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アカイユメ~構想奇譚~

※注意※
この記事にはゲームワールド『 アカイユメ feat.9191』のネタバレが多少、含まれています。お読みになる前にゲームワールドをプレイされることをお奨めします。

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…ということで先日、ガルペノ氏と一緒に作ったアカイユメが公開されました。実に製作期間4ヶ月…といっても間にゲームワールド杯や冬のGameJAMがあったりと休み休みで作ってました。時々「これ、どこまで作ったっけ?」と思う時もありました。

振り返れば「次はホラーゲームとか作りたいな、青鬼みたいなやつとか」と思ってましたが、いかんせんアニメーションとかロクにやったことがないので「小説風でいくか?」と構想を練っていた時でした。不意にガルペノ氏より「コラボやりませんか?」とのお声がかかり「やりましょう」と気軽に返事をしました。それがお互いの時間を削りに削る長い長いワールド製作になるのも知らずに(申し訳ない)。

本来の構成は「館の探索」「迷宮」「脱出」の3シーンでしたが「迷宮」を断念(というか館の探索も9191の私生活にいろいろあってほとんど断念)するという感じです。膨らみに膨らんで「あ・・・これはとりあえず現時点でまとめ上げなきゃサクラダファミリアになる💦」と思ったので短めの作品になりましたが、それでもゲームとしてまとめ上げたガルペノ氏の技術力は凄いなぁと思ってます。いやもう、ホント若い人の力って凄い。羨ましい。

えっと、ストーリーについてですね💦

みなさん、エンディングは見ましたでしょうか?「え?」となってしまうかもですが、本来これはいくつかの分岐があってゲームの達成度でエンディングが変わるというものでした。コンプリートしなければ見れないエンディングを含めて今回3択にしましたが、実際のところ構想が膨らみ過ぎて互いにキャパを圧迫(というかギミック系もみんな任せてしまってるのでガルペノ氏の負担は大変だったと思います💦)してしまいました。

※ここからは完全にネタバレです

最初から少女が(いわゆる世界の視点で)「悪」ということは初期から決まってました。あの館というのは所謂「境界の前線基地」というものを象徴していて、境界とは「世界と世界の境い」という意味です。ある世界で亡くなった魂は非常に不安定な状態であり、彼岸と此岸のように世界を逝き来してしまいます。

他の世界からやってきた存在が別の世界に根を下ろすと、その世界に異分子が入ることで調和が乱れます。そのため、迷い込んだ存在を駆除する存在が必要となります。それが「アレ」ということです、ちなみにアレの名前はアレです、あの追いかけてくるヤツです。それ以上でもそれ以下でもありません。どちらかというと全て概念の話で、ワールドの舞台が館であったりすることに大きな意味はありません、が、たまたまプレイヤーの意識と少女の意識が共有できる形で再現されたのが館というカタチだったのでしょう。

ここでプレイヤーの存在ですが、9191はプレイヤーの定義を「プレインズウォーカー」としています。何それ?という方に説明すると、20年位前からあるカードゲームMTG(マジック・ザ・ギャザリング)のプレイヤーの概念で、プレイヤーは多次元宇宙という無限の広がりを持つ久遠の闇という空間に存在する無数の次元世界を渡り歩くことができる力をもつ存在のことをいいます。次元を超える超常の力を持ち、時に傍観者で、時に破壊的な存在でもあります。これってclusterでいろんなワールドを旅してるプレイヤーと同じなんですよね。

プレイヤーは様々な世界を旅することができ、そしてその世界のルールに縛られながらも不滅の魂を持つ。アレに捕まろうがどうされようが、モニター(orゴーグル)の向こうの存在には小さな世界の住人の力は届かない。気が向かなければ全てを見捨てて他の世界の移動をしても何の呵責もない、痛みを感じることもない。そんな無敵の彼ら(貴方)に動いてもらうには、小さき存在の「願い」が届いた時かもしれないし、多次元世界を旅するものの気まぐれや好奇心に頼るしかない。

少女は運よく(もし貴方がプレイをしてくれたなら)庇護されることとなり、貴方と共に脱出を試みます。本当なら、もっといくつかの「魂」や「記憶」に貴方に触れてもらおうと思ったのですが、これは9191の力不足で没にしました。同時にこの「魂」と「記憶」が次の「迷宮」のシーンで生きてくるのですが…これもゲームのボリュームが大きくなりすぎて中止しました。もーちょっと9191に実力があればね…。

さて、ようするに「アレ」とは世界の調和を保つ為に、世界の狭間で迷い込んだ魂を貪ることで浄化しているという存在です。そしてその任務は途方もない狂気に蝕まれてしまうもので、もはや明確な意思もなく「そういう存在」として館をさまよっています。もしかしたらその世界における「罪人」の仕事なのかもしれません。知らんけど。

しかしそれは「世界」から見た理屈であり、幼い少女が「あ、はい」と納得できるものではありませんし、そんな理屈そのものを知ることはないでしょう。病に倒れ、闘病し、生きたいと願った結果がこれです。それはどんな命にも共通しますが、生まれたことに意味があるかの哲学感は置いておいても、生きていたい、存在し続けたいという思いは善でも悪でもないのです。

それに対して「理屈」が「力」をもって押し通す。それに抗うことさえも包括して秩序となります。

さて、いつもなら体内に入り込んだ細菌が免疫機能で駆除されるように消えゆく運命の少女でしたが、今回は貴方という「超越者」に出会えたことで大きく世界が揺らぎます。なんだ厨二設定か。

最後の選択肢を3つとも解説します。

「それではこれで」…多次元世界を渡り歩くきままな貴方の興味は終わり、世界はまた均衡を取り戻す。少女は眠り続け、やがてアレに喰われるでしょう。それでいいんです、それでも貴方には何も損はない。喰われるのは少女であって、そしてデータの一つであって貴方ではなく、また貴方と少女の命の重さには次元を超えるほどの歴然とした差が存在しています。また、それがあなたなりの防衛術なのかもしれません。

「ゆっくりと起こす」…少女は目を覚まし、安堵します。ただ。結局のところ少女の魂は「アカイユメ」の世界の中から抜け出していません。貴方が去れば秩序は力を取り戻し、少女は明確な意識のままアレに喰われます。余談ですが、この選択肢をすると少女が自分を異物と無意識に認識してしまったことで無限に増殖してサーバーが落ちるまで分裂するというラストが初期にはありました。少女なりの防衛本能というか最後の抵抗なのかもしれません。モニター越しに貴方に救いの手を伸ばすにはもうそれしかないのかもしれませんし、もしかしたら怨嗟の爪痕を残したかったのかもしれません。しかし、今回はそれすらも叶わなかったようです。

「そっと首に手をかける」…正解はないのですが、せめて一番安らかな終わらせ方です。貴方の意志でもって少女は苦しまずに還ることができました。もちろん貴方はこんな小さな世界を遥かに超えた存在です、その意思は測りようもありません。気まぐれか、慈悲か、もっと黒い感情か。ただ一つ言えることは、全ては元に戻りました。冬を超えた春の野原の中で新しい命が生まれては喰われるを繰り返すかのような狂気の世界から、ひとつ魂が安らかに消えたのです。これはゲームの中でやりこまないと出てこないエンディングの予定でしたが、諸々の都合で最初から選択肢に挙げられることとなりました。結果としてこの最後は構想段階で決まっていたので無事に再現できてよかったです。よかったのか?

最期に

基本コンセプトは「迫りくる恐怖」「追いかけられる」でした。得体のしれない「何か」に追われるようにして、景色でだけでないものでプレイヤーの感情にアクセスしたかったといった感じです。9191は非常に寂しがりでありながらコミュ障なので、ワールドでもみなさんとあまり絡めません。そんななかで、少女のあがきのように感情にどれだけ爪痕を残せるか?とか考えてました。今思うと何言ってんだコイツ?という感じですが。

後半それすら忘れてました、とにかく大変だったと思います(ガルペノ氏が)。基本的にマイペースなうえにギミックとか技術があるわけでもなく、むしろ基礎的なことがわからないおっちゃん相手に辛抱強く完成に持って行ったことに、非常に感謝です

そもそも9191側でできることといえば殆どないと言いますか、9191のワールドは基本的に「素材そのまんま」だったりします。なんか雰囲気に合うようなイメージに合うようなアセットをみつけて、そのなかでサンプルシーンがあれば活用します。だって拙い自分がイチから作るよりわかってる人がちゃんと作った構成のほうが良いじゃないですか(真顔)なので、サンプルシーンを元に改造したりほんのちょっと手を加えたりするレベルです。そしてイイカンジのアセットとイイカンジのアセットを組み合わせてイイカンジにする。それだけなものでイチから作るのは苦手なんですよね。

だからここまで読んで皆さんおわかりでしょうか?、あまり制作について話していないことに。ね(´・ω・`)←

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あ、今回ランプだけは自作しました(それだけかい)。

いやもう、これに懲りずに何かお話があれば全然ウェルカムです。本当にお疲れ様です&ありがとうございました。こんな事例も踏まえて、cluster作家さんたちの交流が創作の上でも繋がるとよいですね(9191はヤメトケ)


追記

「その子はもういないよ」というセリフですが、これは9191の実体験に基づいた気になるワードからきました。当時、ある人と連絡が取れなくなった時期がありまして、東京都庁警備隊員だった9191は深夜の都庁を巡回していました、どことは言いませんがある塔の廊下でふとその人のことを考えて歩いていると「そのこはもう、そこにいないよ」みたいな言葉が聞こえてきました。それもごく自然に、なんというか「こんばんは」ってすれ違った人に声を掛けられるくらいの違和感のなさで。でも、誰もいないんですよね。当たり前ですが。そして翌日ですが、まぁ、おっとこの続きは次回。



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