安楽死制度不要を主張する人に知って欲しい死の3分類

安楽死制度不要を主張する人に、まず人の死は千差万別であることを理解して欲しい。
今回はわかりやすく、3つの分類だけ説明するので聞いて欲しい。

①理想の最後
まず最初に、ゆっくりと身体が衰え、感覚も失っていき、眠るように安らかに亡くなる理想の最後を思い浮かべて欲しい。
ゆっくり最後を迎えるので、本人も心の準備ができ、回りの家族も「ありがとう」と最後の言葉を交わし身体をさすり、心を通わせながら迎える、実際にはなかなか存在しないような、とにかく理想の最後を思い浮かべて欲しい。

②苦痛を伴う最後
人工透析の中止による死は、死に至るまで2週間以上の期間があり、非常に苦しい日々を乗り越える必要があるらしい。事故による出血による死、痛い痛いとのた打ち回りながら迎える死。癌による死も、場合によっては大きな苦痛が伴うらしい。どのような死に方が最も残酷だろうか。
火炙りにされ、釜茹でにされ、全身の皮を剥がされ、痛い痛いと暴れ泣き叫ぶような、普通では考えられない、とにかく残酷な最後を思い浮かべて欲しい。

①と②は、両極端であるがゆえに、多くの死は①と②の間にあると言える状況になると思う。場合によっては、苦痛を伴う時間を乗り越えて、最後は感覚を失い、安らかな最後だったと表現されることもあるだろう。
そして、もう一つのパターンを指摘しておきたい。

③身体の動きを完全に失って迎える最後(見えない苦痛)
身体の動きを完全に失った場合は、回りからは本人の感情を読み取ることが出来ず、それでいて②と同様の苦痛を伴う場合がある。①と②は、ビジュアル的な両極端であり、③は苦痛を理解してもらうことも表現することもできない実質的な最悪の状況と言うことも出来る。

尊厳死(消極的安楽死)と言う方法が世界で広く行われており、日本でも行われている。
これは、延命治療によって②③のような苦痛に満ちた状態を長引かせることがないように、延命治療を拒否する方法です。欧米では、キリスト教の影響で積極的安楽死を認めることが出来なかったために拡がりました。
しかしこの方法では、まだ苦痛を伴っていない状態でも、将来的に②③の状態になることを恐れ、事前に尊厳死を選ばなければならないというデメリットもあります。一度、延命治療を開始すると撤回することが出来ないので、延命治療開始の判断は難しくなります。
医師は勝手に延命治療を開始しても罪に問われることはありませんし、ベッド数に余裕がない、延命治療を行いたくない場合に、尊厳死に誘導することも容易な制度です。
人工呼吸器が必要になったALS患者のうち、およそ7割が人工呼吸器の使用を選択していないそうです。

もしも尊厳死法ではなく、安楽死制度(積極的安楽死)が認められれば、医師が恣意的に尊厳死に誘導することは難しくなり、患者の希望に沿った医療制度の充実が図られることになります。
つまり、医療者中心の医療制度から、患者中心の医療制度への大きな転換が行われることになります。
患者に最後の権利が認められることで、医療者は安楽死の選択を恐れて、患者の希望に耳を傾けざる負えなくなるからです。

③について、意思表示が出来なくなった場合は何も出来ません。安楽死制度では解決できない問題も多いです。しかし、②に関しては放置してはならない問題です。
明らかに患者が苦しんでいる、死にたいと言っている状況で死ぬまで放置する。明らかに残酷な状況があることを、ほとんどの国民は知っているはずです。
病気や怪我で辛い状態になった時、患者は医師に身を委ねるしかありません。延命治療を選択する場合も、尊厳死を選択する場合も、その選択の先には大きな恐怖があります。
安楽死制度があれば、恐怖から開放され、自分の意志で生きることを選択できる社会になります。

安楽死制度は、使いたくない人は使わなければ良い制度です。しかし、安楽死制度を利用する方の最後は、限りなく①のような理想の最後になるように努めなければならないと思います。
家族のない方でも、担当者が付き添い、後世に自分の思いを残すことが出来る、信頼関係を築いて見送りを受けることが出来る、直前まで撤回可能な全ての人に生きる希望を与えてくれる制度であるべきだと考えています。

今回は3つの分類で紹介しましたが、これとは別に認知症のような症状も存在します。
人の最後は本当に千差万別で、老衰や自然死、尊厳死のような最後が良いとは限りません。
病気や怪我で苦しみながら迎える死や、自殺は仕方がないこととは言えません。

安楽死制度を認めることで、多くの人が理想に近い最後を迎えることが出来ます。
安楽死制度を認めることで、苦痛の少ない患者中心の医療を発展させることが出来ます。
安楽死制度を認めた先には、さらに難しい命の問題が数多く存在します。
安楽死制度を求める活動に、ご理解とご協力をお願いします。

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