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見たことがないスポーツ 着ぐるみ駅伝【毎週ショートショートnote】

たすきリレーならぬ着ぐるみリレー。受け継ぐのは着ぐるみだった。

そして世界初となる「着ぐるみ駅伝」が今年の夏箱根で開催された。パリ五輪の開催日と同日だった。

猛暑日に、冬に行われる箱根駅伝と同じコースを走るのだ。あえて過酷な設定には意味があった。とかく色もの扱いされがちな〝着ぐるみ文化〟の地位向上だった。

そして単に速さだけを競うのではない。着ぐるみの出来映えやその重さも評価の対象となる。重さというのは負荷だけではない、かいた汗まで含まれる。

優勝候補は、某テーマパークのネズミチーム、朝のこども向け番組の緑とえんじの謎の生きものチーム、各ご当地のゆるキャラチームなどだった。だがあまりの過酷さにことごとく脱落してしまった。

一番人気は有名キャバクラのキャストによる猫チームだった。だがコスチュームが限りなく水着に近く、これは着ぐるみではなくコスプレである!とされ失格となった。

それにしてもこのレース、あまりに過酷すぎた。主催者は世界一厳しい駅伝としてギネスに申請することを決心したぐらいだ。

そんな中、優勝したのはある地方の商店街の青年部だった。プロアマ関係なく100組近くエントリーした中、唯一完走できたのがこのチームだったのだ。

そしてよくありがちなことで青年部とはいえメンバーは全員50代の固太りのおっさんだった。髪もほどよく薄く月桂冠が似合いそうだ。


マスコミによる優勝インタビューが始まった。

「このたびはおめでとうございます。監督に伺います。勝因は何ですか?」

「そうですね。給水所に用意したビールですかね」

「では区間賞をとったアンカーの方に伺います。これはキングコングでしょうか?見事ですね!とりあえず着ぐるみを脱いでいただけますか?」

アンカーはむっとして言った。

「もう、脱いどるわ!」


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