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楽天の「オンライン経済圏の確立」と「オフライン市場への進出」戦略

前回の記事で主にPayPayについて分析しました。

実は同時に楽天も分析しておりまして、「オンライン経済圏の確立」「オフライン市場への進出」という軸で比較するべく、楽天についても書いておこうと思います。

楽天の方向性(@8maki作)

楽天経済圏の数値

「オンライン経済圏の確立」「オフライン市場への進出」の推進に当たり、楽天は既にオンライン経済圏は確立できている印象です。着々と楽天ポイントは発行され、楽天サービス間のクロスユースも進んでいます。

楽天のIR: 楽天ポイントの発行数
楽天のIR: クロスユースユーザーの増加
楽天のIR: クロスユースユーザーの増加

特に金融領域のクロスユースは完成されていて、顧客獲得が難しい金融サービスの成功事例と考えて良いと思います。

楽天のIR: フィンテックサービスのクロスユース比率
paymentnavi: 楽天市場とグループサービスのシナジー効果について三木谷社長が紹介(楽天EXPO2022)

特に最近では、楽天カードで楽天証券の投信を買うと、毎月5万円上限で1%ポイントが貯まるキャンペーンを実施して、一気に口座開設を増やしました。

楽天のIR: 楽天証券の口座数

なお、そのキャンペーンは今は終了している模様。

このように一定やりきってる感のある楽天オンライン経済圏は、粛々とクロスユースを促すキャンペーンや施策を実施しながら、サービスの幅を広げていく戦略だと見ています。楽天のトップサイトの下部にある、楽天グループサービスは現時点で75種類あります(楽天ふるさと納税は、楽天市場の中に含まれているので、その単位で見るともっと多そう)。

楽天のトップサイトより

楽天のキャッシュレス戦略

よって、PayPayによってオンライン経済圏を確立していこうとしているソフトバンク/ヤフー陣営と比較して、楽天のキャッシュレス戦略は微妙に異なっていると言うか、役割が違うと感じています。

PayPayは、ソフトバンク/ヤフーのサービスのポイントでもあり、キャッシュレス手段の残高でもあるという、ポイントと決済残高がかなり透過となっていえるサービスだと感じます(もちろん法的には分けて管理されていますが)。オンライン経済圏の中核となっています。

かたや楽天では、楽天経済圏の中心は楽天ポイントであり、そのポイントの利便性を高めるためのキャッシュレス(楽天Pay、楽天Edy、楽天Cash)という位置づけになっていそうです。なお、楽天カードは、クレジットカードの中では頭飛び抜けて成長しており、敢えてその優位性を崩すようなことをする必要がないのだとも思います。

もちろん、楽天カードの成功が、経済圏確立に一役買っているのは間違いないので、中心ではないとも言えないのですが、PayPayはウォレット、楽天カードはキャッシュレス手段という構造的な違いがありそうです。この構造の違いが今後どう影響してくるかは注目です。

楽天の物流アプローチ

楽天は、オフライン市場への進出のために、ここ数年で大きな提携・買収をいくつか行っています。

西友への出資

2020/11にウォルマートから西友の株式を取得しています。なお、ウォルマートは同時にKKR(米国ファンド)にも残60%を売却しています。

元々、楽天西友ネットスーパーを協同運用しており、関係値もあった中で、連結入するところまで株式を持って、より踏み込んだ打ち手を打ってくるのだと思います。

・デジタル・チャネル投資の加速化による、アプリを利用した買い物、決済、配達の実現
・新たなキャッシュレス決済の導入
・オンラインとオフライン(実店舗)を融合させたサービス体験の向上
・消費者のニーズを先取りしたエブリデー・ロー・プライス(毎日低価格)商品群の拡充

上記プレスリリースより

当初のプレスに書かれていた施策案のうち、2個目が最近実現されています。西友の店舗に楽天のポイント/キャッシュレスが全て導入されました。

楽天のIR: OMO戦略について

また4個目の部分で「商品郡の拡充」とありますが、もちろん楽天市場での商品を卸すことがメインだと思いつつ、食品メーカーとの提携も発表しており、もしかしたらプライベートブランドの開発も視野に入れていると推測しました。

そして、パナソニックと提携して自動配送ロボットを実験したり、ドローンの会社を買収したりと、デリバリーの部分も活発になってきています。

このように、本格的にスーパー・ネットスーパーの運用を開始して、オフラインのコマースにも力を入れていきそうです。

日本郵政との資本業務提携

2021/03には、日本郵政グループとも資本業務提携を発表されています。

その後7月には、JP楽天ロジスティクス株式会社を設立されています。

楽天のIR: JP楽天ロジスティクスの設立

両社は、連携を強化し、新たな物流DXプラットフォームの構築を図っていくとともに、他のEコマース事業者や物流事業者にも同プラットフォームへの参加を促進することで、国内の物流環境の健全化及び持続可能な社会の実現に貢献していきます。具体的には、当社が投資・開発してきた省人化・自動化された物流センターを、日本郵便の配送ネットワークに組み入れ、合弁会社を通して共同運用することで、物流DXを実現し、「顧客UXの改善」(注1)、「リードタイム短縮」(注2)、「物流効率化」(注3)・「キャパシティ最大化」(注4)等を目指します。また、ドローンやUGVを用いた次世代の配送についても共同で取り組んでいきます。なお、合弁事業の開始当初においては、楽天市場を中心とする当社が提供するECサービスの荷物を中心に取扱うものの、今後は、他の配送会社及び荷主も参加可能なオープンなプラットフォームの構築を目指します。

上記プレスリリースより

上記プレスリリースに書かれている提携案としては下記が挙げられており、まずは物流プラットフォームの構築が優先事項ではあるものの、郵便局窓口の楽天モバイルの販売や、金融・コマースの分野でも幅広い提携を模索される模様。

両社業務提携案

このように、共通ポイントや楽天Payのような商品を提供するだけでなく、資本関係を持って、本気でオフライン上のビジネスを展開していこうとされている点は、PayPay陣営と違うスタンスだと感じました。


なお、この部分について、10Xの@yamotty3が、オフラインの物流はまだまだ規模が小さく、オフライン攻略の決め手は結局モバイルの成否なのでは?と言っていました。また、コマースの方も、楽天はガチガチのセールス・コンサルをつけて加盟店獲得とリテンションやり続けていて、ヤフー・ジャパンは基本セルフサーブ、SMB向けにやっていくのでは?とも。

また、XTechの手嶋さんにもコメントいただき、やはり肝はモバイルなんだろうな、と。

楽天銀行や楽天証券の上場は、とにかく楽天モバイルで勝ち切るための投資資金集めなんだろうと思います。

まとめ

ここまで見ると、前の記事で書いた、PayPay陣営との違いがわかりやすくなったかなと思います。

ただ、「オンライン経済圏の確立」「オフライン市場への進出」という切り口は汎用的なので、オンライン上でビジネスを行う大手企業は全て関係してくると考えており、ドコモやKDDI、リクルートも最終目指している絵は近しいものがあり、分析していきたいと思っています(これから)。

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ちなみにただの趣味でこんな分析をしているのではなく、ちゃんと自社の戦略に役立てようとインプットしているのです。こういった分析を元に、自社の絵もUpdateしていこうと思うので、その作業に加わりたい方はご連絡ください!
(ちなみにこういう話に興味ありそうな人は、社長(私)直下の経営企画BizDevがオススメです。もちろんソフトウェアエンジニアやバックオフィス含めて鋭意募集中です)


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