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『空洞です』はスゴい


自分は主に「現実感のない」音楽が好きです

個人的なイメージの話なんですが、サウンドだったり歌詞の世界観が脱社会的というか現実とちょっと別位相にあるようなものだったり(嘘つきバービー、Ruins(吉田達也)とか、ちょっとベクトル違うけどミドリ)

リフ中心で、聴いていると没入感があって、ちょっと現実からひっぺがされる感じの60s〜70sのいわゆるサイケデリック・ロック(13th floor elevators、Fifty Foot Hose、ジミヘン、The Freak Sceneとか)であったり

常に頭の中をウヨウヨしている神経症的な不安がファズやノイズでかき消されたり、反対にトンネルの中に押し込まれていきすぎて瞑想的になる感じのジャパノイズ(Merzbow、裸のラリーズ、nisennenmondaiとか)

が好きで、あんまり音楽を深くディグったりは物臭なのでできず、出会った人から教えてもらったものから派生して今の趣向があり、基本的にアルバムではなく同じ曲を何度も何度も聴くという、サブスクに呪われた音楽の聴き方をしています

ゆらゆら帝国も初期のノイジーなおファズであったり、往年のガレージサイケを踏襲したようなサウンドであったり、『空洞です』や『Sweet Spot』の一部の曲を除くと先述の「現実感がない」感じで好きなんですが

『空洞です』はとにかくスゴい

なんか「現実感がない」というのは、いろんな形で連れ去らてしまうようなトリップ感なのですが、空洞のアルバムって一応現実にいて、でも現実じゃないというか、変な醒め方をしているというか、「シラフ」な感じがします

「現実逃避」も含めていろんな「酩酊」が現実の構成要素であって(何かに酔ってなくても、強迫的になにかにとらわれたり、折にふれて反復的な不安に駆られるのは「酩酊」の延長線上にあって「シラフ」ではないと思っています)、「シラフ」なんてものはあるんだかないんだかわからないような対象だと思うんですが、そのゼツミョーな位置に収まっているというイメージが、唯一このアルバムから得られて、他に似たような音楽体験があるものに、今のところ出会えていません

現実からわざわざ出ようとしていないというか、悟ってもないのに手放しでいるような

1曲選んだら「学校へ行ってきます」が大好きなんですけど、アルバム全体の流れでもスゲ〜んですよね、これ

特に「やさしい動物」以降の流れが怒涛だな〜と思うけどなにが怒涛なのか全くわかりません

歌詞も空気の抜けたフーセンみたいな人間観で、でも達観してるわけでもエラソーな感じでもないし、バカでかい視点でもないし、背後に感情があるようなないような、醒めてるな〜と思います

ゆらゆら帝国解散後の坂本慎太郎個人名義の楽曲も、ゆら帝の雰囲気から持ってくるなら空洞が一番近いんですけど、『空洞です』は近いだけで全く別物ですね

『空洞です』スゲ〜!


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