ネコクインテット 2nd.【毎週ショートショートnote】
それは『モフるか!一千万か!』という出場者の忍耐力を試されるリアリティ番組だった。
各ステージ毎に猫がいて、それに構わず触らず耐え抜けば次のステージに進めるのだ。ソファに座って3分間とにかくモフらなければ良かった。そしてその5つをクリアして1千万!失敗すると即退場だった。猫のアルティメットタワーだ。
僕は驚異の倍率を突破し出場権を手にした。たった15分耐えれば良いのだ!だが今まで一千万を手にしたものは誰もいない。スポンサーは猫用おやつのヂュ~ルでお馴染みのキャットフード会社だ。
ガイド役はアメリカンショートヘアだった。
さっそく最初のステージから強敵だった。ミヌエットだ。膝の上に載ってきては頭突き、ふみふみ、へそ天などの技を繰り出してきた。
「クリア!」
突然音声が鳴り響いた。第一ステージ突破だ。
なんてことだ!僕は第二、第三も制した。ノルウェイジャンフォレストキャットとラグドールだった。さらに、出迎え、爪とぎ、ゴロゴロなどの技を追加してきた。まったく天国かよ!いや、何も手が出せない地獄なのか!
そして第四はマンチカンだった。リアルネコマフラーという大技を繰り出して来た時には僕はダメかと思った。だがなんとか耐えた。手強かった。
そしてとうとう最終ステージだ!
最後は顔も目もまん丸のスコティッシュフォールドだった。目が合うとぐいぐいきた。ふみふみから肩の上で顔ペロペロ、毛繕いから、甘噛みまで、見事な連続技だ。
なんて幸せなんだ!と思った瞬間、肩から下りてソファでうずくまってしまった。眼はじっとこちらを見てゆっくりと瞬きをしている。体の一部は触れたままで、ぱたんぱたんとゆっくりと尻尾を打ち付けてくる。
「ううっ!」
耐えきれず手を伸ばしたその瞬間
「クリア!」
〝やった!ネコクインテットに勝利した!一千万だっ!”
モフろうとして伸ばした手がガッツポーズに切り替わった。
だがその後きちんと番組規則を読まなかったことを激しく後悔することになった。
偉業をなし遂げるやいなやガイド役のアメショが僕の体を駆け上がってきたのだ。あたかも祝福するかのようだった。僕は嬉しさの余りそのアメショを抱え上げて頬ずりしてしまった。
その瞬間
「退場!」
冷たく音声が鳴り響いた・・・
なんてことだ。アメショはワイルドカードだった。
(945字)
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