まえがき (第3稿)

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あの東日本大震災が起きた9年前、2011年3月に僕はそれまで33年間勤めた会社をアーリーリタイアメントしました。

そのときの僕は55才。まだ独立する準備など整っていないのに、会社が発表した早期退職優遇制度に手を挙げ、認められて会社を辞めたのでした。

それまでの僕は、5才で幼稚園に入って以来、小学校、中学校、高校、大学、そして会社員生活まで通算すると50年間、何らかの組織に属していました。

それが、いわば突然、どこにも属していない立場になり、どうにも足元が覚束ない思いをしました。

それから1年ほどかけて準備し、フリーランスのITコンサルタントとして独立を果たします。もちろん、最初は手探りで試行錯誤する日々が続きました。

そのような毎日の中で気づいたのは、コンサルタントとしてどういう「やり方」を覚えるか、ということよりも、人としてどんな「あり方」を確立するかの方が大事ということです。

会社に勤めていれば、最初から経営理念やミッション、ビジョンなどがあり、それに基づいて自分の行動指針を定めることができます。

それが、まったく組織に属さず、一人の個人事業主として生きるとなると、その拠り所となる「あり方」がしっかりしていないといけないことに気づいたのです。

それまでは、一人のITコンサルタントとして、しっかりしなければならない、評価される働きをしなければならない、という強迫観念に取り憑かれてとにかくがむしゃらに働き続け、その結果、「うまくやらなくちゃ!」「もっと、うまくやらなくちゃ!」と焦った挙げ句、気持ちだけが空回りして悶々とする日々でした。

そうした身動きの取れない日々の中でもがくうち、ふと気がついたのは、自分がうまくいく「やり方」だけに目を向けていたことです。

そうではなく、「やり方」の前に人としての「あり方」が しっかりしていなければ、人さまにコンサルなんかできないという当り前のことにやっとたどり着いたのです。「Doing」の前に「Being」ということですね。

この本は、独立した当初、壁に突き当たり悶々とした日々を過ごしつつも、なんとか出口を見つけ、そして、今日まで取り組んできた道のり、「あり方」の確立に向けて歩んできた道のりを紹介しています。

その過程で、多くの先人たちが残した言葉に教えられ、導かれ、励まされてきました。そして、そうした言葉たちが、僕の過ごしてきたどんな場面で心に響き、どのように導いてくれたのか、できるだけ具体的に書きました。

つい日常に紛れ、忙しく過ごしている中で忘れがちになる大切なことを思い出し、自分を戒めるために、各章に少なくとも一つの言葉を掲載してあります。

これからも、それらを折に触れ見直し、まるで漆塗りのように繰り返し繰り返し刷り込むことで、なんとか自分の血肉とし、無意識に身体が動くくらいになりたいと考えています。

今思えば、フリーランスとして独立した当初は、頑張らねばと力んでいた割に、できていないことだらけ人間でした(今でもできていないことはたくさんありますが……)。

例えば、
▲ 先送りに関しては人後に落ちない
▲ 一度失敗すると、すぐに挫けて次に進めない
▲ こんなことをしたら世間体が悪い、バカにされるかも、とクヨクヨする
▲ 自分は違うと思っても、多勢に無勢で長いものに巻かれる
▲ 自分と他人を比べて、自分に足りないものばかりに目がいく
▲ フリーランスで活躍している人たちを目にして、ひがみ、やっかむ
▲ 自分より知識豊富な若い人たちに教えを乞わねば、と思うがプライドが邪魔をする
▲ フリーランスとして時間管理のセルフコントロールが大事なのに、すぐに横道に逸れ無駄な時間を過ごす、などなど。

こうして挙げると枚挙に暇がありませんが、とにかくこういうダメダメ人間をなんとか躾けて、人前に出しても恥ずかしくない男にすべく努めてきました。

その過程でコツコツと纏めてきた言葉たちです。それでは、ダメダメだった起業当初に遡ってご紹介していきましょう。

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