ギター用アンプシミュレーターにおけるIR(インパルス・レスポンス)の重要性
◆IR(インパルス・レスポンス)の重要性
ギター用のアンプシミュレーターで「良い音」や「自分好み」の音を出そうとする時に避けて通れないのが「IR(インパルス・レスポンス)」です。
IRは音響空間の特性をキャプチャしたもので、アンプシミュレーターの場合にはキャビネットのシミュレーター的に使われることが多いのですが、これだけだと何のことだか全く分からないと思いますので、簡単に説明したいと思います。
ギターの音は
① ギター
↓
② アンプのプリアンプ(ヘッド)部分
(アンプの音色や歪みを決める部分)
↓
③ アンプのパワーアンプ部分
(音を大きくする部分、ここを通ることで音が少し変わる)
↓
④ キャビネット(スピーカー)
という順番で最終的にキャビネットから音が出るようになっています。
一般的に「アンプのプリアンプ部分」のシミュレーターは複雑な処理をしてアンプの音を作られているケースが多いのですが、「キャビネット」の部分はIRというデータ(音の波形のデータなど)を読み込む形で実機のアンプっぽい音を作るシステムになっている製品がほとんどです。
このIRのデータはアンプシミュレーターに付いてくることが多いですが、別途自分好みのIRのデータを用意して「自分の好きなキャビネットの音」を出せるようにすることも可能な製品も増えてきています。
そして、この「キャビネット」のIRは、キャビネットのメーカー種類による違いだけでなく、スピーカーから出る音をマイクで録音する際のマイクの種類、マイクの位置、スピーカーとの間の距離、部屋の反響なども含まれたデータであることが多く、さらに「パワーアンプ」部分による音の変化も含まれていることもあります。
例えばこの「キャビネット」のIRを変えることで
「マーシャルのキャビネットから出る音をスピーカーの中心から2cm、スピーカーから3センチの距離で、どこそこのスタジオで録音した音」
といった音を再現できたりする訳です。
ギタリストの中では「アンプのプリアンプ部分」やエフェクターペダルによる音の変化を気にしている人は多いですが、IRによる「キャビネット」による音の変化を気にしている人は未だに多くないように思います。
それは、アンプのヘッドやエフェクターは変更が簡単なのに対し、キャビネットは持ち運びが大変でスタジオやライブハウスにあるものを使わざるを得ないことが多いので、状況に合わせてキャビネットを変更するというイメージを持っていない人が多いからなのかも知れません。
ただ、実際に試してみると分かるのですが、「アンプのプリアンプ部分」やエフェクターペダルでいくら音を変えても、キャビネットの音を変えることはできません。
そのため、なかなか自分の好きな音を作ることができないという場合にはアンプやエフェクターではなくIRを変えることで簡単に解決するというケースも少なくありません。
◆IRの変更の仕方
「IRが大事だということは分かったが、じゃあどうやって変えるのか」と思った人も多いと思います。
PCやMAC上で使うプラグインと、スタジオなどで使う実機タイプのアンプシミュレーターの場合に分けて説明したいと思います。
◇プラグインの場合
プラグインの場合には「キャビネット」という項目でキャビネットを変えることができることが多いです。
「プラグインを持っていない」という人は、無料で入手できるSTL Tonesの「Ignite - Emissary Bundle」というシミュレーターを使ってみると分かりやすいと思います。
この「Emissary」をインストールすると、DAWで「Emissary」というプリアンプ部分のシミュレーターと、「Nad IR Impulse Response Loader」というキャビネット部分のシミュレーターの2つを個別のエフェクトとして読み込みことができるようになります。
プリアンプ部分の「Emissary」は普通のアンプのヘッドと同じように使うことができます。
他方で「Nad IR Impulse Response Loader」は複数のキャビネットのIRの中から自分の好きなIRを選ぶことができるようになっていて、IRを変更することでキャビネットの音や部屋の反響の雰囲気が変わります。
◇実機のアンプシミュレーターの場合
実機のエフェクターなどに付いているアンプシミュレーターの場合、IRが変更できない機種もありますが、最近のエフェクターはIRが変更できるものも増えてきています。
たとえばBOSSのGT-1000・GT-1000COREの場合はOUTPUT SELECTモードを“RECORDING”に設定することでキャビネットを変更することができるようになっているだけでなく、BOSSのサイトから「GT-1000 IR Loader」というものを入手してインストールすることで外部のIRを読み込むことができるようになります。
Googleでお使いのエフェクターの名前と「キャビネット 変更」などと入れて検索するとIRの変更の仕方などが出てくると思います。
◆IRの入手方法
ここまでの話を受けて「IRを自分の好みに変えることは分かった、そのIRはどこで入手できるんだ?」と思った人が多いと思います。
Googleで「amp IR」とか「amp Impulse Response」などと検索すると、IRを販売しているサイトが沢山出てくると思います。
「Celesiton」というギターアンプのスピーカーなどを製造しているイギリスの音響機器メーカーが販売しているIRなどが有名です。
その他に、Googleで検索すると無料のIRが沢山出てきます。
個人的に好みだったのはforward audioというメーカーが無料で配布している「Free Impulse Responses – faIR Modern Rock」と「Free IR Pack – faIR Post Grunge」です。
高音域が強めで「ギャリギャリ」とした雰囲気のIRが多く、MARSHALL ( マーシャル )のJCM800のアンプシミュレーターなどと組み合わせても気持ちが良いですし、音がこもりがちなハイゲイン系のアンシュミと組み合わせても使い勝手が良かったりします。
その他、Redwirez というメーカーが無料で配布しているMARSHALL ( マーシャル ) の 1960AのIRも使っている人は多いと思います。
無料にIRについては以下の2つのサイトにまとめられていて分かりやすかったです。
https://rainbowsound.cafe/2017/07/29/uro_osn-gtir_summary/
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