
さっきどこかで起きた悪いことも、寝て目が覚めた頃には非常に良いものになっている、そういう世界にすることも風潮には可能なのです。
あとは皆さんが行動するだけです。


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