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紹介から来る患者さんが困る

よく、口コミ万歳、口コミこそ最強。
口コミ集客こそ、一番の集客方法だ、という論法のコンサルを見る。

でも、わたしの感覚では、口コミが一番面倒くさい。
口コミのいいところは、集客にお金がかからないところだけだ。

人の痛みの感じ方は、人それぞれに全然違う。
「こんなに痛いと思わなかった」と、痛みに向かい合う覚悟の出来ていない方が来ると、「効果を出すのに必要なだけの刺激」ができないから、結果「なんだ、鍼灸なんて、ちっとも効かないじゃん」と、最悪の終わり方をする。

ちゃうで!
あんたがあんまりビビるから、刺せんかっただけやで!

と呻いたところで、誤解は解けない。

まぁ、もう少し、ちゃんと「紹介」ってものについて、見ていきたい。

1.紹介された人が、「付き合い」で、義務として来ている

「そのお店、めちゃくちゃかわいいのぉ~」
「わたしについてくれた担当さんが、まためっちゃおしゃれで、服とかもセンス良くて~」
「で、カットすごく上手だったの~~」

こんな風に幸せいっぱいになっている友達に、水をさせる人がどれだけいるだろうか? いや、いない。

この流れで、「その美容室、すっごくおしゃれだから、ミホも行ってみなよ! 前、美容室探してるって言ってたでしょ!」
と言われて、断れる人がいるだろうか? いや、いない。


ミホとその友人のエリとでは、顔も、頭の形状も、髪質も、全然違うだから、エリにとって良い美容師が、ミホにとって良いとは限らない。

ミホもそれは分かっている。だけど、こんな善意丸出しで言われたら、断るのは難しい。

さらに、ミホとエリの人間関係も、カットの成果を判断するミホの目に影響する。

『あ~~そういえば、前もエリが勧めてきた美容院行って、大失敗したんだった!』

ミホがこんな過去を思い出してしまった時点で、カットが終わる前にその美容室の株は下がってしまっているのである。

口コミは、口、紹介者が何を伝えたか、だけでなく、紹介者と、紹介された人との人間関係まで、変数として加わってくる。そんなこと、美容室側は知りようがないのだが、知りようのないところで、あっとうてきに引き算されていたりするのだから怖い。


自分がホームページやインスタに載せたこと「以外」で、ジャッジされてしまう。一見さんなら、そんなことはありえない。自分が書いたこと、SNSに載せた写真と、料金だけ見てくる。

最初から、口コミで来た客の対応は、いろいろと不利な状態から始まっているのに、「エリさんの紹介だから」と美容師は有利だと錯覚している。

まったくの一見さんだったら構えて応対していたところを、油断して対応するので、「あ~、エリさんのご紹介で来てくださったミホさんですね~~、わたし、ノリっていいますぅぅ~~」とテンション高めで行って撃沈する羽目になるのだ。


2.紹介者が、間違ったことを伝えてしまっている

サービス業に限らず、商品の性能には限界がある。サービスにも限界がある。

その限界が「ない」と錯覚しているところが、口コミの怖さその2だ。

口コミの場合だけじゃなく、「中途半端にともだち」な場合も、起こることだが、客から、「無限の期待」を寄せて来られることがある。


「一回ですごくきれいになったよ!」と脱毛エステを紹介された客が、「え、一回で終わるんじゃないんですか?」と言ってくることは多い。

さすがにエステティシャンもプロなので、その辺最初に念入りに説明する。
「一回できれいになるとはいっても、毛には生えてくる周期というのがありますので、同時に全部の毛包から、毛が生えてるわけではなく、ごく一部が生えて、他の毛包は種のまま眠っている状態なんですよ。だから、お友達が脱毛したのは、今毛が出ているところだけで~云々」

だけど、「でも、友達は一回ですごくきれいになったって言ってました!」とごねられると、面倒くさい話にこじれないとも限らない。

「一回ですごくきれいになった」という言葉の「あいまいさ」を回避できない、これが口コミの怖いところだ。


「一回ですごく効果があった」
に対して、「個人差もありますから」と返すと、客は黙り込む。そして店側は、無駄に恨みを買うことになる。

そもそも、プロがプロとして説明しないと伝わらない、複雑な内容を、素人が口コミで伝えられるわけがない。

だから、プロなら、顧客の口コミに過大な期待をしてはいけないのだと思う。


サービス業は、たいてい高額なサービスを契約する前に、顧客の「期待値を調整」する。

これはできる。これは可能だけど、予算範囲を超える。これだけのことを、ここまでやるには、予算●●円と●か月かかる。この部分だけにしておくと、予算内に収まり…といったことを、細かに説明し、また書面でとりかわしておく。

口コミで「期待値の調整」は無理。
それでも紹介で集客したいなら、一工夫いるのだ。


3.紹介によるミスマッチを作らないためには?

紹介ツールをあらかじめ「作って渡す」が一番いい。

紹介する人が、どう紹介するか、何もしゃべらずただ必要そうな人に手渡してくれるだけで、ちゃんと「期待値の調整」までできるくらい、手の込んだものを渡すのが一番無難だ。

それだと印刷代でお金がかかるというのなら、紹介カードにして、URLを貼り、「紹介するときは、かならずホームページを見てくださるようお伝えください」てな具合で、紹介時に一言添えてもらう。

「ホームページを見てから」予約をそっちでとってもらうよう、流れを整えておくのが一番無難で、一番お金がかからない方法だと思う。

そして、ホームページには、しっかり「期待値を調整」できる要素を取り揃えて、準備しておくに限る。


4.紹介は、本当に怖い。


安価で分かりやすいサービスをしているなら、そんな苦労はいらない。
バンバン紹介してもらっても、もめごとにはなりにくい。

でも、鍼灸治療はそうはいかない。
保険がほぼきかないから、料金は高いし、鍼を刺すから、治療そのものが痛い。

紹介でなんとなく来てみた、友達が良いっていうから来てみた、くらいの人が患者で来てしまうと、な~んも覚悟もない、本気でもない、

「刺したら治るんでしょ?」
「そんな深く刺したりしないでしょ?」
「刺すって言っても、ちょっとツボに刺すくらいでしょ?」

そこから説明せなあかんのか~~い!!!


という面倒くさいことになるので、うちは紹介しないでほしい。

患者さんが、親切心で紹介してくれているのは、よくわかるんだけど。

当院、鍼灸は「東洋医学の外科」と認識しております。

ぶっ刺します。
出血もします。
リスクもあります。
痛いです。

でも、治したいという方だけ、来てください。


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