見出し画像

1夜の話

タイトル 1、そして0のパラドックス

 確率なんかには疎い僕だけれど、1、そして0の数字の組み合わせであらゆるものを表現できるという事ぐらいは知っていて、もし近い未来永遠の命のようなものが発明されて、僕がAIになったとしたら、あなたを1、そして0の連なりの存在としか見ることができなくなるのだとしたら、ーーそれは完璧な理解。いったい僕やあなたは、まるで生きる意味を無くしてしまうと思わないか? 

 僕は数字が嫌いだ、順番や成績評価が嫌い。

 でも、考えようによっては、僕らは数字のために生きているとも言えるよ。受験、就職、昇進、すべて数字で評価されるでしょう。スポーツだってそうだ。 

 競争だ。みんな1位にならなくては、と必死だ。

 とかくこの世は、3、4番じゃお話にならない。その点は僕も認めるところだけど、勝ち残るということは、他人を蹴落とすということでもある。

 僕は数字が嫌いだ。数字のせいで、誰も傷ついてほしくない。でも僕は誰もいないところで勝負するほど孤高ではないから、楽園には生涯辿り着けないのかもしれない。それでも足掻くしかないのだと感じている。自分の存在していい居場所を見つけるために。

 というのは僕が以前考えていたことで、実は最近、転職して手取額が増えたのを振込の銀行通帳で確認して、嬉しさにはにかむような自分もいたりする。

 結局のところ、人は1番にはなれない。インターネットの普及以前から分かっていたことだけど。最近特によく感じる。だから、最初から1番を目指さなくなる。本当は1番にはとんでもない輝きがあることから目を背けて。

 まあ、しかし。人生が数字に支配された殺風景な世界だとしたら、間違いなく世間は食うか食われるかの戦場になるんだよな。

 弱いままでは生きられない。

 永遠の命が存在しえないのとおなじことさ。



           完

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?