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【フェムテックイベントの続き】

初めての場所で、さらに何とも緊張するような場所で、見知った顔を見つけると随分とホッとする。今回、この会場を訪れたのは、この人に会うため。大阪・堺市に本社を置く株式会社三天被服の代表、東谷麗子さん。「女性が輝くゲンバ服」をキャッチフレーズに、オリジナルの女性専用作業服の企画・製造・販売などを行っている。女性活躍推進企業として知る人ぞ知る企業ではあるものの、設立から10年にも満たず、従業員も僅かと言う、まだまだ発展途上の中小企業。そんな企業が、この華やかなフェムテックイベントに出展すると聞いて、正直「おい、おい大丈夫か?」と思い、陣中見舞いに来たと言う訳。案の定小さく、周囲の派手なブースと比べると何とも地味。しかし、ブースをのぞき込む人、東谷さんと話し込む人が引きも切らない。そうした方々のお目当ての商品は、「生理の多い日でも漏れを気にしないワークパンツ」。

って、それは何だ?この日は、大変お忙しそうだったので、「来たよ!」と言うマーキングだけに留め、後日、改めて本社にお邪魔してお話を伺うこととした。

(株式会社三天被服の代表、東谷麗子さん)

そして、その後日である。

本社を訪ねるとその「生理の多い日でも漏れを気にしないワークパンツ」からブラッシュアアップされた新商品の試作品がデスクに広げておいてあった。その試作品を挟んで東谷さんと向き合う。

さて、これはどう言った商品なの?

「生理の多い日でも、漏れを気にせず笑顔で働けるオーバーショーツです」

とのこと。オーバーショーツとは、ショーツの上に重ね穿きするものだと言うことは理解できるが、さて、どう使うんだ?

「ナプキンをつけ、生理用のショーツを穿き、さらにそこから漏れちゃうことに対応するためのものです。いわゆる二日目、三日目と言った量の多い日専用に使うものです」

(オーバーショーツ)

東谷さんは親切丁寧に教えてくれるが、まだピンと来ない。ナプキンを付けているんでしょ?生理用のショーツも穿いているんでしょ?それでも漏れると言うことがあるのか?

「漏れた経験がない女性の方が少ないんですよ」

東谷さんは、こともなげにそう説明する。

「ナプキンがボトボトになり、吸収しきれなくなると、例えば太ももをツ~っとね。そうしたことまで気にしながら、女性は仕事をしなければならないのです。痛みだけでなく、漏れていないかも気にしながら仕事をしなければならないのです。生理の時って何もなくても色んなことが気になってパフォーマンスが下がるのに、多い日ともなれば、それにプラスして漏れの心配もあるんです。実際、生理中に漏れて、会社の椅子を汚したなどの声を頂戴したので、そうした不安やストレスを極力少なくしたい、お仕事に集中してもらいたいと思い、企画・開発し、今ここまで出来上がったものなのです」

そうなのか。そんな心配事まであったとは。

多分呆けた顔のまま、ボクは、呆けた質問をただ繰り返した。

「漏れるんですか?」

「例えば、ドライバーさん。車の運転をしているときですよね。私も経験あるんですが、長い時間運転し続けていたときに、何かガバッと出る感覚がある。でも暫く乗り続けていると、そのことを忘れちゃって、降りると、『あぁ、シートが・・・』と言うケースが結構ありました。そして、展示会のブースに来ていただいたゴミ収集会社の方のお話しで、最近女性社員さんが増えてきてるそうですが、ゴミ収集中は『あっ!』と思ってもトイレに行けない。毎月必ず“そうした状態”で帰ってくると言われていました。そうそう、建築業の女性の方の必須アイテムをご存知ですか?“長T”です。長袖のTシャツ。何故か?例えば、一旦作業に取り掛かると、きりが付くまでその場を離れられない。気になりながらもトイレに行けない。やっと一区切りついてトイレに行けたと思ったら漏れていた。そうした際に、その長Tを腰に巻いて漏れを隠すそうですよ。工場でも一緒。流れ作業のラインに入っていれば、自分だけがそこを離れるわけにはいかない。結局、長時間座り続けざるをえないであるとか、OLの方だって、会議が長時間になり、ウン?と思っても、なかなか『ちょっとすいません』とは言えなくて、会議室の椅子を汚してしまったとか、もう聞いてるだけで胸がキューってなるような経験をされてる方がたくさんいるんです。」

多分、ボクの顔はますます呆けていき、ますます呆けた質問をした。

「ガバッと出るんですか?」

「ボコッと出る場合もあります。子宮筋腫の方であれば、半端ない量が出ます」

「それって、ご自身でも、『あっ、出そう』とか分からないものなんですか?」

「本当に分からないですね。『ワァ~、出た』と言う感じですかね」

東谷さん、本当にフランクに話していただきありがとうございました。

まだまだ完全に理解出来たわけではないけれど、そうしたケースがあると言うことはよく分かった。この原稿を書いている時点では、クラウドファンディングで資金を集め、その後本格的にこの「生理の多い日でも、漏れを気にせず笑顔で働けるオーバーショーツ」の販売を開始されたいそうだ。しかし、問い合わせは既に相次いでいて、また、モニターを申し出ている大手企業もあると言う。実際に使用するのは、月に1~2回であっても、そのニーズと言うか、ウォンツの高さが伺える。それほどまで女性は困っていると言うことだ。東谷さんは言う。

「例えば看護師さんなどは、白い制服を着ていることが多いので、多分、必需品になると思います。その他、先ほど申し上げた建築現場や製造現場、あるいは出張時にちょうどその日が重なったときなどには重宝するのではないでしょうか」

そう聞くと、改めて思う。女性は、そうまでして働いているのかと。大げさではなく、頭が下がった。

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