小説ステイ5 ステイが見つかってしまった日

昨日の大雨が嘘だったかのように、穏やかな朝を迎えた。今日は、ステイが市のお祭りの大ステージに立つ日。すみっこさんは、すでに会場にいるらしい。まだ夜中の3時だけど、気持ちは分かる。名前を思い出したけど、いじけんぼうさんは、どうしても見たいということで、徒歩で会場に向かっている途中だという。徒歩10時間は大変だけど、自分が同じ立場だったら、そうしただろう。ステイ初の野外ステージが、祭りの大ステージなことよりも、初めて3人のステイが観られる。自分が、ステイを知ったきっかけは、たまたま本屋さんで遭遇した出来事だった。本屋に入ると、若い女の子と男性が少し大きな声で話をしていた。友達という感じではなく、女の子は、とまどっている感じだった。「来週も、絶対行くよ。」そう言って、男性は去っていった。女の子を見ると、少し、ほっとした様子なのと、それよりも、とても可愛かった。しばらく見つめていたかったけど、不審すぎるので本を買って帰った。気になって、ツイッターで本屋の名前でサーチしてみたら、「今日、ピュアりんに本屋で会った。」とうい書き込みを見つけた。その人のツイートを掘ると、すぐに、ピュアりんがアイドルだということが分かった。今度の日曜日、ライブがあるらしい。行ってみようと思った。場所はライブハウス地獄。そんなとこあるんだ。怖そうだけど行くことにした。その日から、ステイのことが気になって、毎月、ライブハウス地獄に通うようになったんだけれど、ピュアりんを見たのは、その本屋さんの時の一度だけだった。初めて見たライブは、かなぼーと、名前も知らないなんとかさん、なましら花さんの2人だった。ピュアりん目当てで行ったライブだったけど、自分はかなぼーさんがとても好きになってしまい、毎月、地獄に行っている。
色々楽しみすぎて、これまでの事を思い出していたら、いつの間にかライブの時間、10分前になっていた。会場には、2時間前についていた。スタッフの東茶やがいさんがいたので、今日のライブのことを聞いたら、持ち時間が5分しかないらしく、仕方ないので、「絶対行くよ。会いたい。」の1曲だけやるとのこと。持ち歌1曲しかないから、良かったのかもと思ったけど、5分は短すぎるな。でも、1000人以上の人が見ている。地獄では、多くて5人のお客さんだから、5分でも凄いことだ。ステージが始まった。すみっこさんは、夜中の3時から来てるのに、一番後ろのすみっこにいた。いじけんぼうさんは、なんとか最前から2列目までに移動していた。最前の隅の方の場所が空いたので、急いで移動した。「はじめまして。ステイです。次で最後の曲になります。」「えー、今来たばっかり。」すぐに曲が始まった。何回も地獄で毎月聴いている「絶対行くよ。会いたい。」だ。かなぼーがセンターだと思ってたんだけど、初めて見る3人のライブは、ピュアりんがセンターだった。はじめて会った日のことを思い出したけど、今日は衣装を着ていて、あの人と同じ人物なのかも分からないけど、とてつもなくかわいい。初めて見たであろう、お客さんたちから、かわいすぎるといったような声が聞えてきた。曲のほうは、いつもとまったく違う歌に聞えた。かなぼーが歌っているのが分る。今日は、生歌なんだ。なましら花さんは、一歩下がって踊っていた。こんなに動ける人だったんだ。大きなステージで、思う存分に踊っている。そして、ステイを知るきっかけとなた、ピュアりん。かわいいのは、見れば誰でもわかることだけど、その歌声は、今まで聞いたことのないような声で、女性らしい声だけど、力強く、今まで聞き取れなかった歌の歌詞がはっきりと届いていた。「こんなに良い歌詞だったんだ。」お客さんは1000人以上いるのに、声援も手拍子も聞こえない。みんな、ステージに釘づけになっていたのだ。自分は、今まで、かなぼーに会いたいだけで、地獄に行ってたんだなと思った。ステイがこんなに凄いグループだったなんて。曲が終わった後、静まり返った会場が、拍手の音でうめつくされた。「ステイでした。また会いましょう。」3人は、深々とお辞儀をして、ステージから去っていった。喉がからからだ。何も声を発していないのに。赤汁を飲みたい気分だけど、今日は、飲めないな。スタッフの東茶さんのほうを見たら、泣いていた。しばらくして、次のステージがはじまり、太鼓の音が響いている。今日は、物販もないらしい。5分だけの、1曲のステージだったけど、いろいろなことが最高すぎて、考えがまとまらない。そのまま、太鼓のステージをみていた。しばらくして、すみっこさんに声をかけられた。月曜の2周年ライブのことで話をしたいとのこと。すっかり忘れてた。花束は、雑草じゃダメな気がしていた。それよりも、あさってのライブ、今日、ステイを見た人、ぜったい来るだろう。多くて5人だと思っていたライブだけど、どうなってしまうんだろうか。ライブハウス地獄はかなり、狭い。でも、ライブの事は一言も言ってなかったから、誰も気付かなくて、来ないか。安心した気持ちと残念な気持ちが渦巻いていた。かなぼーの生歌もはじめてで、ピュアりんのステージもはじめて、なましら花さんの全力のダンスもはじめてで、歌詞がききとれたのもはじめてだった。2年間、ずっとステイを見てきた自分だけど、今日、はじめてステイを見たであろう1000人と、何も変わらないくらいにステイの事を知らな過ぎた。すみっこさんは、地獄で話そうといった。ライブの日にしか地獄にいったことなかったので、昼間も営業してることに今、気付いた。赤じるを飲みたいと思っていたところだったから、ちょうど良かった。会場から、地獄はとても近く、少し歩いて、地獄についた。
(続く。)

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