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「歌ってみた」「弾いてみた」用のオケ音源を効率的に作成する方法

「歌ってみた」や「弾いてみた」的なカバー動画を作成する時に、歌やギターを重ねる前の「音源」(オケ)をどうやって用意するかという問題があります。

最初に思いつく方法は、市販されているCDやMP3などの音源をそのまま使うという方法ですが、原曲のボーカルや楽器の入った音は使いづらいですし、レコード会社などが作成した音源を使うことにはリスクもあります。

というのもレコード会社などが作成した音源(原盤)には「原盤権」という権利が付いていることが多く、CDなどの音源をそのまま使うと損害賠償請求されたり、アカウントがBANされるリスクが無い訳でもないです。

実際にはレコード会社などが黙認していることも多く問題にならないケースもありますが、損害賠償請求されたりBANされたりするかもという不安にビクビクしながら動画をアップするのは精神衛生上良くないですし、チャンネルを成長させようという人にとってはコンプライアンス的にも問題があります。

そのため、きちんとした形で「歌ってみた」「弾いてみた」をやっている人は自分で音源(オケ)を用意している人が多いです。

自分で作った音源であれば、Youtubeやニコニコ動画がJASRACと著作権について包括的な契約をしてくれているので、JASRACに登録されている曲であれば安全にアップロードすることができます。

ただ実際に自分でDAWなどを使いながら音源を作るとなると、大変な作業で時間がかかります。

そこで、「歌ってみた」や「弾いてみた」などの音源(オケ)を可能な限り効率的に作る方法について紹介したいと思います。



◆音源分離ソフトを使う

まずアーティストの曲カバーする時には最初にCDやMP3などの音源を各パートに分離すると、その後に作業がはかどりやすくなります。

「音源分離ソフト」を使うと、①ボーカル、②ベース、③ドラム(パーカッション)、④その他のパートに音を分離してくれるものが多いです

私は音源を分離する際にiZotopeの「RX」というソフトを使っていますが「RX」は基本的にノイズを除去するためのソフトで音源の分離はオマケ的な位置付けなので、音源を分離するための目的だけで「RX」を購入するのはコスパが悪いと思います。



音源分離ソフトには無料のものもあり最近のソフトであれば「Moises」というソフトが比較的新しく使いやすいと思います。

無料と有料で使える機能が異なりますが無料でも音源を分離するのには十分な機能が付いています。

このような「音源分離ソフト」を使って音源を①ボーカル、②ベース、③ドラム(パーカッション)、④その他のパートに分離し、パート毎に「WAV」の形式でPCに保存すると下準備完了です。

◆分離したパートのWAVファイルをDAWに読み込む

パート毎の「wav」ファイルを用意したらDAWに貼り付けます。

元の曲のBPMとDAWのBPMを揃える必要がありますが、元の曲のBPMが分からない時にはBPMを自動で測定できるサービスなどを使うと便利です。

自動でBPMが測定できなかった場合には「BPMカウンター」などを使って手動でポチポチとリズムを刻んでBPMを確認してみましょう。

元の曲のBPMとDAWのBPMが同じになったら次の作業に進みます。

※ちなみに、上記の説明は原曲(CDなどの音)のBPMが一定であることを前提とした作業になります。

古いアーティストの曲や一発録した音源だとBPMが一定でないものもあり、数小節単位で原曲のWAVデータをタイムストレッチさせた上でクオンタイズをかけたりして、BPMを一定にさせるという面倒な作業が必要になることもあります。


◆ドラムリプレイサーを使う

次にドラムパートを作ってみます。

原始的な方法としては分離したドラムパートの音を聞きながら地道に打ち込むという方法がありますが・・・この方法はかなり面倒なので時間もかかりますし、挫折する人も多いと思います。

そこで便利なのが「ドラムリプレイサー」というプラグインです。

「ドラムリプレイサー」はドラムの音声データ(wav)などから、キック、スネアなどのアタックを検出し、他の音に置き換えたり(リプレイス)、MIDIデータに変換できるというプラグインです。

「ドラムリプレイサー」としてはSteven Slateの「Trigger 2」やXLN Audio の「Addictive Trigger」などが有名ですが、個人的にはUVIの「Drum Replacer」が精度が高くて使いやすいと思います。


UVIの「Drum Replacer」は価格も比較的安く、セールの時期であれば1万円以下で買えると思います。


「ドラムリプレイサー」の使い方は基本的に同じで、音を検出する「しきい値」(スレッショルド)を調節したり、フィルターを使ってキックやスネアの音が大きくなるようにして、アタックを検出させて、他の音色に置き換えたり、MIDIデータに変換します。

元の音源の音質やプラグインの性能にもよりますが「ドラムリプレイサー」を使うと、キック(バスドラム)とスネアの8割から9割程度はMIDIデータに変換できると思います。

MIDIに変換した後は、ベロシティを調整したり、リプレイサーが誤検知した部分を修正したり、キックとスネアにクオンタイズをかけたり(タイミングを揃える)、ヒューマナイズをかけたり(逆にタイミングや音量にばらつきを与える)などして、スネアとして検知されてしまったタムなどを修正すれば、ドラムパートの大枠が出来上がります。

ハイハット、シンバルはリプレイサーで全てを検知するのは難しく手動で打ち込んだほうが早いので、面倒ですがポチポチと打ち込んでいきます。

ハイハットは繰り返しのフレーズも多いので、複製機能を使って作業すればそれほど時間はかからないと思います。

これでドラムパートが完成します。

リプレイサーを使うのが面倒で、原曲とドラムの雰囲気が変わっても良いという場合には、TOONTRACKの「EZ DRUMMER 3」というドラム音源でリズムパターンを検索する「Tap2Find」という機能やリズムを自動生成してくれる「Bandmate」という機能などを使って、それっぽいドラムパートを作るという方法もあります。


◆ベースパートの作成

ベースなどの単音パートは「音声データ(wav)をMIDIに変換する機能」を使ってMIDIデータにすると作業が楽です。

「音声データ(wav)をMIDIに変換する機能」はDAWに標準で付いていることもありますし、「Melodyne」というピッチ修正用のプラグインや、Toontrackの「EZ BASS」というベース音源の「AUDIO TRACKER」という機能に含まれていたりします。

「音声データ(wav)をMIDIに変換する機能」を持っていないという場合には「NeuralNote」などのフリーソフトを使ってベースをMIDIデータにするという方法もあります。


ベースをMIDIデータに変換した後、スライド奏法などの調整をして完成です。

・・・というのが理想なんですが、ベースの音域は低いので、曲によっては8分で刻んでいるリズムが4分になったり、上手くMIDIデータに変換されないこともあります。

上手くMIDIデータに変換されない時にはベースパートを修正したり、ポチポチと打ち込んだりする必要があります。

変換の精度が低い場合には自分で弾いてしまったほうが早いという場合もあります。

ベースを弾くのが苦手な人の裏技としては、鼻歌でベースパートを歌い、その音声データを「wavをMIDIに変換する機能」を使って変換し、オクターブを下げてベース音源で演奏させるという方法もあります。


◆ボーカルパートの作成(「弾いてみた」の場合のみ)

「歌ってみた」の場合にはボーカルパートは自分で歌えば良いのですが「弾いてみた」の場合にはボーカルパートも自分で用意する必要があります。

一番簡単なのは歌い手さんを探して歌ってもらうという方法です。

歌ってくれる人が見つからないという場合には、「Synthesizer V」というソフトに「MIDI変換機能」が便利です。


「Synthesizer V」はかなりリアルな声で歌ってくれる歌声合成ソフトウェア(ボーカロイドみたいなもの)なのですが、歌声をMIDIに変換してくれて、しかも歌詞まで取り込んでくれるという非常に便利な機能があります。


この機能の説明については「DTMステーション」さんの記事がとても分かりやすいです。

使い方はとってもシンプル。Synthesizer Vのオーディオトラックとしてボーカルを読み込んで置き、これを右クリックしてコンテキストメニューを開くか、自動処理メニューから「オーディオをノートに変換」を選ぶとダイアログが表示されます。

この際、「歌詞を解析」をオンにして、言語を選んでおけば、ボーカルMIDI変換だけでなく、歌詞も音符に反映されるようになっています。こうして「確定」ボタンを押せば、ボーカルトラックが生成され、ピアノロールでボーカルがMIDIデータとして解析されて表示されるのです。画期的ですよね。

DTMステーション
「Synthesizer VがDTM界にまた新たな革命!人の歌声から音程と歌詞を抽出して再合成。ARA 2対応でDAWとの有機的な融合も実現」

「音源分離ソフト」を使って分離したボーカルのWAVファイルを「Synthesizer V」に読み込んで右クリックし「オーディオをノートに変換」を押すと、ボーカルをMIDIに変換し、歌詞も反映された状態で歌ってくれます。

これでボーカルは完成・・・・・・というのが理想なんですが、「音源分離ソフト」を使って分離したボーカルの音はノイズが混ざっていたりするので実際には上手くMIDIデータに変換されなかったり、歌詞を拾ってくれないということもあります。

そんな時には自分で歌を歌って録音し、録音した自分の声を「Synthesizer V」に読み込んでMIDIデータと歌詞データに変換すると良いです。

手作業でMIDIを打ち込んだり歌詞を入力するよりもずっと早いです。

ボーカルの声は後でAI音声に変換するので元の録音の環境や音質はあまり気にする必要はなくマイクも安いものでも十分です。

4小節くらいずつ覚えて録音する、という繰り返しで作業すれば歌を完全に覚える必要もありません。

さらに元の歌が下手でも「Synthesizer V」で変換すれば上手に歌ってくれますし後からピッチやタイミングをMIDIデータとして修正することも可能でなので、ピッチはそれほど気にする必要はありません。

それよりも歌詞をはっきりと、グリットにタイミングを合わせて歌うのがコツだと思います。

◆ギターとキーボードなど

最後にギターとキーボードなどの和音楽器ですが、和音は「音声データ(wav)をMIDIに変換する機能」を使っても上手く変換されないことが多いので、これはもう自分で弾くか他の人に弾いてもらったほうが早いというのが現状です。

「歌い手」さんと「弾き手」さんで「歌ってみた」と「弾いてみた」のコラボみたいな形で作成すると、お互いの作業が楽になって良いと思います。

カバー音源の作成ではアレンジをするのも楽しみの一つなので、原曲に敬意を払いつつ、自分の弾きやすいように弾いてみるのも良いと思います。

楽器が弾けない人や、どうしても弾いてくれる人がいないという場合には、バンドスコアを買ってきてMIDIでポチポチと打ち込んで、インスツルメントのプラグインに演奏させるという方法もあります。

◆まとめ

以上、「カバー曲用の音源を効率的に作成する方法」について、自分が試行錯誤してきた方法について説明させていただきました。

これまで説明させていただいた順番で作業をするとこんな感じの音源を作ることが出来ると思います。

将来的にはもっと楽にカバー用音源を作れる時代も来ると思いますが、現状では手作業で処理しなければならない部分もあり、やってみると結構時間はかかります。

最終手段としては前記のようにバンドスコアを参考に打ち込むという方法もありますし、曲は限られていますがヤマハミュージックデータショップでMIDIデータが販売されているので、どうしても自分で作るのが大変だという場合には、そういったサービスを利用するのも1つ選択肢だと思います。

https://yamahamusicdata.jp/


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