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寝苦しい夜が続きますね。


書きたいものが多すぎていっぱいいっぱいになりそうな梔子です。

今回は約500字の掌編を書きました。

寝苦しい夜が続きますね。


寝転びながら月を見ていた。

うまく眠ることができないまま、結局朝を迎えてしまった。

”ヒグラシ”のくせに早朝から鳴く声がうるさい。
そろそろ日が昇ってくる頃も、月はキラキラと夜を照らしていた。


夏になるといつもこうなのだ。
いくら疲れていてもなかなか寝付けずに時間を持て余してしまう。

普段徹夜は絶対にしないタイプなのに、寝れないときは本当に寝れない。
もとから寝つきが悪いから嫌になっちゃう。


寝れない夜はいつも以上に悲観的になりやすい。私はこの夜から取り残される気がする。

日が長くなった分夜は短いはずなのに、果てしなく長い時間を独りで過ごすのは少し心細い。


こんな時、誰かがいてくれたらいいのに。


もう居ないはずの人の感触を求めて這いずり回るような感情が、私を襲うのだ。


忘れられたらどんなによかったか。


そう言いつつも、あの人の記憶はどんどん薄れていくのに。


暇を潰すように月を長く見つめていると月に呑まれそうになる。

忘れられるはずのない記憶が月に呑まれて消えそうになる。

それが怖くて、見ていた月から目を背けるようにぎゅっと目を瞑った。



いつのまにか眠っていたのだ。
朝が来たとひぐらしの声で知った。


涼しい夏の匂いのする夏の朝焼けはシュワシュワして悪くないと思った。


最後までお読みいただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。

梔子。

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