第4章(第2稿) 自分が行ってきた習慣から、点と点をつなぎ一つの考えを紡ぎ出す

見出し画像

「思い込み」「固定観念」を排し、さまざまなことを思い浮かべて、それらをアメーバのように変形させながら有機的に結びつくよう試みる。それによって、ピカソの言う「生まれながらの芸術家」に回帰しようとする試みは、頭の固くなったおじさんには、なかなかたいへんなことでした。

ウンウン唸っていたある日、スティーブ・ジョブズの言葉を思い出しました。それはあまりにも有名な伝説のスピーチで述べられた言葉です。

「点と点はつながる」と信じて、今の点を選択せよ
過去、現在の点がやがて、将来の点とつながる (Connecting The Dots) と信じましょう。そうすれば、自分が皆の通る道から外れても、自分の心に従う自信が生まれます。これが大きな違いをもたらしてくれるのです。

スティーブ・ジョブズ (スタンフォード大学の2005年卒業式で行ったスピーチより)

この言葉に述べられているような、それまで自分がずっと点を打ってきたものとして、ブログを書いてきたことに気づきます。僕は、2014年の元旦からずっと毎日ブログ記事を更新していて、それなりの記事が蓄積されていました。そこで、一つの試みを行いました。

毎朝、まずブラウザの新しい画面を開き、過去数年にわたりアップしてきた同じ日の記事を並べてみるのです。6月1日なら、当日の記事が過去数年分並びます。

そして、その記事を一つずつ読み返していきます。すると、毎年ちょっとずつ文章の書き方が上手になっているな、とか、このときはこんなことを考えていたのか、とか、いろいろ気づきます。

そして、それぞれの記事の内容はまったく異なるのですが、不思議とつながりを覚える記事があったりします。「点と点がつながる」感覚ですね。

たとえば、本書の第1章で書いたスティーブ・ジョブズの言葉とイチローの言葉について、言葉の内容は違うものの本質的な部分でオーバーラップしてくるような感じです。

また、ある年のブログ記事には、その記事を書いた日は、過去どのような出来事があったのか、とか、その日はどんな記念日なのか、といったことを書いていました。

その内容から連想して、一見なんのつながりもないような事柄が思い浮かんだりします。その触発された事柄をもとに、新たな記事を書いてみるのです。

例えば、3月6日になにを書いたか、過去の記事を見たら、その日が「世界一周記念日」であることが書いてありました。

その記念日は、1967年 (昭和42年) 3月6日に、日本航空の世界一周西回り路線の営業がスタートしたことを記念して制定されたものでした。

そして、その記事を読み進めると、1945年 (昭和20年) 8月に第二次世界大戦が終戦となり、敗戦国の日本はすべての航空活動を禁止されていたこと、そして、1956年になり国際航空の主権が日本に返還され、徐々に国際線の整備が進められていたことが分かりました。

さらに、1964年になり、前回の東京オリンピック開催に合わせて、待望のアメリカ・ニューヨーク線の営業が開始され、それから3年経って念願の世界一周路線の営業が開始された経緯が書かれていました。

ここまで読んで、頭の中には戦後の高度成長期のことが思い浮かびます。昭和30年代から40年代は、東京タワーが建設され、名神高速や東名高速が開通し、東海道新幹線の運行が始まり、そして世界一周航空路線が開設されるなど、戦後の日本を象徴する発展ぶりでした。

個人の生活でも、所得倍増計画のもと、収入がどんどん増え、テレビ・洗濯機・冷蔵庫という三種の神器が普及し、マイホームやマイカーを手にすることができるようになった時代であることを思い出します。

その頃は、皆、物質的な豊かさを渇望し、懸命に働いていた時代でした。

そして、その後はバブル崩壊から失われた10年を経て、価値観もずいぶん変わりました。消費活動も、どんなものを買うかより、どんな体験をするか、ということに重きがおかれるようになったことに思い至ります。

それは、いつかは古びていく「モノ」ではなく、未来の自分を形作る「無形資産」を蓄積していきたいという気持ちの表れではないかと、発想が展開していきます。

会社勤めなどの仕事をしていれば、毎日毎日決まりきったことをこなすだけになりがちです。いつ起きて、何時に家を出て会社に行き、遅くまで働いて、帰り道に買い物して、家に帰って食事して、週末には疲れきってついゴロゴロ過ごしてしまう……。

そんな日々の中でも、未来に残ることを何かやっておく必要があるのではないか。それは、未来の自分を育ているために水やりをするようなものではないか、と思考は進んでいきます。

そして、もし水やりを怠ったら自分自身が枯れてしまうのではないか、と恐ろしく感じ始めます。意識的に「未来に残ること」に取り組んでいく必要があると強く感じたのです。

そんなふうに発想を進めた結果、「【今日の一言メモ】昨日・今日で、未来に残ることを何かやったか? と常に自問自答する」というタイトルのブログ記事ができあがりました。

ピカソの言う「生まれながらの芸術家」とはほど遠いかもしれませんが、自由に発想を広げて書いたブログ記事です。以前の「思い込み」「固定観念」に縛られていたら、こういう展開はできなかったでしょう。

「生まれながらの芸術家」に回帰しようと意識するだけで、縛りが解けて思考経路が少しずつ柔軟になっていくことを実感しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?