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「ありがとう」のとなりに。

「お前は分かってない。なんも分かってない」 。
父親から叱責されるような重くのしかかるプレッシャーと
少しの女々しさみたいなものを纏ったその言葉を浴びせられた。
先日僕は、久しぶりに同僚ともめた。

「おいおい、お前ら幾つだよ!?」ってぐらい
ある案件に対するクライアントからの
デザインの修正依頼に真っ向から意見が対立して
お互い思っている事・どうしたいかが食い違っていて。
相手はAD、僕は営業。
普通はADの言う事を聞くものなのだろう。
けれども、クライアントのいつも近くでその思いや、願いや理想を
聞いているのは僕だと言う自負があった。
結局は彼は折れて、僕が苛立ちを抑えながら絞り出すような声で伝えた修正内容を網羅した上で、メールには「少し暗い印象があったので指示には無いけど彩度を少し上げてます」との一文。
その一文にADの彼としてのプライドが垣間見えるたったそれだけの一行が記されていた。

メールお受信した時間は23時を過ぎていた。
僕は「ふうーーー」と深くも浅くも無い溜息をついた。
その日は彼の息子の4歳の誕生日だった。

僕の指示した修正内容を反映させるのに膨大な時間を要するのはお互いが分かっていた。
「そりゃ反論するよな」そう呟きながら僕はそのメールにすぐさま返信をした。

「遅い時間までありがとうございます。助かりました。」

社会人になってからだと思う。
メールでも会話かなんて関係なくてそして
同僚にも取引先さんにも勿論、クライアントにも
「ありがとう」と言った後の言葉として絶対「申し訳ありません」とか「ごめんなさい」というような言葉を使わないようにしている。

意味はそんなに無い。
本当はすぐ喉まで「すみません」が出掛かっているし、
本当は言いたい気持ちでいっぱいなんだけれども。

けれど、「ありがとう」みたいな月並みな定型文なんかよりその隣に来る言葉が本当の感謝の言葉な気がして。

だから、これからもこれが正しいのか間違っているのかなんて分からないけど
曲げたくない、変わりたくないと思った。



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