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『私、不妊?』からすべてが始まった〜人生どん底記〜

2020年5月に結婚した私はすぐに赤ちゃんができるだろうと思っていた。これから始まる4年にも及ぶ地獄のような日々が来るとも知らず(現在も継続中)。

ずっと生理は順調、婦人系の病気の経験もなし。
結婚を機に新天地のアメリカで家庭と子育てにどっぷり浸かるのが当時の夢だった。

だから“そのうちに〜”なんてのは頭の隅っこにもなくて初めから排卵検査薬を使っての本気のタイミング法をとった。

だが半年以上経っても妊娠しなかった。焦りはじめて精神的に辛くなってきたのもこのごろ。毎月毎月期待と落胆の間の往来。生理が来るたびに『はい、今月も落第!』と言わんばかりのレッテルを貼られているような気がして悲しいのと、悔しいのと、なんとも言えない気持ちで涙が溢れた。

周りはいとも簡単そうに成し遂げていること、私はできない。

『1年経ったら病院行く』と決めていたその“一年”がやってきて不妊治療を専門とするクリニックに予約を入れた。アメリカの場合専門医の初診を受けるのに時間がかかる場合が多い。通っていた産婦人科の先生の紹介で予約を入れたにも関わらず初診まで3ヶ月待ちだった。

まずはホルモン検査、精子検査、HSG検査を行った。結論、私たちは原因不明の不妊の可能性が高い。原因不明の不妊の場合、1ヶ月の妊娠率は3%だと言われたのが衝撃的で他人ごとのように感じたのを今でも覚えている。とてもアメリカ人の医師らしい理論的でデータに基づいた話し方。妊娠するのに必要な条件の説明を聞きながら、不妊クリニックのオフィスに座っている自分の状況が消化できず『何これ、、、私のこと?私って不妊なの?』と頭でぐるぐると色んなことを考えてなんとなくだけど敗北感みたいなものを感じた。

結局、ホルモン検査ではTSHホルモン(甲状腺刺激ホルモン)が健康的な妊娠の目標数値は2.5以下であるべきのところ私は4.2。子宮内に小さなポリープも見つかった。それでも医師は1年以上妊娠しない直接的な原因ではないと言ったからやっぱり原因不明なんだと悟った。

初めてTSHというワードが人生に現れたのもこの検査だった。標準値以内ではあるものの妊娠を希望するには少し高いと言われすぐにホルモン剤を提案された。けれどホルモンは体調や生活状況によって多少上下する物だし安易に薬を摂取することに躊躇した。根本的な原因が他にあるかもしれない、夫婦で話し合いホルモンの治療はしなかった。*この後2ヶ月もしないうちに一気に体調が悪化しのちに橋下病、甲状腺がんと診断される。

橋本病の症状について書いた記事こちら>>>


 不妊クリニックの門を叩いてからわずか半年後に甲状腺がんの宣告をされて以降、妊活どころではなくなった。あれほど望んでいた我が子に会うためのスタートラインにも立てれない自分がポンコツな不良品のように感じた

2024年現在、がん治療を終えてCancer Free 宣言も受けたけど、両方を経験している私は正直『不妊治療とがん治療どっちが辛い?』って聞かれたら迷わず『不妊治療の方が精神的に辛い』と答える。なぜならがん治療は不妊治療と比べると圧倒的に世界中で研究が進んでいて治療方針が明確だから。医療界での実績も長く、臨床データも多い。一方、不妊治療はまだ始まってから40年ほどの新しい医療領域である。注ぎ込んだ時間もお金も身体も精神もまったく結果に比例しない、今の医療技術でも解明されていない事が多すぎて、終わりのない苦行みたいなもの。言葉にならない独特の苦しみがある。

何が辛いかって生物として生まれ持った当たり前な能力を発揮できないゆえの否定感と女性としての存在意義を疑うような状況とずっと向き合っていかなければいけないからと個人的に思う。不妊治療を受けている人たちが抱えるストレスは、循環器疾患の患者やがん患者が抱えるストレスにも匹敵すると言われているのも納得する。

8組に1組が不妊に苦しんでいると言われている割合も最近は6組に1組とも、5組に1組とも言われるようになった。このアカウントの名前のきっかけになった数値も悪化を辿る一方。どうしても孤独に感じやすい状況でも世の中にはたくさん自分と同じ悩みで、苦しい中頑張っている人がたくさんいると思うと気持ちがいくらか安らぐ。

私は決して一人ではない。

いつか我が子を胸に抱き、“あなたは望まれて、望まれて、愛されて産まれてきた” ということを伝えるその日を夢みて、一歩ずつ、どんな道であろうと歩んでいける勇気を持ち続けたい。

未来の我が子へ:

ママはあなたに会う前からずっと愛していたよ。会えるまでの苦労はあなたにとって最高のママでいられるための準備だと思って今まで頑張ってきた。 

あなたは私が生きる理由。

私は選んでくれてありがとう。
母親にしてくれてありがとう。







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