#6 もう関係ないや
小学生時代、毎日一緒に登校していた友人がいた。
その子はいつも笑顔で可愛くて
運動神経が良くて
少し抜けているところがあって、
性別問わず、誰にでも好かれる
アニメのヒロインみたいな女の子だった。
正直、その子の存在は自分にとって
憧れであり、妬みの対象でもあり、
自分の『陰』の部分を知るきっかけでもあった。
当時の自分は、
『陽』であった友人を、陰からみていることしかできなかった。
ある時から、
その子と一緒にいることでいやがらせを受けはじめた。
『なんであんたみたいな人があの子と一緒にいるわけ?』
『うちらのが仲良いんだけど』
と、
その子の目の前で仲間はずれにされた。
よくわからない悪口や陰口も言われた。
期間にして、2年くらい。
その子は自分をすごく心配しつつ、
『助けてあげられなくてごめんね』
っていって、自分から離れていった。
もうあまり記憶が定かじゃないけれど、
たしかクラス替えをした後、他の友人に恵まれて、一緒にいたんだっけな。
それからはあまり覚えていない。
卒業式で写真を撮ったような気もする。
小学校を卒業してからは、
その子に会うことはなかった。
でも、何かにつけて自分は
その子のことを思い出すことが多かった。
人生の中で、自分の性格を形作る
キーパーソンだったのかもしれない。
その子も羨むような人間になるんだ。
妬みも嫉みも嫌な思い出もすべてばねにして
変わってやるんだと言い聞かせてきた。
そして気づいたころには
その子のことを考えなくなっていた。
先日、
ある知らせが耳に入ってきた。
人伝に、
『あんたに会いに来るって』
と言われた。
できるなら会いたくない。
けど、もう大人だしな。
割り切って、その子と10数年ぶりに顔を合わせた。
ああ、やっぱりこの子はいい子だ。
左手の薬指に指輪が光っているのも納得がいくよ。
でも、
羨ましいと思う自分はもういなかった。
『……え、』
『(名前)が、(名前)じゃないみたい』
よく頑張ったよ。
この子の横にいても負けないくらい、
自分で自分を作りあげたんだから。
努力してきてよかった。
でもやっぱり、
陽と陰であることには変わりないみたいだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?