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《短編小説集》なにがしかの話

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物語の半分はほろ苦さでできています
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2020年9月の記事一覧

好きな人とAVを鑑賞した夜の話

 ──どうして、こうなってしまったんだろう。  6畳のワンルームに響く、女の甲高い喘ぎ声。肉と肉がぶつかりあう、重くて湿っぽい音。それらの合間を縫うようにして漏れ聞こえる、男の荒い呻き。  テレビ画面のなかで蛇のごとく絡み合う彼らは、「観られる側」としてこの状況をどう思うのだろう? そんな他愛もない問いが脳裏に浮かぶ程度には、室内は溢れんばかりの倦怠感で満ち満ちていた。  ちゃぶ台を囲んで画面を眺める、僕ら3名の男性陣。そして、傍らのベッドに腰掛けている紅一点──イガラ