見出し画像

デジタルバレンタイン【毎週ショートショートnote】

そしてその年「モノリス2054」と名付けられた量子コンピューターが世界を支配していた。全知全能だった。

2020年代あたりでは1000キュービット(量子ビット)を越える量子コンピューターの大規模化は難しいといわれていたが、その後のブレークスルーにより人類は2050年代であっさり100万-1億キュービットを達成した。

「モノリス2054」は創薬や気候変動などの世界中で必要とされるありとあらゆる計算をさせてもまだまだ膨大な余力があったため世界中の誰もがアクセスできるように一人一人にリソースの割り当てがなされていた。

そして量子コンピューターの最も得意とするところはシミュレーションである。それをドライブするのは「モノリス2054」においては「Chabane GBR.」と名付けられた人口知能型のアプリだった。

このアプリは単に「G」と呼ばれる事もある。

人々は「モノリス2054」にアクセスしては「G」による仮想現実の人生を体験する。それはあたかも実際の人生のようだった。

そしてその仮想現実による人生も決して平坦なものではなかった。

なんといってもその人工知能型のアプリはアクセスするものの魂の成長が評価関数のMAXとなるように設定されていたからだ。

現実の人生と同じく仮想現実の人生も試練の連続なんてある種のM気質のものをのぞいて人気が出るわけがない。そしてその略称によるものかことさら女子には敬遠された。

ところが異変が起きた。

「G」はなんと女子ウケを学習したのだ。「G」の評価関数はなんと女子ウケを意味する「ファビュラス関数」に置き換わりそのMAXを狙うようになった。

これを世の女子が見逃すわけがない。

まず「G」にアクセスするとその仮想空間で、その女子に最適化された「推しキャラ」が提供される。

そしてそれぞれの仮想空間で「推しキャラ」相手にその女子が最も理想と考えるシミュレーションが繰り広げられるのだ。

特にバレンタインが近づくと世の中のすべての女子は「G」にコネクトしたまま現実世界には戻らなくなった。それぞれのポッドにこもったまま現実世界から女子が1人残らず消えてしまったのだ。

こうなるとたまったもんじゃないのが現実世界に存在するリアル男子だった。

そうなるとある男子などはBLに…

いや男子たるものただ指を咥え黙っているわけにはいかなかった。

早速血気盛んなもの達中心に、テロ組織が結成され量子コンピューター成敗に乗り出すもの達が現れた。

合言葉は

「打倒!AIのキュービット!」

だった。

(😭)

たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?