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一方通行風呂【毎週ショートショートnote】

「博士いったい何事ですか?こんな夜遅く」
「見たまえ!とうとう完成だ」

「はっ?浴槽ですか?」
「ただの浴槽じゃないぞ!」

「ラブホによくあるHな用途向けに見えますが…」
「君!注目すべきはそこじゃない。量子バブルを発生させるためにはこのジェットバスの機能が必要だったんだ」

「えっ?量子バブルということは…とうとう時空の壁を越えられる……」
「そうだ。量子もつれを利用したワープも可能なタイムマシンの完成だ。いつの時代のどんな遠いところもひとっ飛びだ。だがひとつ問題がある」

「そりゃそうですよね。こんな画期的なものがそうやすやすと…」
「君、知ったような事をいうもんじゃない。いいか…時空を越えられるのは量子バブルに包まれたものだけなのだ。つまりこの浴槽に浸かったものだけ。これが何を意味するかというと…」

「量子バブルを発生させるこの風呂が時空を移動するわけではない。つまり時空を越えて行った先にこの風呂がなければ帰っては来られない」
「そうだ…一方通行というわけだ」

「大丈夫です。博士!お背中流しましょう!」

「あっ!何をする。おいっ!強引に服を脱がせおって…まだ心の準備が…」

「博士勘違いしないで下さい。どうせなら風呂にちなんで古代ローマといきたいところですが、私と一緒に10年後の日本を見に行きましょう!」

「わかっているのか?一方通行なんだぞ」

「大丈夫です!未来の日本であればラブホじゃなかった…風呂文化も健在で進化したジェットバスも存在するはず。その風呂に博士がちょちょいのちょいと手を加えるだけで…無事帰ってこれるじゃないですか!博士の同行が必須なんです!」

(675文字)


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