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「迷彩柄と山男」

この歳にして、こうやって人と丁寧な挨拶を交わす機会が来るとは思いもしなかっただろう。

宮城くんは挨拶が終わるとまたその場にそっと座って、木の棒で砂を漁り始めた。


「宮城くんはとても大人しくてな。でも凄く優しい子なんじゃ。分かってあげておくれ。次は…そうじゃな。誰かこの辺におらぬかの…。」


僕を含め、七人の人がこの孤島に居ると神様は言っていた。

一人は神様、一人は宮城くん、一人は僕。


流石の神様でもこの孤島で、あと四人の住人を探すのはやっとな事なのだろう。


「おぉ!新人かい?山谷さん!また流れ着いたか!アッハッハ!」


森林の緑を掻き分けて現れたのは、大きめな迷彩柄のバックパックを背負い、頬まで生やした無精髭を蓄え、その大きめな迷彩柄のバックパックに相応しい大柄の山男の様な人が大笑いしながら近付いて来た。


「おぉ、丁度良かった水嶋さん。こちらは先程この島に流れ着いた新しい住人の佐藤さんじゃ。ご挨拶をお願いしても宜しいかの?」


疲労と水分不足からなのか頭があまり回ってないのが分かる。

とりあえず僕が今分かった事は、僕が神様と勝手に名付けた人は山谷さんという名で、山男の様な人は水嶋さんと名らしい。


「俺の名前は水嶋!ここに来る前は大工をやっとった!この島に流れ着いてからは、力仕事を主にやってる!ん〜まぁ、そんな感じだ!宜しくな、佐藤くん!」


宮城くんとは正反対の生命力に溢れる、熱い人だった。


「あ、初めまして水嶋さん。僕は佐藤と申します。宜しくお願い致します。」


僕が挨拶をすると、宜しくなと深々にお辞儀をしてくれた水嶋さんのバックパックには沢山の種類の山菜が詰め込まれているのが見えた。


よいしょとバックパックを背負い直すと、またなぁと後ろ向きで手を振りながら、また山菜を採りに行くのか森林へ消えて行った。


そして入れ替わる様に遠くの砂浜から元気に砂を蹴ってこちらに走ってくる二人の姿が見えた。


「…子供?」



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