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"優勝の立役者"にしてあげたかった助っ人外国人たち



 巨人軍は2020年シーズン、昨年に続きセ・リーグ連覇を果たした。日本シリーズでは...割愛。

 これで86年の歴史でリーグ優勝は47回目。日本一にも22回輝いており、名実ともに長きに渡ってプロ野球界を牽引してきた。

 また、連続V逸というのも二リーグ制以降最長4年(2003年〜2006年,2015年〜2018年)までで、5年連続V逸というのは無い。

 近年では2015年〜2018年の4年連続V逸期間が記憶に新しいと思うが、その期間チームの主力としていい働きをしたにも関わらず優勝には縁のなかった助っ人外国人たちがいるので振り返ってみたい。


マイルズ・マイコラス (2015年〜2017年)

【2015年】
21試 145回 13勝3敗 107奪 防1.92 WHIP0.90
・最高勝率

【2016年】
14試 91.2回 4勝2敗 84奪 防2.45 WHIP1.17

【2017年】
27試 188回 14勝8敗 187奪 防2.25 WHIP0.98

・最多奪三振

【通算】
62試 424.2回 31勝13敗 378奪 防2.18 WHIP0.99

 まず1人目は2015年に加入したマイルズ・マイコラスだ。
 来日一年目は開幕ローテ入りを果たすもなかなか勝ち星が付かず、初勝利はデビュー6戦目だった。
しかしそこからは順調に勝ち星を重ねていき、8月18日には早くも球団外国人投手史上3人目となる来日一年目からの二桁勝利となる10勝目をマーク。
 さらに勢いは止まらない。9月24日には6月20日から続く連勝を10に伸ばし、来日一年目の外国人投手として史上初の10連勝を記録。結局連勝は11まで伸ばしてNPB外国人記録タイにつけてみせた。
 チームは2位に終わりリーグ四連覇は叶わなかったが、最終的にこの年は13勝3敗 防御率1.92 勝率.813でタイトルも獲るなどエース級の働きを見せた。

 MLBからのオファーもありながら新たに2年契約を結んだ2016年は右肩痛を発症し開幕に出遅れると調整不足もあり本来の姿は見られなかった。だがそれでも91.2イニングを投げて4勝2敗 防御率2.45とそれなりの数字を残す辺りは流石だった。
 チームは2年連続でCSで敗退した。

 契約最終年の2017年はマイコラスの集大成とも言える圧巻のシーズンとなった。
 WBCに出場した菅野智之の代わりに球団3人目となる外国人投手として開幕投手を務めると7回自責1で勝利投手に。
 その後年間通してローテーションを守り抜き、14勝(セ3位)、防御率2.25(同2位)、187奪三振(同1位)、22QS(同1位)、WHIP0.98(同2位)と同年沢村賞を受賞したエース菅野智之、13勝を挙げた若き左腕田口麗斗らと超強力先発三本柱を形成した。
 チームは梅雨時に13連敗を喫するなど苦しみこの年はBクラスに沈みマイコラス含む三本柱も報われなかった。

 こうして契約を満了したマイコラスは、このオフにMLBへ復帰し、いきなり最多勝を獲得するなどその後の活躍っぷりは日本でも報じられるなど、今もなおとても愛される助っ人外国人だった。

 思い返せば日本で芸能界デビューした美人妻ローレン夫人や、小林誠司との「コバヤシィ」事件。さらには神宮扇風機破壊事件、ハマスタ扇風機取り外し&取り付け謎奇行、トカゲの踊り食い「リザードマン」エピソード、喫煙による男性器短小化の啓蒙活動in甲子園...etcプレー以外の面でもかなり濃い存在感を放ち、記録にも記憶にも残る優良助っ人だった。
 個人的に嬉しかったのは、巨人退団時「現役最後の1年は日本に戻りたい」と語ってくれたことだ。MLB復帰が叶い浮かれて出た発言だとは思いたくないが我々ファンはその時を待っている。


ギャレット・ジョーンズ (2016年〜2017年)

【2016年】
123試(422-109).258 24本 68打点 OPS.813

【2017年】
一軍出場なし


【通算】
123試(422-109).258 24本 68打点 OPS.813

 高橋由伸政権一年目の2016年シーズン。4番候補として連れてきたのがギャレット・ジョーンズだ。
 名門ニューヨーク・ヤンキースで4番を務めるなど、MLB通算122本塁打の触れ込みで来日した大物外国人。ここまで聞くと、誇り高きプライドに包まれ、格下の日本野球を嘲笑いに来たのかと思ってしまうが、そんな考えを180°ひっくり返されることとなる。

 オープン戦は全試合4番で出場し、球団外国人史上初の開幕戦4番一塁でスタメン出場し第85代巨人軍4番打者になると開幕三戦目に来日初本塁打となる逆転2ランを放つなどインパクトのあるご挨拶をお見舞い。
 しかしそんなギャレットは5月中旬まで4番一塁で出場するのだが、その間日本の変化球に苦しみ二軍に降格してしまう。
 それでも心を折ることは無く、試行錯誤しながら練習に打ち込み、コーチの助言も素直に聞き入れた。若手に混じって二軍の練習に励み、日本の野球に順応しようとする姿は若手の手本にもなっていた。
 こうして6月に再昇格すると打順は4番→7番、ポジションは一塁→左翼へ変更となったが打棒が復活。ハマスタ3打席連発や中日戦でのサヨナラホームランは今も忘れることは無いし、鼻血を出しながらの全力プレーも脳裏に焼き付いている。

 こうして最終的には123試合に出場し球団外国人26年ぶりに規定打席にも到達。また、球団21年ぶりの来日一年目での20本塁打となる24本塁打、打率も一時2割前半だったのが.258まで上げた。

 とにかく人格者でナイスガイ。L.クルーズとのコンビは相性抜群だったし、ハマスタでの雨天中断時はお茶目な姿も見せてくれた。

 2017年も在籍していたが、一軍の外国人枠の関係もあり1度も昇格することがなくそのまま退団となった。

 枠の関係とはいえまだまだ一軍でプレーする姿が見たかったので非常に残念だったが、その間も二軍でひたすら練習に打ち込み汗をかいていた姿は容易に想像できる。

 先程紹介したマイコラスにも言えると思うのだが、二軍に降格した時の態度はその後の活躍に必ず繋がると断言出来る。
 マイコラスはお騒がせ助っ人的な面もあったがファームでのリハビリ中は決して腐らず真摯に向き合い取り組んでいたという。

 チームは結果が伴わなかったが、こういう選手の姿勢はきっとチームに有益なものをもたらしたに違いない。

 またいつか巨人軍に携わって欲しい選手のひとりだ。


ケーシー・マギー (2017年〜2018年)

【2017年】
139試(523-165).315 18本 77打点 OPS.897

【2018年】
132試(499-142).285 21本 84打点 OPS.803

【通算】
271試(1022-307).300 39本 161打点 OPS.851

 近年の巨人軍で最もどん底を味わった2017年。そのチームで様々な起用法にも応え続け、いかなる苦しい時もチームを鼓舞し引っ張っていってくれた選手のひとりがケーシー・マギーである。
 前年の2016年オフ、プロ野球史上初のFA3人同時獲りを敢行するなど超大型補強の1人としてやってきた。

 元々2013年に楽天の日本一に貢献した事で日本の野球ファンの認知度は高い選手であり、その高いクラッチ力も期待でき、新外国人よりも計算が立つという点でも良い補強だった。

 実際一年目からマギーは村田修一とのポジション争いを制して三塁のレギュラーを掴むと打率3割をキープ。巨人軍第87代4番も務めた。

 しかしチーム状態は決して良くなく、5月下旬には悪夢の13連敗を喫してどん底に沈む。
 マギーと共に入団した陽岱鋼は故障でまだ合流しておらず、山口や森福も大して戦力にはなれなかった。

 そこでチームのテコ入れとして、DHのあった交流戦で成績を残した村田をマギーに代わり三塁で起用し、マギーを二塁にコンバートという斬新な起用を行う。
 これによって開幕前は考えられなかった「村田とマギーの同時起用」が実現し、陽岱鋼復帰後は2番も務めたマギーは好調だった坂本らと厚みのある打線を構築した。
 その結果投手陣の頑張りもあり7月、8月、9,10月と月間勝ち越しを続けたが序盤の低迷が響き11年ぶりのBクラス(4位)に終わった。

 13連敗中もそうだがチームが苦しい時期に前を向いてチームを鼓舞していたのは、キャプテン坂本勇人とマギーだった。

 4年ぶりのNPB復帰とはいえ、終わってみると139試合に出場しセ・リーグ新記録のシーズン48二塁打樹立や最終盤まで首位打者を争うなど、打率.315 18本塁打 77打点 OPS.803と好成績を残した。
 シーズン途中の二塁コンバートにも動じず、チームのために必死でプレーした。

 翌2018年は開幕から不振に喘ぎ、三塁のポジションを若い岡本和真に譲る場面も増えたが、要所での勝負強い打撃や守備の安定感は健在で、打率こそ前年を下回る.285となったが本塁打・打点は共に昨年を上回る21本塁打・84打点を記録し、この年史上最年少で3割・30本・100打点を達成した岡本のサポート役としても大きな役割を果たした。

 しかしチームは3位に終わり球団ワーストの4年連続V逸。
 CSファーストステージでは菅野のノーヒットノーランなどで2連勝し勢いに乗って広島に乗り込んだものの、天敵広島には通用せずその勢いを殺された。

 ちなみに広島との3試合での巨人の得点は3点。それらはいずれもマギーのバットによる得点である。

そしてシーズン終了後チームの若返りの方針に理解を示しマギーは涙を流して退団、その後静かに引退をした。

 単に外国人選手の兄貴分というだけでなく、チーム全体を見渡し、引っ張ってくれたマギー。その姿はもはや助っ人外国人というだけでなくチームリーダーそのものである。

 チームの勝利を誰よりも喜び、敗戦を誰よりも悔しんできた。寡黙な男だったが胸に秘めた想いは誰よりも熱いナイスガイだっただけに優勝を果たせなかったのはとても悔しい。

 今の巨人に求められるのは、マギーのようなクラッチヒッターであり、キャプテン坂本や4番岡本の"サポート役"を任せれる選手であると思う。

 その後、案の定巨人軍は新外国人に恵まれず、獲得して一年で退団していく選手ばかり。
 マギーと同様楽天から移籍したウィーラーは残留となったが、来季ウィーラーを外国人の中心として計算するのは違うだろう。
 コロナ禍で国外からの補強は思うようにいかないだろうが、チームの核を担えるような選手の獲得に力を注いで欲しい。

 マギーが退団して早2年。奇しくも未だに巨人軍とそのファンはあの頃のマギーの影を追い続けているのだ。


アルキメデス・カミネロ (2017年〜2018年)

【2017年】
57試 63.1回 3勝5敗 4H 29S 防2.42 WHIP1.25

【2018年】
20試 18.2回 1勝1敗 2H 11S 防5.79 WHIP1.77

【通算】
77試 82回 4勝6敗 6H 40S 防3.18 WHIP1.37

2016年セ・リーグセーブ王の澤村拓一に刺激を与えるという理由で獲得したのがアルキメデス・カミネロだ。

 前述のように2016年オフは総額30億円とも言われる大型補強を敢行したがそのラストピースとして最速164km/hを誇る剛腕リリーバーは年俸1億3200万円の1年契約で入団した。

 20代の現役バリバリのメジャーリーガーでありポジティブシンキングの持ち主。元々指摘されていた四死球の多さに関しても「2シーズン以内に0にしてみせる」と豪語する謎の自信家な面もあり守護神候補として期待された。

 当初は前年までの守護神澤村に加えセットアッパー マシソンらとの「ポジジョン争い」を期待されたのだが、澤村が2017年春季キャンプ中にチームのトレーナーから受けた鍼治療の影響で長胸神経の麻痺を発症しシーズン全休。
 思わぬ形でセットアッパーマシソン、クローザーカミネロの方程式が完成した。

 これは巨人に限ったことでは無いと思うのだが、9回を任される投手というのは、セーブ失敗や四死球などでピンチを招くと「劇場」と揶揄されることが多い。
 事実カミネロも「カミネロミュージカル」と言われる場面が多かったのだが、実際2017年の57試合登板中、セーブ機会での失敗は5度。そのうちチームが敗戦したのは4度のみと、言うほど試合をめちゃくちゃにした訳では無かったし、それどころか57登板も29セーブも来日1年目としては球団外国人最多記録であった。(ちなみに山口俊、マシソンらと継投でノーヒットノーランを達成したのもこの年である。)

 そうして2018年シーズンも年俸を2億2000万まで大幅アップを勝ち取り残留。6月には162km/hを計測するなど球の勢いは増してきたが前年ほどの安定感は無く、防御率は5点台に沈み登録抹消。その後は治療の為帰国しそのまま退団の運びとなった。

 2018年も20試合の登板で失点する場面は増えたもののセーブシチュエーションでの失敗は1度のみと、なんだかんだ試合は壊さないという点では評価していいのでは無いだろうか。

 由伸政権時代の3年間で最もセーブを記録したのはカミネロだ。この3年間のブルペンをマシソン、澤村、田原ら共に支えたカミネロを忘れてはならない。


最後に

 今回は2015年〜2018年の4年間に巨人に在籍し、活躍したものの優勝という日の目を見ることが出来なかった助っ人外国人を4名ご紹介した。
 今回紹介できなかったが、他にもマイコラスと共に2015年に入団し1年目からローテを守って8勝を挙げたアーロン・ポレダや、ロッテから移籍して数々の美守やバッティングを見せたルイス・クルーズなど、チームに貢献してくれた選手はいる。

 結果的にチームが優勝出来なかったのでフューチャーされる事は少ないかもしれないが彼らの勇姿を忘れることは無い。

 最後に無事来季契約を締結した立岡宗一郎の復活を切に願って締めとします。

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