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妄想レィディオ #32

「アトピーは“死に繋がる”病気!?」

午前0時を回り、今夜も始まりました「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」
こんばんは、DJのKUNIです。
毎回、ボクの独断と偏見で気になるニュースを取り上げ、そのニュースの内容をキッカケに、知的で、お馬鹿な、お気軽トークを繰り広げます。
番組の命綱は、この一台の電話だけ。
(SE:リリ~ンと、電話が鳴る音)
リスナーの方とこの電話を繋いで、KUNIとのお喋りと、素敵な音楽で、朝までお付き合い下さいませ。さて、先日、居酒屋で、こんな話を小耳に挟みました。「肌の悩みで、例えば、アトピーで死ぬ人がいる」って。そんな訳、ないやろう?と、帰宅後「アトピー」「死」でググってみたら、確かに、いくつもの記事がヒットするではありませんか!?その内容は、アトピーは、死に至る病ではないけれど、アトピーは“死ぬほど辛い”と言うものでした。そうなんだ。この番組では、「臓器移植」だったり「失語症」、さらに「難病」と言われる病気も取り上げてきました。って、この番組、決して医療番組ではないけれ、まぁ、普段なかなかメジャーなメディアでは取り上げられない話題に注目すると、そうなっただけなんですが、今回は、もっと身近な話題でありながらも、実は、ボクは全然分かっていなかったと言う「アトピー」について取り上げたいと思っています。
さぁ、早速、ゲストをご紹介しましょう!
皮膚科に特化したPHR(パーソナル・ヘルス・レコード/生涯電子カルテ)を開発・企画しているベンチャー企業、株式会社Genonの代表取締役社長・高原千晶さんです。こんばんは!

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「はい!こんばんは」

今、ここに過去の記事がありますが、アトピー性皮膚炎の患者数は、近年、急増傾向にあって、厚生労働省の患者調査の総患者数によると、2008年に 約35万人だった患者は、17年には16万人増の約51万人になったそうです。 さぁ、早速ですが、直球の質問です。
「アトピーで死ぬ」と言うか、「アトピーに悩んで、自らの命を絶つ」と言うことはありえるんですか?

「ありえます!」

わぁ、キッパリ(汗)。その理由は?

「アトピーは、4人のうち1人が鬱になりやすい。その結果・・・と言う方は、残念ながらおられます。先日も、当事者の皆さんのコミュニティに参加させていただいていたんですが、お一人が『自殺します』『もう参加しません』と発言された後、実際、そのコミュニティを脱会、そのコミュニティ内が騒然としたと言うことがありました。結局、その方は、どうされたのかは、分かりませんが」

う~ん、そうなのか。ボクのアトピーに対する理解の“甘さ”を痛く反省するなぁ。ところで、スタッフがボクに渡してくれた資料によると、高原さんご自身もアトピーに悩んでおられたとあるんですが、いつ頃から、どの程度?

「0歳からです。先天的に出ていたので、遺伝性だと思います。」

赤ちゃんの時からか?

「ですから、私の赤ちゃんの頃の写真は、ほぼありません。母は、私の写真を撮りたくなかったようです」

そうなのか。そうなんだ。お母さんも、それは辛かったにちがいないよな~

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(※ 数少ない幼い頃の写真/周囲の子どもたちは半袖やノースリーブ。
              一方、高原さんの肌の露出は随分と少ない)

でも、痒いんですよね。もう敢えて怒られることを覚悟で聞きますが、痒いって、痒いんですよね?当たり前か?痒いって、そんなに苦しいですか?

「寝るのが怖くなったり、お風呂、運動をした後の反動で、無心に掻いてしまうんです」

「無心に掻く」?「寝るのが怖い」??だめだ!意味分かんない!!

「寝てるときにも無意識に掻くんですよ。その時、爪が“凶器”になるんです。爪って、彎曲してるじゃないですか。その部分で皮膚をごっそりめくってしまうんです。例えるなら、魚の鱗を取るようなことを、自分の爪で、自分の皮膚でやってるって感じです。ですから、白いシーツを使うことが出来ません。血がついちゃうので」

なるほど、そう言うことか。

「私も小学生の頃からずっと、母に、こう・・・手を縛ってもらって寝てたりとか。そう、自分で搔かないように。あと手袋をして寝たり、爪を、かなり深爪にしたりとか。深爪にしすぎて、今度は、爪から血が出るとかは、普通にあります。」

いやぁ、それは笑えないわ!
今、高原さんと、ZOOMを使ってお話を伺っているんですが、お顔を拝見する限り、随分と治まっているように見受けられますよね。

「ステロイドと、鍼灸で、今は、安定させています」

では、一番、酷かった時期は、いつ頃だったんですか?

「二十歳の頃ですね。その頃、私はパティシエをしていたんですが、コックコートに、常に血がついてるのが当たり前でしたね。外側からは血が見えなくても、内側をめくったら、血だらけ!何か手術したんですか?みたいな血だらけな時が多かったですね」

まず、パティシエをしていたと言うことに、驚きましたが、今日は、そこは掘り下げずに、そう言う時って、どう対処するんですか?

「その血が出ている部分をラップとか包帯で巻いたり。でも、順番があって、まず薬を塗って、保湿剤塗って、ベビーパウダーのようなものをポンポンはたいて、その上にラップを巻いて、そして包帯。これを毎日やるので大変です。私の場合は、ほぼほぼそれを全身にやってました。もう“包帯人間”でした」

って、もうミイラやん!
ところで、高原さんの場合、病名で言うと、何になるんですか?

「私の場合は二つあって、一つは、アトピー性皮膚炎。これは先天性で、母も妹も持っています。そして、もう一つはジカカンサセイ皮膚炎」

なんですか?そのジカカンサセイって??

「漢字で書くと、自家感作性皮膚炎となるんですが、血流により全身に散布され、左右対称に小型の皮疹が全身に広がる。しかも急激に広がって、痒いということが特徴です。体中に、てんてん、てんてんと荒れてしまう病気なんです」

なんと、そんな摩訶不思議な病気もあるんですね。
もう、無知ついでに聞いちゃいますが、アトピーの“アトピー”って、何のことなんですか?

「アトピーという名前は“奇妙な”であるとか“原因不明の”という意味のギリシャ語が語源と言われています。」

おぉ、それは、至極納得!

「実際、100人のアトピーの患者さんがおられれば、100通りの症状があると言われています」

本当に、ようやくですが、その深刻さが分かってきた気がするなぁ~。
と言いながら、実に小さな心配で大きなお節介ですが、これからの季節、ノースリーブや、半袖の服は着にくいですよね?

「そうです。私たちは、夏でも長袖を着ています。でも、絶対、周囲からは『その服、暑くないの?』って言われますよね。そこは察してくれ!理解してくれ!!って思いますよね」

高原さんの場合もそうですが、思春期の頃にアトピーが酷いとなると、なかなか辛いものがありますよね~

「一人で過ごすことが、増えますよね。一方で、お付き合いは完全に減りますよね。実際、友達が少ない人は多いですし、そもそも学校に行けない人も多いし。あと、普通に睡眠が取れないし。睡眠が取れないと死ぬじゃないですか。でも、私たちは、寝るのは、怖いし。寝ても痒くて、起きちゃうから、物理的に睡眠時間が短くなっちゃう。その結果、精神的に参ってしまうところがあるので、自殺する方が多いっていうのは、全然納得しますね」

やっぱりそうなるのか。何か、本当に知らなくてごめんなさい、と言う感じだなぁ。高原さんとしても、やっぱり、多くの方々に、もっと知って欲しい!と言う感じなのかなぁ。

「う~ん。確かに、私の中にも、知って欲しいと言う気持ちはあるんですが、でも、実際は私も、アトピーと言うことを隠して生きてきたし。知られたいけれど、知られたくないと言った相反する気持ちが交錯していますよね。今はこうした仕事をしているので、アトピーであることを公にしていますが、アトピーの患者さんには『もう、ほっておいてくれ!』と思っている方もおられると思いますよ」

今、高原さんは「隠して生きてきた」とおっしゃったけれど、もちろん、家族は知っていたわけでしょ?

「いえ、私も、包帯を巻いていたっていうのは、家族にも知られないように生きてきた人間です。その時、私は一人暮らしだったんですが、母もたまに、その部屋に来ていて、でも、ある時、クローゼットから大量の包帯が出てきてビックリされたと言う経験があります。そんな風に、私も、アトピーを隠しながら生きてきたっていう過去はあるので、今、こうやってさらけ出すことは、本当に勇気がいりますね。家族にも言えなかったわけだし」

そうなんだ。何だか、今日もスミマセン!って感じがしてきたけれど、改めて、何故、隠すの?

「えっと・・・なんか・・・汚いから、と思っちゃうからかなぁ」

(しばし、沈黙)
えっと、じゃぁ、今、患者の皆さんに伝えたいことがあるとしたら?
さっき、高原さんは、『もう、ほっておいてくれ!』と思っている患者さんもおられると思いますよ、とおっしゃっておられたけれど。まず、それは何故なんだろう?

「今のアトピーの患者さんって、医療への不信が強いんですよ。と言うのも、何か皮膚のトラブルが発症したとして、皆さん、最初は病院に行かずに、家で様子を見ますよね。で、一週間が経って、それでも、治らないようだったら、ようやく病院に行く。そこで、患者側から『〇〇が原因で荒れていると思うんですよ』と申告をし、医者側も『そうなんですね』と言って処方箋を出す。薬を貰う。薬を使う。しかし、効かない場合も多い。先ほども言いましたが、アトピーであれば100人いれば100通りの症状が出る。原因も違えば、治療方法も違う。しかし、患者側は『なんだ効かないじゃん』と、もうその病院に行かない。そして、他の病院に行って、同じことを訴えるわけですから、結果はほぼ同じ。そこで、患者側は、医療そのものに不信感を持っちゃうわけですよね。でも、医者側にしてみれば『それで効かなければ、今度はこっちで』と言うカードをいくつか持っていたわけなんだけど、患者が継続して来ないものだから、結局、そうしたカードを切ることが出来ず、治療が出来ない、となるんです。そこで、患者の皆さんには『一回、薬が効かなかったぐらいで、病院を変えるのはナンセンスだよ』と言いたいですね。原因が多岐にわたったいるのだから、一発で治ると言ったことなど、ほぼないんですよ。お医者さんは魔法使いじゃないんで」

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あっ!分かった!!ボク、番組冒頭で、高原さんの会社のことを皮膚科に特化したPHR(パーソナル・ヘルス・レコード/生涯電子カルテ)を開発・企画しているベンチャー企業とご紹介しましたよね。なかなか具体的なビジネスがイメージ出来なかったんですが、スタッフから渡された資料には「患者と皮膚科の医者とを繋ぐアプリの開発」とある。高原さんは、今おっしゃった問題を解決したいと、このアプリ開発に取り組んでおられるわけだ!

「そうです。患者が伝えたいこと、医師が伝えたいことをこのアプリが伝えてくれれば、と思っています。例えば、患者側から、今の症状はこう言った状態で、こうした治療をしてきたが、〇〇は効いたけれど、××は効かなかった、みたいな情報をインプットしていけば、それが将来は大きなデータとなって、より良き治療に繋がっていくはずなんですよね。すなわち、患者と医師のコミュニケーションを密にするためのアプリを目指しています」

なるほど。短い時間ではありましたが、アトピーとはどういうものか?また、その辛さ、治療の難しさは、少しは理解出来たような気がします。今後、暑い夏でも、長袖を着ている人を見かけた場合は、様々な想像力を働かせていきたいと思います。決して「暑くないの?」とは聞きません。(笑)

「私たちも、もちろん暑いんです!(笑)」

いやぁ~、高原さん、今日はなかなかセンシティブで、かつプライベートな話までしていただき、本当にありがとうございました。

「KUNIさん!最後に質問!!このアトピーって名前、ダサくないですか?」

ダサいとまでは感じなかったけれど、その語源が「奇妙な」とは知りませんでした。

「私、だから思うんです。“奇妙な”“原因不明の”と言う語源を持つアトピーと言う名前を変えたいと」

そっか、例えば今開発中のアプリで、実に多くのデータが集まれば、もう決して“奇妙”でも“原因不明”でも無くなるかもしれないんだ。その時は、新たな名前を付けちゃってください。それまで、大いに頑張って下さい!

「はい!ありがとうございます。」

いやいや、こちらこそ、色々とお教えいただきありがとうございました。
今夜のゲストは、株式会社Genonの代表取締役社長・高原千晶さんでした。

では、最後に、今日は、この曲でしめくくりましょう。
映画「The Greatest Showman」から「This Is Me」♪。
皆さん、おやすみなさい。また、良き明日、良き朝をお迎え下さい!(了)

※参考:https://allosakakigyo.jp/entrepreneurs/genon/



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