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秘密警察を宣伝してみる【毎週ショートショートnote】

「おい!」
〝ひょっとこ〟のお面をつけたダークスーツの男が部下らしき男に問いかけた。

「はっ!」
〝おかめ〟のお面をつけた部下らしき男がそれに応えた。

「なぜ誰も来ないのだ?ちゃんと案内は出してあるのか?」

東京都千代田区某所。本日は『秘密警察のPR案件』の入札日だった。

「はい。指定業者にはもれなく…」

「仕様書を見せろ!」

「はい。こちらでございます」

「何だ!この黒塗りと伏せ字の仕様書は?のり弁か?」

「はあ…秘密警察である以上仕方なかったのでございます」

「お前な~。これじゃコンペにもならんじゃないか!そもそも本日の入札会場が黒塗りではここに来られるわけがない!」

「はっ…お言葉ですが、実は仕掛けがありまして。今回の仕様書には添付資料付きなのですがそこには復号鍵が潜めてありまして、それを使うと黒塗りや伏せ字がわかるようになっているのでございます」

「暗号化か?」

「まさに!」

入札時間締め切りのぎりぎりになって一組の業者が現われた。

〝おかめ〟のお面をつけたダークスーツの男は何のためらいもなくその業者を拘束した。

その業者というのは敵対国のエージェントだった。

思い出したように開催される『秘密警察を宣伝してみる』にはこんな目的があったのだ。秘密警察内のさらに特殊部門による秘密裏のミッションだった。

(543文字)

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