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Number1013号『桜の再会』をまだ読みたくない〜振り返りより明日が知りたい〜

夫が雑誌Number『ラグビーW杯2019一周年記念号』である《1013号 桜の再会》を買ってきた。

編集部には申し訳ないが、今は読む気が起きない。

野球は昨夜ソフトバンクが優勝した。巨人も秒読みだ。サッカーは川崎フロンターレがブッチギリ首位だが、開幕間もないバスケはまだ混戦模様を呈している。

他のスポーツは2020シーズンを戦っているのだ。6月下旬の野球開幕から始まり、紆余曲折を経ながらも、『そのスポーツがある日常』を何とか続けている。

ラグビーはどうか。

ややこしいことに、最も早く再開したのは、大学生の祭典『関東大学ラグビー』だった。

授業はオンラインなのに、運動部はなぜ再開?という厳しい批判に晒されながらも、学生達は毎試合奮闘している。チケットの売れ行きも好調だ。

しかし、彼らは『未来の』日本代表候補、なのであって、W杯2019のメンバーはここにはいない。しかも、地上波、NHK-BSの中継は11月23日の早慶戦までおそらくない。

あのメンバー達が属するトップリーグは、夏から練習が順次再開し、今月からようやく練習試合に入った。とはいえ、無観客&解説無しのライブ配信。生では見られない。

ラグビーファンでない限り、日常にラグビーはない、といっていい。

#あの熱狂をもう一度  というラグビー協会のハッシュタグは、私達の日常生活の中で話題に上ることはほとんどない。W杯もラグビー自体もラグビーファン以外には、恐ろしく遠い記憶になっている、それがリアルな現実だ。

ラグビーファンが、SNS上にだけ身を置くとそこを錯覚しがちだ。関係者の方々もどこまで現状を把握されているのだろう。ふと不安になる。

しかし、結婚以来20年以上愛読しているNumberだ。全く読まないのも気が引けていくつか記事を読んでみた。しかし、このリアル感のなさはどうにもならない。今日先発予定のタイガース藤浪選手の方がよほど気になる。

これは選手にも、ある意味編集部にも責任はないだろう。日本代表に直結する社会人ラグビーは、試合開催という意味で、もう7ヶ月以上時が止まっているのだから。

しかし、編集に一工夫欲しかったのだ。

代表が所属するチームの練習風景や、練習試合の様子を入れたり、

今日まで地道に行われている各チームの社会貢献活動を取り上げたり、

大学ラグビーを『未来の日本代表を探せ!』的な扱いで注目選手をピックアップするなど

《明日》につながる記事を同時掲載すればよかったのだ。

W杯終了後、他社雑誌でも、SNS上でも『あの時のプレー』は、どれもこれも『これでもか!』というくらい取り上げられていた。

今、ラグビーが野球のようにシーズンを戦っていれば、ある種前向きな記事として読む気になったと思う。しかし、新たな試合が何もない状態で一年前を振り返っても

『なんだか、どこかで読んだ気がするし、今更だよね』

という意識から離れることができない。

もちろん、年末のトップリーグ特集に全てをストックしているのかもしれない。しかし、リーグ休止からの諸々の出来事や活動が、雑誌一冊に収まるほどラグビー界はネタの少ない業界ではない。

ここで、小出しにしても良かったじゃないか!

おそらく、ラグビー界のジャーナリズムはサッカーや野球とは何か事情が違うようだ。

おそらく、感染防止の観点から取材規制が相当厳しかったのだろう。チームの事情もわかるが、チームプロデュース観点からもう少し協力してもよかったのではないか。

ラグビーの未来を感じさせる一冊にしてほしかった。『ノーサイドゲーム』の振り返り、それは違うよ。

唯一、フランスで新たなキャリアを築き始めた松島選手と、コロナ後のラグビーについて語るエディの記事が救いだった。

やはり、スポーツ雑誌の醍醐味は、

輝かしい過去を振り返るより、

混沌とする今を見つめて、未知なる未来を目指す 

ここに尽きる気がする。





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